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【教えて!】介護職の新人指導のコツとは?育てて定着させるためのポイントを解説

介護職の新人指導のコツとは

新人介護職員が入職してきた時、何をポイントに新人の指導を行いますか?多くの介護施設で人手不足が課題にあがる中、新入職員には早く仕事を覚えてもらいたい!と期待してしまい、あれこれと覚えてもらおうと新人の指導にも熱が入る事でしょう。
 
しかし熱心な指導も、やりかたを間違えては、かえって逆効果になってしまい、折角採用して入った新人職員も定着せず、熱心な指導も空振りに終わる可能性もあるでしょう。職員の定着には、その指導方法だけでなく、周囲の人間関係などの環境も含めて考える事が大切です。
 
この記事では、介護職の新人指導のコツ、新人職員をしっかりと着につなげるために押さえるべきポイントと、退職理由として多く挙げられる人間関係の課題である、新人介護職員と先輩職員との良好な人間関係を築くコツについて解説しています。

介護職の新人指導 基本的な内容とは

新人介護職への指導

新しく介護職員が入職した際に、まずは何から教えますか?

精神面、技術面、業務を行う上で覚えてもらうべきことはたくさんあります。しかし最初からあれこれと多くの事を教えても、覚えることが多すぎると中々身につかず、指導する側もされる側も大変な労力が必要になるでしょう。

多くの施設が介護職の人手不足を課題としています。そのため新人介護職員の定着はとても重要だといえます。新人職員の成長のため、教えるべきポイントを絞って指導していきましょう。

まず最初に教えるべきは、

「会社、施設の理念や方針」
「介護職としての心構え」
「一日の流れ」
「コミュニケーションの大切さ」
「事故の危険性」
「接遇マナー」

かと思います。介護の技術面に関する事も大切ですが、まずは意識の面から教えることで、本人の成長を促すことが出来るでしょう。

介護職の新人指導のコツはステップに分けること

新人介護職員を指導する時のコツは、段階を踏んで教えるという事です。入職したばかりの新人職員に、いきなり入浴介助などの身体介護をしてもらおうとしても、事故の危険性も高く、最初から完璧に行える新人はいないでしょう。

まずは利用者の顔と名前を一致させるために、コミュニケーションを図ることに重点を置き、利用者それぞれの特徴を掴んでから、事故の危険性の低い簡単な業務(車椅子の移動介助や、物品の補充など)から行ってもらいましょう。

一つ出来たら次の段階へとステップを踏んで指導することで、できる事とできない事が明確になります。そうして業務の明確な目標設定をする事で、新人職員も目標達成によって自身の成長を感じられ、次の目標への意欲の向上にも繋がるでしょう。

仕事の目的を説明する

仕事の内容を説明する前に、まずはその目的から説明します。仕事の目的を理解することで、仕事に対する意識が向上し、介護事故などのトラブルの危険性を低下させ、安全性の向上に繋がります。

また、それぞれの仕事の目的を理解する事で、他のスタッフが今何の仕事をしているか?なぜその動きをしているのかも把握できるようになるでしょう。介護の仕事ではチームワークが大切です。

一つ一つの業務は個人で行っていても、全体の流れを見れば他のスタッフと連携し、互いの業務をフォローし、協力し合うことで作業効率の向上にもつながります。ただ単純に業務を教えるのではなく、その目的を理解してもらうことで、新人職員の今後の成長の基盤にもなるでしょう。

仕事の手順を説明する

一つ一つの業務についてもしっかりと手順を説明する事が大切です。利用者の身体介護などは誤った手順で行えば、思わぬ事故につながるおそれもあり、同じ介助でも一人一人の状態に合わせて適切なケアを行うためにも、正しい手順を説明しましょう。

健康な人にとっては些細なケガも、高齢者にとっては思わぬ大ケガになる可能性もあります。又、誤った手順の介護は利用者だけでなく、介護者自身のケガに繋がる可能性もあります。

腰痛や腱鞘炎は介護職では職業病と言われており、悪化すれば腰椎捻挫症、いわゆるぎっくり腰や、腰や頸椎のヘルニアにもなりかねません。正しい手順を覚えることは、介護事故の防止と介護者の怪我の予防のためにも大切なことなので、丁寧に手順を説明しましょう。

手本を見せる

新人職員に業務を任せる前に、指導する側がまず手本を見せましょう。まだまだ業務に慣れていない新人が突然仕事を任されては、とても不安を感じるかと思います。

いくら言葉で丁寧に手順を説明しても、実際の動きを見なければ、なかなか動きのイメージが出来ない部分もあるでしょう。身体的な特徴や持病など、利用者によって様々な違いがあります。

介護の基本的な技術は習得していたとしても、同じ入浴や排泄の介助でも、利用者の状態が違えば対応も異なります。新人が一つの業務に対して自信を持って行えるようになるまではもちろん、利用者も安心して介助を任せられるようになるまでは、細かなポイントを説明しつつ、手本を見せて指導していきましょう。

実際に仕事をしてもらう

しっかりと手順を説明し手本を見せたら、実際に業務を行ってもらいましょう。とはいえ、初めての業務を行う際は新人職員も不安を感じているもの。そのため、実際に業務を行う際は指導する職員は近くで待機して、いつでもフォローできるようにしましょう。

しかし、指導する側にも注意は必要です。自身の業務をじっと見られるというのは、新人にはプレッシャーに感じられ、思わぬ失敗をするかもしれません。

指導する側は、新人が安心して業務を行えるよう、緊張しない雰囲気づくりや、失敗をしてもフォローが出来るようにしておくことが大切です。とはいえ、失敗しないようにと、過剰に手助けをしてしまっては、折角の新人の成長の場を奪ってしまう事にもなるので、手助けは必要最低限に留め、新人が自身の力で業務を行えるように見守りましょう。

感想を聞く、フィードバックをする

業務を行った後はその評価、振り返りをすることが大切です。仕事の様子をフィードバックする事で、失敗した部分や手間取ったところがあれば、何がどう悪かったのか適切に指摘し、次回以降の業務で改善できるように促していきましょう。

ただし指導する側の注意点として、決して失敗を責めるような言い方にならないように注意しましょう。伝え方によっては萎縮してしまい、今後も同様の失敗をしてしまう可能性もあります。

とは言え、言い方に配慮しすぎて、肝心の伝えるべきポイントが伝わらなければ意味がありません。言い方に配慮しつつも、良かった点、悪かった点をしっかりと伝えていきましょう。

またフィードバックをする事で、指導をする側にとっても、手順やポイントを再確認することができます。自らの介護技術を見直す機会にもなります。このように評価、振り返りをすることは指導する側・される側、どちらにとっても成長のチャンスですので、しっかりとこの機会を活かしましょう。

新人介護職員を指導するコツ

申し送りをする介護職員

新人の職員を指導する際に大切なのはメンタル面のフォローです。入職したばかりの新人職員は慣れない環境で覚えることも多く、様々な不安を抱えています。

相手の気持ちを考えず、一方的にこちらからの情報を伝えるだけでは適切な指導とは言えません。相手への配慮を欠かさないという事は、新人の指導においてだけでなく、介護職としても大切な事です。

慣れない環境での仕事は、常に気を張りつめているため、身体的、精神的にも消耗してしまうでしょう。そんな状態が続けば、折角入職した新人も定着に繋がらないかもしれません。

新人職員を指導する際のコツは、日々の業務だけでなく、コミュニケーションの中から些細な変化を感じ取り、精神的なフォローをしていくことも大切です。

手本を見せる

新人介護職員に指導を行う際は、まず指導する側が手本を見せるようにしましょう。手本を見せる目的として、病歴や障害など、利用者の情報は口頭で説明できますが、介護の技術や利用者に対する介助のコツなどは、手順が複雑な内容もあるため、口頭だけでは説明が難しいためです。

しかし、説明を聞いただけという場合と、実際に手本を見た場合とで、指導内容に対する理解の度合いには大きな差があります。また、指導する側が率先して手本を見せることで、求める水準や目標を明確に示す事が出来ます。

求める基準が曖昧なままでは、今後仕事を任せた場合、中途半端に業務を終える可能性があります。そうならないよう、業務の完成形を手本を見せることで示すことが大切です。

人前で叱らない

新人職員が仕事でミスをしてしまった際の叱り方にも注意しましょう。失敗に対してあまり時間をかけず、すぐに指摘するのも大切ですが、人前は避けるなどの配慮をしないと、こちらの伝えたい意図が正確に伝わらず、ただ相手の自尊心を傷付けるだけの結果になってしまう可能性があります。

介護施設ではハラスメント研修が令和6年4月1日から義務化されますが、既に研修を行っているところもあり、いくら指導する側が新人の成長を期待しての言葉だとしても、それを伝える状況によってはパワーハラスメントと捉えられてしまうかもしれません。そうならないためにも、叱るときは状況や話し方にも配慮しつつ、同時に改善する方法も提案するようにしましょう。

できるようになったことに着目し褒める

新人職員の指導の際には出来なかった事を指摘するだけでなく、ステップを踏んで指導する中で、できるようになった事をきちんとほめるようにしましょう。

できた事をほめる事で本人の自信につながり、仕事に対しての積極性や、褒めてくれた相手に対しての信頼感の向上といった効果も期待できるので、褒めることで人間関係を円滑にする事ができるでしょう。

いくら個人としての仕事の能力が高くても、チームワークが大切な介護の現場にとって、人間関係を良くすることは、スタッフのクオリティを上げ、結果的に施設全体の質を上げる事に繋がります。ただ褒めすぎることで浮足立っては、思わぬミスをしてしまう可能性もあるので、適切なタイミングで、適切に褒めることで新人の成長を促していきましょう。

分かりやすい指示を出す

指導する側は、指導される側にとって分かりやすい指示を出す事を心がけましょう。最初の内は仕事を覚えきれていないことで、緊張や周囲への遠慮もあり、曖昧な指示ではかえって混乱させてしまいます。

指示を出す際は、何をどうするかをハッキリと伝え明確な指示を出しましょう。又、専門用語や略称を使う場合も注意しましょう。特に略称などは、その施設独自の呼び方をしている場合もあるので、慣れないうちは何を指しているのか伝わらないこともあるでしょう。

業務が忙しい時は特に指示する側も、指示に余裕が感じられない場合もありますが、指示する側が焦ってはその指示を受ける側は余計に焦ってしまいます。落ち着いて明確な指示を出すよう心がけましょう。

指導内容を一貫させる(指導責任者を明確にする)

新人職員の指導においては指導内容を一貫させることを心がけましょう。職員皆でフォローや指導を行うというやり方も決して間違いではありませんが、指導する側の人間が増えるという事は、その分指導する内容に違いが出る可能性があります。

Aさんはこう言っていたけど、Bさんはこう言っていた

といったように混乱させてしまうかもしれません。そうならないように、指導には担当の職員を決め、その職員が専属で指導を担当する事で、指導のダブルスタンダードを防止します。

新人の教育について専属の担当者を決めることで、新人との人間関係も構築しやすく、指導効率も上げられます。とはいえ、シフト勤務の多い介護職では、担当の職員とシフトが合わないこともあります。そういった時の場合に備え、サブの指導担当の職員も決めておきましょう。

一回の指導でできると思わない

新人職員の指導は根気よく行う事が大切です。介護の技術はもちろん、利用者それぞれの特徴やそれに紐づく持病や障害などの知識といった、現場での知識。

そして報告書や日報の作成などの事務作業といったように覚えることはとても多く、特に新人のうちは多くの事を一度に詰め込もうとするため、かえって習得が遅れてしまう事があります。

そのため、仕事内容によっては二度三度と同じ内容の指導を行う事もあるかもしれません。また、指導したことを習得するまでの早さには当然個人差があり、別の新人や自分が一度で覚える事が出来たからと言って、皆が同じように出来るとは考えず、教えた内容がしっかりと定着するまで何度でも指導するくらいの気持ちで臨みましょう。

先入観を持たずに指導する

新人職員の指導において先入観を持って行うのは禁物です。『これくらいならできるだろう』『これは言わなくても分かるだろう』といった思い込みで仕事を任せてしまうと、正しい技術を習得しないまま業務を行い、思わぬ事故に発展する可能性があります。

逆に『これはまだ出来ないだろう』と思って、仕事を任せないままでいると、せっかく覚えた知識や技術を定着させることが出来ず、新人の成長を妨げることになります。そうならないためにも、新人の仕事の習得具合を適切に把握することが大切です。

そのために指導を行う際は、業務の習得具合を明確にするために、業務別に段階を分けたチェックリストを用いるなどして、業務の習得の具合を確認しながら指導を行いましょう。

新人介護職員が職場に定着するために重要なこと

新人介護士

新人職員が職場に定着するためには、技術的な指導だけでなく、メンタル面のサポートも重要です。介護は体力的にも厳しい仕事である上、新しい職場では人間関係など様々な面でも精神的にストレスを抱えがちです。

介護職の退職理由に関して『公益財団法人介護労働安定センター』が調査を行った、令和4年度の『介護労働実態調査』を見ると、退職理由の上位2つは以下となっています。

『職場の人間関係に問題があったため(27.5%)』

『法人や施設・事務所の理念や運営のあり方に不満があったため(22.8%)』

この上位二つだけで全体の退職理由の50%近くを占めています。退職理由の中には他者では解決できない原因のものもありますが、これらの理由に関してお互いにコミュニケーションを図り、お互いの考えや気持ちを理解する事で改善の可能性があるものだと思います。

新人職員の定着にとって、コミュニケーションを図りやすい職場環境が大切と言えるでしょう。

放置せずコミュニケーションを丁寧に取る

新人職員の教育担当になった際、最も大切なことはまず、人間関係の構築です。入職したばかりの新人は、仕事において右も左も分からない状態です。

いくらこちらがなんでも聞いてほしいと言っても、遠慮したり、そもそも何を聞いていいのかも分からないかもしれません。新しい人間関係をうまく築けないと、精神的に大きなストレスを抱えたままになりやすいです。結果として、仕事へも悪影響が出るかもしれません。

もし指導担当者と新人介護職員が良好な人間関係が築けていない場合、仕事を通して出た疑問も質問できず、疑問を放置したままでは仕事も覚えられずにストレスを抱えてしまう、といった悪循環に陥ってしまいます。抱えるストレスが大きくなってくると、新人介護職員の離職につながる恐れもあります。

そうならないように、指導担当は新人を放置せずに、丁寧にコミュニケーションを図りましょう。

指導担当以外の新人介護職員への声掛けも大切

新人教育において、自分が担当する新人職員とのコミュニケーションは当然大切なものですが、自分が担当する以外の新人職員とのコミュニケーションも大切にしましょう。指導において専属の担当を決めることは指導内容を一貫できる反面、他の職員とのコミュニケーションの幅を狭めてしまう可能性があります。

指導する側にとっても、コミュニケーションを通して指導の内容に偏りがないか、ストレスを感じさせる対応になっていないか、など自身の指導を振り返るきっかけにもなります。新人にとって既に人間関係が構築されている先輩職員の輪に入っていくのは、なかなかハードルが高いものです。

新人職員の定着のためにも良い人間関係を築くため、担当以外の新人ともコミュニケーションを図るように心がけましょう。

新人教育の重要性を職員全員が共通で理解する

新人の教育においてはいくつかの重要なポイントがあります。まず一つは介護技術の習得です。直接的な介護の技術や利用者とのコミュニケーションなど、ステップを踏んで指導を行うことで、仕事に必要なスキルや知識を身に着ける事です。

個人のスキルを向上させることで、チーム全体の生産性を向上させます。そして新人教育で次に重要なことが、仕事に対する意識や目的の共有です。

退職理由の上位にも上がる『理念や方針の違い』に対して、コミュニケーションの充実を図ることで、目的意識を共有し、理念や方針の理解を図ることで、円滑に業務を進めることが出来ます。

また、新たな職員を獲得する事は、新しい考えや視点を獲得することでもあり、組織の成長のためにも新人教育の重要性を全員で共有しましょう。

まとめ

新人介護職員の指導は、技術面の指導、理念や目的の共有、信頼関係の構築と多くの目的がありますが、それ以外にも指導する側にも得られる効果があります。

他者に自身の技術を伝え指導を行う時、自然とどうすればちゃんと伝わるかという事を考えます。そうして自分の行動を振り返ることで、自身の仕事ぶりを再確認できます。技術や知識はインプット(入力)だけでなく、それをアウトプット(出力)する事でより強固な物になります。

つまり指導する側も自身が覚えるだけでなく、それを新人に伝えることで、指導する側の能力の向上を期待できるということです。そうした循環がチーム全体の質の向上につながります。

そして新人職員を指導するときに重要なこととして信頼関係の構築があります。新人の技術の習得を行いつつ、職員同士の信頼関係を築くことからはじめていきましょう。それには職場の心理的安全性を普段から意識し、向上させておくことも大切です。

シフトライフでは職員の定着率向上に関する記事として、以下のような記事も掲載しています。合わせて参考にしてみてください。

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この記事の執筆者タツキ

保有資格:介護福祉士、社会福祉主事

専門学校卒業後から高齢者福祉の分野に従事。様々な現場での経験を経て、サ高住、有料老人ホームの施設長を務める。

現在は通所介護施設の管理者として尽力している。

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