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【2024年介護報酬改定】新興感染症等施設療養費(新規加算)とは?算定要件やポイント、注意点を解説!

新興感染症等施設療養費とは

令和6年度介護報酬改定では、大項目「地域包括ケアシステムの深化・推進」の中に「感染症や災害への対応力向上」という項目があります。その項目に沿って、新興感染症等施設療養費など感染症対応や医療と介護の連携についての加算が新設されています。
 
コロナ禍においては、新型コロナウイルスの影響で救急医療体制がひっ迫され、医療機関が新型コロナウイルス以外の病気による救急を受け入れることが難しくなりました。
 
将来的な新興感染症等に備えた感染症対策にあたっては、コロナ過における対応を踏まえつつ、平時から高齢者施設での感染予防能力の向上を図ること、施設内で感染が拡大した場合における対応を適切に行うために、医療機関と高齢者施設での連携を強化することが望まれています。
 
そこで、感染症による医療体制のひっ迫を防ぐため、高齢者施設内で感染者の療養を行うことを評価する「新興感染症等施設療養費」が新設されました。今回は2024年度の介護報酬改定で新設された「新興感染症等施設療養費」について、算定要件やポイント、注意点を解説していきます。

新興感染症等施設療養費の概要

新興感染症等施設療養費の概要は以下の通りです。

・新興感染症のパンデミック発生時等において、施設内で感染した高齢者に対して必要な医療やケアを提供する観点や、感染拡大に伴う病床ひっ迫を避ける観点から、必要な感染対策や医療機関との連携体制を確保した上で感染した高齢者を施設内で療養を行うことを新たに評価する。

・対象の感染症については、今後のパンデミック発生時に必要に応じて指定する仕組みとする。

新興感染症等施設療養費の対象事業者

新興感染症等施設療養費の対象事業者は以下の通りです。

・特定施設入居者生活介護(指定を受けた有料老人ホームや軽費老人ホームなど)
・地域密着型特定施設入居者生活介護(指定を受けた入居定員30人未満の有料老人ホームや軽費老人ホームなど)
・認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
・介護老人保健施設
・介護医療院

新興感染症等施設療養費の算定要件

新興感染症等施設療養費の算定要件は以下の通りです。

・入所者等が別に厚生労働大臣が定める感染症※に感染した場合に相談対応、診療、入院調整等を行う医療機関を確保し、かつ、当該感染症に感染した入所者等に対し、適切な感染対策を行った上で、該当する介護サービスを行った場合に、1月に1回、連続する5日を限度として算定する。

※ 現時点において指定されている感染症はない。

新興感染症等施設療養費の単位数

新興感染症施設療養費の単位数は以下の通りです。

・新興感染症等施設療養費 240単位/日
(1月に1回、連続する5日を限度として算定。)

参照:厚生労働省 老健局 令和6年度介護報酬改定における改定事項について P.47 1. (5)② 施設内療養を行う高齢者施設等への対応

新興感染症等に対する高齢者施設の取り組み・ポイント

新興感染症等施設療養費の対象となる感染症は今後のパンデミック発生時に必要に応じて指定される仕組みとなっています。そのため、対象となる感染症が指定されていない現在(2024年5月時点)では算定されることはありません。

新型コロナウイルスの蔓延によって、多くの高齢者施設で多大な影響を受けることとなりました。新興感染症等施設療養費が算定できるとしても、高齢者施設で利用者が新興感染症に感染した際に施設で療養することは、適切な感染症対策が行われていないと施設内でのクラスター発生に繋がるリスクもあります。

新型コロナウイルスでの対応を踏まえつつ、高齢者施設は医療機関と連携し情報共有を行い、適切な感染対策を行い、施設内での感染を最小限に留めるよう努めなければなりません。

また、施設内での療養を行う場合には、感染者に対する必要な医療の提供のほか、個人防護具を着用した上での日常のケアの実施、ゾーニングと感染者の個室への隔離、施設外からの応援職員も含めた勤務調整、感染者以外の入所者の健康管理、消毒等の衛生管理、保健所への連絡などさまざまな業務が発生することとなります。

新興感染症が発生する前から、発生後を想定した準備や訓練を行い、利用者が施設で過ごしていけるように業務を継続していく必要があります。それらの対策を行い、新興感染症による感染者が施設内で療養できる体制をとりパンデミックを予防することが、新興感染症等施設療養費を算定する際には重要となります。

まとめ

新型コロナウイルスの発生以後、平時からの感染症対策として、令和3年度介護報酬改定により施設系サービスにおいて

・感染症の予防や蔓延防止のために委員会の設置や研修の実施
・感染症発生を想定した訓練(シミュレーション)の実施

が3年間の経過措置を設けたうえで義務化されていました。

今年度に行われた令和6年度介護報酬改定においても、今回解説した「新興感染症等施設療養費」をはじめ、高齢者施設と医療機関の間で連携し情報共有のための会議を行うことを評価する「協力医療機関連携加算」や、感染症への対応を行う医療機関と連携していることや、適切な感染対策を行っていることなどを評価する「高齢者施設等感染対策向上加算」などの新たな加算も創設されています。

 
これらのことから、高齢者施設では医療機関と連携し、必要な時には医療機関の協力を受けながらも、利用者ができるだけ長く施設で生活を送れるようにすることを求められていると言えます。

新型コロナウイルスの苦しい経験から、新興感染症が発生しないに越したことはありません。しかし、いつ何時発生するか分からないからこそ、常日頃から医療機関との連携を図り、研修や訓練などの感染症対策の準備をしておくことが大切と言えるでしょう。

この記事の執筆者こまさん

所有資格:作業療法士

経歴:作業療法士として医療分野では病院でのリハビリテーション業務に従事、介護分野では訪問リハビリテーション事業所を経て、現在は特別養護老人ホームの機能訓練指導員として従事。

入居者へ多職種で行う機能訓練の提供や、介護士への介護技術指導、LIFEや介護報酬改定に関わる業務などを担っている。

 

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