新たに介護リーダーになった方、または現在、介護リーダーや管理者として働いている方の中には、現場のマネジメントがうまく行かずに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
現場の一職員としての立ち位置と、リーダーとしての立ち位置とでは、持つべき視点や留意すべき点が大きく異なります。さらに責任も大きくなるため、とても大変なポジションだと思います。しかし成功すれば、スキルアップにもつながり、理想の介護を実現するための挑戦もでき、大きな達成感を得られるでしょう。
この記事では、介護リーダーの業務内容をまず整理し、その後にマネジメントで重要なポイント、必要なマネジメントスキルについて解説します。
目次
介護現場におけるマネジメントの目的と重要性
介護現場ではマネジメントを担う介護リーダーの存在は非常に重要です。介護の現場では様々なスキル、経験を持つスタッフが協力して介護業務にあたることになりますが、業務を効率化し、介護サービスの質を高めるにはリーダーのマネジメントが欠かせません。
介護リーダーがマネジメントを行うことによって得られるものとしては、以下のようなものがあります。
・質の高い介護サービス、ケアの構築
・職員のスキルアップ、やりがいの創出
・信頼関係の構築、チームワークの向上
・風通しの良い職場環境の構築
職員一人ひとりが仕事にやりがいを持ちながら、それぞれの持ち場において能力を発揮し、良好な人間関係に基づいたチームワークによって業務を遂行できれば、チームとしても向上できるでしょう。それによって施設として、これまで以上に質の高いケアを実践し利用者に提供できるようになります。
介護業界は人手不足を背景として、限られた職員で高いサービスを提供していく必要に迫られています。実現のために、介護現場におけるマネジメントはさらに重要性を増していくでしょう。そのために必要な介護リーダーのマネジメントスキルについては後述します。
介護リーダーの業務内容
介護リーダーの業務内容を一度整理してみましょう。(あくまでも多数あるリーダー業務の中の一部であり、介護施設や事業所によって内容が変動することがあります)
・介護現場のマネジメント
・介護職員の教育・育成
・シフト管理
・他職種との連携
・現場の介護業務
それぞれ解説します。
介護現場のマネジメント
日々のオペレーションの効率化や利用者のニーズに応じたサービス計画の見直し、緊急時の対応、課題の解決など、現場のマネジメントは多岐にわたります。これらはサービスの質に直結するものなので、緊急性も重要性も高いものです。しかし、現場職員の数は限られていますから、効率性も重要です。
オペレーションの効率性だけを考えて、質を下げるのはお勧めしません。質と量のどちらも満たすためにはどうすればいいかを考えていくことが大切です。
特に入居系施設は高齢者の生活の場でもあり、イレギュラーな対応も発生することが多いです。通常業務に加え、イレギュラーな対応が発生した場合の対応を事前に考えて、対応策を周知しておくことも介護リーダーの大切な役割です。
利用者の心身の状態やニーズは日々変化していきます。新人職員の頃と違い、豊富な経験と理論を身に付けた介護リーダーだからこそ気づく変化、導き出すことのできる解決策を全体に共有することが大切です。
リーダーに求められる視点としては、誰が行っても円滑に業務を遂行できる方法を考え、共有することです。それによって職員は余裕をもって利用者の対応ができるようになり、全体の質を向上させることができます。適切な介護サービスを提供するために、介護リーダーには現場の状況を管理する能力、それに加えて、介護職員が働きやすい環境を整える能力が必要です。
介護職員の教育・育成
介護リーダーのマネジメントには介護職員の教育・育成も含まれます。職員一人ひとりの知識、技術の達成状況は異なりますので、個々に合わせた教育、指導が必要です。
全体的な研修も必要ですが、個人の目標や個性を活かした働きに期待することも大切です。リーダーが全ての指導を担当することは難しいでしょうから、新人職員のOJT担当者を決めたり、分野ごとに指導担当職員を決めるといったことも必要でしょう。
介護職員の教育・育成を効果的に促進していくために重要なのは、褒めることです。適切な介助ができたとき、以前はできなかったことができるようになった場合などは、しっかりと褒めてあげるようにしましょう。逆に、適切ではない対応をした際には、根拠とともに指導を行いましょう。
また、介護リーダーは介護職員に対して、一人ひとりの現状に合わせ介護技術を指導するだけではなく、信頼関係を作ることも大切です。信頼関係を構築することができなければ、指導をしても素直に実践してもらうことが難しいでしょう。関わりの中で職員との信頼関係を築き、助け合えるチームを目指すことが必要です。
シフト管理
介護リーダーのマネジメント業務として、介護職員のシフト作成・管理を行っている施設も多いでしょう。
介護施設を運営する中で、職員のシフト管理は非常に重要です。施設ごとに満たすべき人員基準もありますし、スタッフの能力や個々が持っているスキルを考慮して組み合わせを考える必要もあります。
新人は指導役の職員と一緒に配置するのが理想です。さらには職員同士の相性の問題も考える必要もあるでしょう。これらは介護サービスの質にも大きく影響してきます。
基本的にシフトは正循環で組むのが理想です。正循環とは、早出、日勤、遅出、夜勤といった順番で組むことを指します。人員不足の現場だと逆循環や日勤6連続、夜勤明け早番、といったような厳しいシフトになるケースもありますが、体力的に厳しいシフトが続くと職員の疲労が蓄積され、ミスも発生しやすくなります。
職員全体に対して夜勤回数が公平で、休みが前半や後半に偏っていないことなども大切です。希望休も可能な限り通るように考慮してあげることも必要です。ただし、職員によっては稼ぐために夜勤回数を多めにしたい、など事情がある場合もあり、日頃から職員とコミュニケーションを取って状況を把握しておくことも大切です。
特定の職員にバランスが悪い偏ったシフトを作ってしまうと不満を溜め込んだり、職場の雰囲気を悪くする可能性があります。シフトが悪いことから介護リーダーへの苦情などが発生し、自身が大きなストレスを受けてしまう可能性もあります。
また、シフトへの不満が最終的には退職に結びつくこともあり、シフト作成・管理は重要な業務となっています。
職員が安定したパフォーマンスを発揮し、質の高いケアを実現するためには、介護リーダーのシフト作成スキルも非常に大切だといえます。シフト作成が苦手な場合には、介護シフト作成ソフトを利用する方法も検討すると良いでしょう。
他職種との連携
介護リーダーの重要な役割として、多職種連携があります。介護施設での仕事はチームで行うことが基本です。利用者の担当ケアマネジャー(ケアマネ)との連携はもちろんのこと、リハビリ職や看護師、外部の医療機関との連携も発生するでしょう。
利用者に効率的・効果的に介護サービスを提供するには、多くの専門職がチームとして機能することが必要になります。
こうした他職種とのやり取りは、介護リーダーが当たることが多い施設が多いと思います。経験が浅い介護職員では、連携時に必要な情報が不足したり、判断に迷うことも多いためです。そのため介護リーダーは利用者の状況を、普段からしっかりと把握しておくことが大切です。
重要性を増すリハビリテーション・個別機能訓練、栄養管理及び口腔管理の一体的取り組みとはの記事でも述べていますが、医師、歯科医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、歯科衛生士などの多職種による一体的な取り組みが今後、ますます重要となってきます。
利用者と接している時間が長く、多くの情報を持っているのは施設で働く介護職です。その中でも介護リーダーは外部の専門職や利用者家族ともコミュニケーションを取る機会も多く、重要な役割を果たすことが求められます。
現場の介護業務
介護リーダーは現場の管理・まとめ役をしながらも、自分自身も現場に入り、介護業務を行います。そのため他の介護職員と比較して業務量が多く、自身のタスクマネジメントのスキルを磨くことも重要になってくるでしょう。
現場業務を行いながら各職員の利用者への接遇や介助スキルなども把握し、気になることがあれば適切なタイミングでフィードバックすることが必要です。教育・指導する立場ですから、職員からの質問も多いでしょう。質問に対しての受け答えの対応も、職員との信頼関係構築には重要です。
介護リーダーのマネジメント業務が大変な理由
介護リーダーの業務内容の一部を紹介しましたが、このように介護リーダーの業務内容は幅広く、負担の多さに悩む方も少なくありません。
介護リーダーのマネジメント業務が大変な理由としては、例えば以下などがあげられるでしょう。
・業務量が多すぎる
・上司と部下の板挟みになりやすい
・スタッフへの指導が難しい
介護業界の人手不足が深刻さを増している状況もあり、人手不足に悩む施設も多いです。そこで発生する業務負担は多くは介護リーダーがカバーすることになるのではないでしょうか。
業務時間内に仕事が終わらず、自宅に持ち帰ってシフトを作ったり書類作成をする、休日出勤で何とかする、といったリーダーも少なくないでしょう。
介護リーダーは立場的に、中間管理職といえます。上司が求めることも分かりますし、部下の気持ちも分かる。部下からの突き上げを上司に伝えて拒否され、それをどう部下に伝えたら良いかと悩む・・・板挟みやギャップを埋めるために悩む介護リーダーも多いでしょう。
介護サービスの質を上げ、施設全体のサービス向上を図り、顧客満足度を高めることは介護リーダーの大切な役割ですが、それには職員への指導が欠かせません。しかし職員によっては指導の仕方が原因で退職に繋がるケースもあり、対応に苦慮するリーダーも少なくありません。
また、介護業界は異業種からの転職も多く、年上の新人職員が入職することもあります。指導の仕方によっては反発されることもあり、人間関係が構築できない可能性も。指導が上手くいかないことで、スキルも高まらず、利用者に支援できる内容も増えず、介護ミスのリスクも高まるなどネガティブな連鎖が続く恐れがあります。
マネジメント業務が大変になる理由は介護リーダーそれぞれといえます。理由を明確にして、一つ一つ対応していくことが必要です。悩みを抱え込まず、信頼できるスタッフに相談して負担を軽減する動きをしてもらう、上司に相談してサブリーダーを作ってもらうなどの対応も大切だと言えるでしょう。
介護リーダーに必要なマネジメントスキル
介護リーダーがマネジメントをより効果的に行うために必要なスキルの中で、重要と思われるものの一例をご紹介します。
リーダーシップ
介護現場をまとめていくにはリーダーシップが欠かせません。「この人と一緒に働きたい」「このリーダーについていきたい」と思ってもらえることが必要です。
リーダーシップとは、チームを目標に導く統率力や指導力のことです。リーダーシップを高める方法は色々とありますが、
・理想のリーダー像を明確にする
・主体的に行動する
・自分の意思を明確に持つ
・メンバーと積極的にコミュニケーションを取る
・メンバーに役割を与える
などがあげられます。やはり主体的に行動して周りを巻き込み、決断していけるリーダーは頼られるでしょう。ただし、独断的になってしまうとメンバーが離れていきチームの雰囲気が悪くなるため注意が必要です。日頃からいつも笑顔で明るく、丁寧にコミュニケーションを取ることが大切です。
上司、メンバーなど関わる人の意見を聞き集約して、必要な時にすぐに決断し行動していけるように、情報収集を日頃から意識することがリーダーには必要です。施設利用者の利便性、満足度の向上、質の高い介護サービス提供のために日々、積み重ねていきましょう。
コミュニケーション能力
介護リーダーは現場のまとめ役でもあり、上司とのパイプ役も果たす立場です。現場の介護業務にも携わり、トラブル発生時には表に立って対応をすることも多いでしょう。
介護職、管理者や施設長、利用者とその家族、他職種など実に多くの人たちと関わるのが介護リーダーです。そのため、コミュニケーション能力は介護リーダーにとって非常に重要な能力です。
日頃から関わる人たちと積極的にコミュニケーションを取り、話を聞き、相手の考えを理解しておくことが大切になります。そうして信頼関係を構築しておくことで、何か対応が必要な時にも相談がしやすくなるでしょう。
もちろん他者の意見を聞いているばかりではなく、介護リーダー自身の意見の発信も大切です。聞くことを大切にしながら信頼関係を構築することは、チームマネジメントを行う際にとても重要なこととなります。
スタッフ育成・指導力
介護リーダーの業務として、スタッフの教育も重要です。施設として質の高い介護サービスを提供していくためには、職員全体のスキルアップが欠かせません。介護リーダーが持つ豊富な経験や知識・技術を、職員一人ひとりに合わせた指導を行い伝え、成長を手助けすることが必要です。
特に新人介護職員の育成は、施設にとっても重要な課題です。新人職員の能力が向上することは、質の高いケアに直結するとともに、きちんと指導し育成してあげることは定着率の向上にも密接に関連しているためです。
今は簡単に職員を補充することができない状況になってきています。入職した職員をしっかり指導し育て、その過程で信頼関係を構築し、長く働いてもらうといったことも介護リーダーのマネジメントとして求められるようになってきています。
介護リーダーがスキルを高めるには
介護リーダーがマネジメントスキルを高めるためには、どのような方法があるでしょうか。以下にご紹介する以外にも方法は色々とあると思いますので、自分にあった方法を意識して探してみることが大切です。
例えば規模が大きな施設であれば、ユニットやフロアごとにリーダーを置いている所もあり、リーダー同士での意見交換もできるでしょう。しかし、そうでなければ介護リーダーに必要なマネジメントスキルを独学で身に付けていく必要があります。
本屋に行けば、中間管理職向けの本やマネジメントのハウツー本は数え切れないほどあります。リーダーシップ論も代表的なものがいくつかありますから、参考にして実践してみるのもおすすめです。
現役の介護リーダーや介護関係の企業が発信しているブログやコラム、You tubeなどを参考にするのも良い方法です。外部の研修に参加し知識や技術を取り入れている人もいます。
これらの書籍や研修などで、必ず言及されるのはコミュニケーションについてです。円滑なコミュニケーションは相手との信頼関係を築く架け橋となり、ちょっとした声かけや感謝の言葉が職員のモチベーションを高め、適切な言葉での叱咤激励により、さらなる成長のきっかけになることもあります。
介護職員であれば、声掛けやあいさつがいかに重要かはご理解されていることでしょう。相手のことを大切に思い、信頼しているというメッセージを送り続けることが大切なのではないでしょうか。
また、コミュニケーションにおいて、聞くことと話すことの比率は7:3がベストであると言われています。自己の開示により、相手との距離感を縮めることも大切ですが、聞くことの重要性も示していることがわかると思います。
書籍やインターネット、外部の研修では、他にも様々な知識や技術を身に付けることが可能です。単に知識をつけるだけでなく、一つでもいいので実践することを心掛ければ、それぞれのリーダーが目指すより良いチームに一歩一歩近づけるでしょう。
介護リーダーにも役立つリーダーシップについては以下の記事でまとめていますので、参考にしてみてください。
介護リーダーがマネジメントしやすい状態にするには
やるべき業務が膨大にある介護リーダーにとって、チームがマネジメントしやすい状態であることはとても重要なことです。
マネジメントにおいて最も重要なのはコミュニケーションによる信頼関係です。介護現場では一人で仕事をすることはほぼ無く、チームで動くことが基本です。
日頃からコミュニケーションをしっかり取り、信頼関係を構築できていると、スタッフへ急なお願いをしても聞き入れてくれることも多く、また自分が困っている時には率先して協力してくれることもあります。
何より、一人で問題解決を図るよりもチームワークを大切にして取り組む方が、格段に良い結果を導き出すことができることが多いのです。一人で抱え込みすぎないように誰かの助けを得ることは決して悪いことではありません。
頼ってもらえたことで職員も、承認された喜びを感じ、モチベーションの向上につながります。一人ひとりとそのような信頼関係を築き、介護リーダー自身も働きやすくなるチーム作りが出来るように取り組んでいきましょう。
まとめ
介護リーダーは、職場のマネジメントや職員の指導、多職種との連携といった業務を担いながら、介護業務も行うという介護現場において重要な役割を果たす存在です。中でも重要なのは、職員への指導・教育、モチベーション向上、チームでの連携や協力を可能にするコミュニケーションなどです。
関わる人たちと信頼関係を築くことでマネジメントしやすく風通しの良い職場環境の構築することが必要です。
やるべきことも多く、重責からプレッシャーに感じる方も多い介護リーダーというポジションですが、理想に向かってチームをデザインしていくことも可能であり、多くの課題を乗り越え、自身の成長にもつながるというやりがいもあります。
介護リーダーに必要なマネジメントスキルは職場によっても異なるでしょうし、また完璧を求める必要も無いといえます。大切なことは目標に向かってポジティブに周りを巻き込みながら進んでいくことではないでしょうか。
全てを手探りで進めるのも大変です。リーダーシップも様々なスタイルがあります。下記の記事を参考にして、自分に合ったスタイルで実践してみるのもおすすめです。ぜひ参考にしてみてください。
この記事の執筆者 | シフトライフ編集部 主に介護業界で働く方向けに、少しでも日々の業務に役立つ情報を提供したい、と情報発信をしています。 |
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