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【教えて!】正循環シフトと逆循環シフトの心身への負担について解説

正循環シフトと逆循環シフトの心身への負担

「正循環シフトって何?どういうシフトの作り方なの?」
「正循環シフトを作るコツはあるのかな?」

 
正循環シフトとは、介護職員の勤務開始時間を後ろにずらしていくシフトのことをいいます。この記事では、正循環シフトの概要や逆循環シフトにおける心身への影響について解説します。
 
また、正循環シフトで期待される効果や取り組む価値についても紹介しますので、シフト作成に悩んでいるリーダー・主任の方はぜひご覧ください。

正循環シフトとは

特別養護老人ホームで日勤シフトで働く介護職

正循環シフトとは、介護施設・事業所で規定されているシフトの勤務開始時間を後ろにずらしていくことをいいます。

たとえば、介護施設では以下のような勤務体制があります。

《介護施設における勤務体制例》

勤務名 勤務時間
早番 7:00~16:00
日勤 9:00~18:00
遅番 11:00~20:00
夜勤 17:30~翌日9:30

 

この勤務体制の場合、正循環でシフトを作成すると下表の流れです。

《正循環を活用したシフト作成例》

職員名 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5 8/6
A 早番 日勤 遅番 夜勤 明け 休み
B 日勤 遅番 夜勤 明け 休み 早番
C 遅番 夜勤 明け 休み 早番 日勤
D 夜勤 明け 休み 早番 日勤 遅番
E 明け 休み 早番 日勤 遅番 夜勤
F 休み 早番 日勤 遅番 夜勤 明け

 

7:00より勤務開始となる早番をした次の日は、早番より遅い勤務開始時間となる日勤や遅番、夜勤を配置します。

参考:シンクロシフト よくあるお問い合わせ『正循環のシフトとは何ですか?

シンクロシフトの詳細はこちらよりご確認ください

正循環シフトが推奨される理由

シフトを作成するとき正循環を意識したほうがよい理由は、以下の3つです。

正循環シフトが推奨される理由

 
1.現場職員の身体的負担を軽減し、十分に休息が取りやすい
2.次の勤務へのリズムが整えやすい
3.勤務中において集中力を維持しやすい

正循環シフトの大きなメリットは、現場職員にとって無理のないシフトのため、健康的な生活が送れる点です。

たとえば、遅番(11:00~20:00)勤務が終わって次の日が早番(7:00~16:00)だと、十分に休息がとれず遅番の疲れを早番に持ち込んでしまう可能性があります。

とくに夜勤のある介護施設の場合、日中勤務から夜勤となると生活リズムを変える必要があるため、身体的負担が少なからずかかるのです。

さらに、こうした身体的負担が蓄積されると、介護現場業務に大きな支障をきたします。休息がとれず身体的・精神的疲れが残ったままだと、集中力が維持できず細かいミスをしてしまいます。

最悪の場合、ご利用者の事故につながる可能性があるのです。正循環を意識したシフトを作成することで、現場職員が十分に休息をとれ、トラブル・事故リスク軽減や離職防止につながります

正循環シフトなどの効果的なシフト作成のコツについては、以下の記事を参考にしてください。

サーカディアンリズム(概日リズム)とは

できる限り現場職員の負担を少なくするためには、正循環シフトを活用していくことが求められています。この正循環シフトは、人間における「サーカディアンリズム(概日リズム)」と深いかかわりがあるのです。

サーカディアンリズム(概日リズム)とは、人間の体温やホルモン分泌といった機能は約24時間のリズムで変化することをいいます。

《サーカディアンリズム》
サーカディアンリズム(概日リズム)
出典:公益社団法人 日本看護協会 『看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン』P.15

このサーカディアンリズムの作用により、人間は昼間に活動して夜間に休息・睡眠をとっているのです。

しかし、夜勤や不規則な勤務続きでサーカディアンリズムが乱れると、以下のような健康に関する負担がかかると言われています。

・睡眠の質が低下する
・疲労回復効果が低下する
・ストレス解消機能が低下する
・健康障害を引き起こす

介護施設では24時間体制で介護ケアにあたるため、介護職員は日中勤務だけではなく夜勤も行う必要があります。とくに、夜勤明けの次の日でも日中勤務があると休息がなかなか取れず、疲れが残ったまま現場業務に入ってしまいます。

サーカディアンリズムに則ってシフトを作成するのはかなり難しい現状ではあります。しかし、少しでも現場職員の負担を減らすために、シフト作成者や施設・事業所の責任者は、以下の点を留意しておきましょう。

・1人あたりの夜勤回数を月に4~6回にする
・夜勤の後は休日を取る
・夜勤中に仮眠を取れる環境を整備する
・夜勤業務を見直す

サーカディアンリズムという人間の機能という視点でも、正循環を意識したシフトは推奨されているのです。

参考:厚生労働省 e-ヘルスねっと 『体内時計

逆循環シフトとは

一方で、正循環シフトとは反対に、勤務時間が前にずれてしまう逆循環シフトがあります。たとえば逆循環シフトは、下表のようなシフトです。

《逆循環シフト 例》

職員名 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5 8/6
A 遅番 日勤 早番 夜勤 明け
(残業)
休み
B 日勤 夜勤 明け 遅番 休み 夜勤
C 夜勤 明け 日勤 休み 遅番 日勤
D 早番 早番 休み 日勤 早番 早番
E 明け 遅番 遅番 早番 休み 遅番
F 休み 休み 夜勤 明け 夜勤 明け

 

遅番の次に日勤、または夜勤明けの後にも日中勤務が入っており、現場職員にとって体調や精神面で負担がかかりやすいシフトです。

介護現場では現実に多い逆循環シフト

疲れが取れず出勤したくない介護職

始業時間が次の日よりも早くなる逆循環シフトは、実際の介護現場でよく見られるシフトです。しかし、現場職員からすると、

・また明けの次の日が勤務になってる…
・遅番した次の日に、早番はきつすぎる…
・シフトの作成、下手すぎる…

と思う可能性はかなり多く、勤務に対するストレスを感じてしまいます。遅番や夜勤でくたくたになっているのにもかかわらず、朝早くに起きて出勤するのはかなりつらい状況です。

こうしたストレスや不満が溜まってしまうと、リーダー・主任といったシフト作成者だけでなく、シフトが優遇されている(とみえてしまう)職員へ怒りをぶつけてしまい、チーム全体の雰囲気を悪くさせてしまう可能性があります。

シフト作成者は、できる限り逆循環にならないシフトを心がけるとともに、そうなってしまった場合は早めにフォローすることが必要です。

介護現場で逆循環シフトになる理由

シフト作成のときに逆循環になってしまう主な原因は、以下の点です。

介護現場で逆循環シフトになりやすい理由

 
・人手不足によりシフトの調整ができない
・曜日固定・勤務固定の職員がいる
・シフト作成者のスキルが不足している

とくに、介護業界では慢性的な人手不足であるのが現状です。職員が希望するようなシフトを組むのが難しく、逆循環シフトになる可能性が高くなります。

さらに、曜日固定・勤務固定の職員がいると、常勤職員などの他職員が別勤務になる必要があるため、逆循環シフトになりやすいのです。

正循環シフトは心身への負担がより少ない働き方

正循環シフトは、変則的なシフトで勤務している現場職員にとって心身の負担がより少ない働き方です。もちろん夜勤があるため、少なからず負担はかかってしまいます。

シフト作成の段階から、その負担をなるべく減らしていくことが重要です。夜勤や交代制勤務において、以下の点で正循環シフトを活用する意義があります。

・心身の健康保持を「個人」と「組織」で取り組む
・長い職業人生を見据えた働き方をマネジメントする
・ワーク・ライフ・バランス推進の一環として取り組む

夜勤では、1人もしくは少人数で多くのご利用者の対応が求められます。そのため、各職員がスキルアップにより負担の少ない働き方をするだけでなく、施設・事業所でも夜勤の負担を減らしていく取り組みが必要です。

とくに、ただでさえ人手不足が深刻な介護業界であり、夜勤や逆循環シフトにより心身の負担を増やさないことが求められます。介護職員に負担がかかるシフトが続くと、職員が疲れ果てて退職してしまう恐れもあります。その結果、しわ寄せはご利用者へのケアの質低下へとつながるのです。

正循環シフトは、現場職員が働きやすく心身の健康を保持しやすい働き方だといえます。

参考:公益社団法人 日本看護協会 『看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン』P.7

夜勤、不規則勤務が介護職の健康にもたらす影響

寝ても疲労が取れない介護職

夜勤や不規則な勤務が続くと、介護職員の健康にさまざまな影響をもたらす可能性が高くなります。とくに、睡眠障害を引き起こす原因となり、以下のような症状が出てくるため注意が必要です。

睡眠障害の症状

 
・入眠困難:寝つきが悪くなる
・中途覚醒:夜間目覚めてその後眠れない
・早朝覚醒:早朝に目覚めてしまう

十分に睡眠時間が取れないと、日中に眠気が来てしまい、集中力・記憶力が低下します。さらには、ミスやイライラが増え、ご利用者や他職員とのコミュニケーションに悪い影響を与えかねません。

介護職員個人では質の良い睡眠がとれるように対策するとともに、施設・事業所としても、正循環シフトや夜勤回数、夜勤業務の見直しが必要です。

その他、睡眠やストレスに関する詳しい内容について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

介護施設での正循環シフトが難しい理由

正循環シフトは、介護職員にとって働きやすく負担の少ない働き方ですが、実際のところ課題が多く、なかなか正循環シフトに取り組めない施設・事業所が多くあります。

この課題を解決するためには、施設・事業所全体で正循環シフトの働き方になるよう取り組むことが必要です。そのためには、主に以下2つの視点で対策していくことが求められます。

1.人材の側面
 a.人手不足
 b.曜日固定・勤務固定職員の存在

2.シフト作成者の状況
 a.そもそも正循環シフトを知らない
 b.正循環になるようなシフト調整ができない
 c.シフト作成に費やす時間がない

とくに、シフト作成者の能力や作成業務に費やす時間を考慮することが重要です。もしシフト作成が難しいと感じ、他業務にも忙殺されなかなか作成できない場合は、シフト作成ソフトを活用しましょう。

シフト作成ソフトの機能にもよりますが、介護業界向けのシフト作成ソフトを活用することで、自動で希望休の入力や正循環シフトの作成が完了し、その分他の業務へ集中することができます。

シフト作成ソフトのメリットや期待される効果について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。

正循環シフト作成に取り組む価値は大きい

介護施設の高齢者と介護職員

正循環シフトは、働く職員や施設全体、さらにはご利用者にとって有意義な取り組みです。

独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所と株式会社サインキューブで共同研究した「シフト表の最適化による介護従事者への影響」によると、手入力のシフトと比べ、シフト作成ソフト「シンクロシフト」を導入・活用すると、

・肉体の疲労回復に効果がある深い睡眠
・精神の疲労回復に効果があるレム睡眠

有意に増加するという効果がみられました。

つまり、「シンクロシフト」を活用することで、シフト作成者の業務負担の軽減だけでなく、介護職員の健康状態の改善につながっているのです。この2つの改善により、離職率の低下や施設・事業所の価値向上という運営への効果も期待されています。

実際のところ、24時間シフトの介護現場では正循環シフトをうまく活用することは難しいと感じてしまうかもしれません。しかし、職員の健康やご利用者の安全を考慮するならば取り組む価値は十分にあります。

詳しくは以下のプレスリリースをご確認ください。

参考:2024年6月4日 PR TIMES 『健康ソリューション「シンクロシフト」導入により、疲労回復に重要な「深い睡眠の量が有意に増加」という調査結果を日本産業衛生学会で発表

まとめ

この記事では、正循環シフトの概要や期待される効果について解説しました。正循環シフトは、働く職員を守るため、ひいてはご利用者の満足度を向上させることでしょう。

より質の高い介護サービスを提供するためにも、また働く職員の健康状態を守り長く働いてもらうためにも、無理のない健康的なシフトを作っていくことは、これからますます重要となってくると考えられます。

「現状、正循環シフトを達成させるのは難しい」と感じるかもしれませんが、少しでも活用できるよう意識することが重要です。

この記事を読んで、シフト作成に悩んでいる管理者やリーダーの一助になれば幸いです。

また、ShiftLifeではシフト作成に関する記事を多数掲載しています。シフト作成について悩みを抱えている方は、ぜひ以下の記事をご覧ください。

 

この記事の執筆者しょーそん

保有資格:介護福祉士 認知症実践者研修 修了 認知症管理者研修 修了 認知症実践リーダー研修 修了

グループホームに11年勤務し、リーダーや管理者を経験。
現場業務をしながら職員教育・請求業務、現場の記録システム管理などを行う。

現在は介護事務の仕事をしながら介護・福祉系ライターとしても活動中。

 

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