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【教えて!】介護職員の定着率を向上させるポイントとは?人材育成、業務効率化の重要性

介護職員の定着率を向上させるポイントとは

介護業界では、2025年から2040年に向けて、高齢者の増加による介護サービスの需要増加、それに伴い必要とされる職員の確保が大きな課題となっています。
 
しかし、人材不足の深刻化は多くの産業で同様な課題となっており、介護業界においても新しい人材を確保することが一層困難になっています。そのため、介護職員の定着率向上が重要です。
 
介護職は未経験からでも働きやすい職種として入職される方も一定数いますが、支援に必要な知識や技術だけでなく、利用者やその家族と上手にコミュニケーションを取るためのスキルも必要となるため、現実的には仕事に慣れる前に離職してしまう方も少なくありません。
 
本記事では離職率を低減し、職員の定着率を高める取り組みについてポイントを紹介します。職員の離職率に悩んでいる、今よりも職員の定着率を向上させたい、といった場合には参考にしてみてください。

介護職の定着率向上が重要な理由

介護職員が定着しない、といった悩みを抱える介護事業所は多いのではないでしょうか。介護業界では、深刻な人手不足に直面しており、今後もこの傾向が続くと予測されています。

人手不足の状態が続けば、事業の継続が困難になる恐れもあります。そのため、介護職員の定着率を向上させ、教育し、質の高い介護サービスの提供につながるスキルを向上させることは施設運営上、非常に重要になります。

職員の定着率が向上することで介護サービスの質が一定に保ちやすくなり、結果的に利用者の満足度向上や安定した事業所運営につながります。人手不足の状況に陥ると職員の採用活動に目がいきがちですが、定着率を上げることも同時に大切です。

離職率が上がり、人手不足・介護サービスの質の低下などの悪循環に陥らないように対策をしておきましょう。

介護業界の人手不足の状況

介護業界の人手不足

介護業界は、少子高齢化の影響で、深刻な人手不足に悩まされています。その背景として、要介護・要支援の認定者数が増加していることが挙げられます。

2023(令和5)年度末の要介護(要支援)認定者数は約708万人となり、前年度に比べ約2.0%増加しています。公的介護保険制度がスタートした2000(平成12)年度の認定者数約256万人と比べると約2.8倍増加しています。

引用:公益財団法人 生命保険文化センター

介護人材の不足については、第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について、令和6年7月12日に第9期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき、都道府県が推計した介護職員の必要数が公表されました。これによると、2040年には介護職員は約57万人不足するとされています。現実的にこの不足数が解消されることは難しいと考えられています。介護需要が増える一方、少子化により労働人口の減少で、人材確保が難しくなっていることが分かります。

第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について

参照:介護人材確保に向けた取組について | 厚生労働省

介護職員の離職率が高い時期はいつ?

離職率が高いと言われている介護業界の中でも、特に離職率が高い時期が、働き始めて1年目、3年目と言われています。

令和4年度の介護労働実態調査では、令和3年10月1日から令和4年9月30日までの1年間に介護の仕事を辞めた14,433人のうち、勤務1年未満の離職率が34.4%、勤務1年以上3年未満の離職率が25.5%を占めており、全離職者の約60%が3年以内に離職していることがわかります。

また、職種別で見ても、サービス提供責任者以外の職種では、半数以上が3年以内に離職しています。

離職者の勤務年数

参照:事業所における介護労働実態調査 結果報告書 P.33

新人の頃は、仕事を覚えることや資格の取得などがモチベーションになっていても、経験を重ねて出来る仕事が増えてくると、仕事に対する情熱、やる気が失われてしまいがちです。そうした心情の変化も、モチベーションの低下へと繋がり、退職を考えるきっかけとなってしまいます。

こうした結果から、介護業界において3年目までの離職率が高い傾向にあるということがわかります。

介護職員が退職してしまう主な理由

介護職員がすぐ辞める職場

介護の仕事は、仕事内容が大変というネガティブなイメージを持つ人も多いでしょう。実際に肉体的にも精神的にも負担が少なくありません。特に人手不足により、職員一人あたりの業務負担が大きくなっていると、なおさら厳しい状況だといえます。

身体介助や移動介助などの重労働や排泄介助、オムツ交換などで腰や膝などを傷めたり、感染の危険があったりと、過酷なイメージが介護職の人気に少なからず影響を与えています。

仕事内容に対して、給与水準は高くなく仕事内容と給与水準がアンバランスなことも退職の理由となっています。他にも様々な退職理由があげられます。

介護職員の定着率を上げるためには、職員の主な退職理由を知っておくことも重要です。以下、退職の主な理由として多いものを確認していきましょう。

職場の人間関係への不満

介護職を退職する理由で1番多いのは、職場の人間関係の問題です。

介護の仕事は、個人で仕事をすることよりも、多職種が協力したり、介護職員同士が情報を共有しながら協力し合うことがとても重要になります。周囲とのコミュニケーションが上手くいかなければ、仕事がスムーズに進まず、施設全体として質の高いサービスが提供できなくなります。

介護の経験がある方でも、新たな職場での人間関係には不安を感じていると思いますが、未経験の方の場合は更に不安を感じてます。離職の原因となりやすい人間関係の不満については、しっかり対応や対策をしておくことが必要です。

処遇・給与への不満

介護業界全体でみれば、処遇改善加算の影響もあり徐々に給与は上がっています。しかし、まだ他業界との平均給与額とは差があるのが実情です。

厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護施設で働く専門職の平均年収は406~420万円となっていますが、介護職員は基本給約18万円に手当や一時金を加え平均月収が約31.6万円となり、平均年収は約380万円と他の職種に比べて低くなっています。

参考:令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果 厚生労働省老健局老人保健課 P.144

それに加えて、勤務時間も不規則で身体的・精神的な負担が大きいため、割に合わないと感じる方が多くいます。

少子高齢化が進む中、多くの業界で人材獲得が激化しており、賃上げが進む業界もあります。それに対して、介護業界は基本的には3年に1回の介護報酬改定を待つ必要もあり、待遇改善が追いつかない状況もあります。

施設・事業所の運営方法に不満

入職前に感じていた施設や事業所へのイメージが、実際に働き始めたら大きく違っていたというケースもあります。

自分が行いたい支援が人手が足りずに出来なかったり、有給休暇や休憩が取りづらかったり、業務に対する評価が低いなど運営方法に不満を感じて退職を決意するケースもあります。

結婚・妊娠・出産などのため

結婚や出産などによる生活の変化で退職をされる方も多くいらっしゃいます。家庭の環境が変化し、勤務時間や勤務形態が合わなくなることが主な原因です。

特に子育てとの両立が難しいと感じる方が多く、退職を選ぶ方が多い傾向にあります。

新しい資格を取ってキャリアアップするため

新しい資格を取得し、それを活かすために退職される方もいます。

資格の取得を機により専門性の高い仕事がしたいと考え、キャリアアップや給与アップを目指して転職します。介護業界は多くの職種で人手不足です。そのため、有資格者は有利に転職できるケースも多いため、引き止めることは難しいといえます。

介護職員の定着率向上のための人材育成

介護職員の離職防止には様々な対策があります。待遇を改善する、管理職も含め職員同士のコミュニケーションが円滑に取れるようにする、希望休の申請が通りやすくするなど、施設の状況に応じて効果的な対策は異なるでしょう。

ここでは人材育成という視点から、職員の定着率向上の取り組みを紹介します。職員がなかなか定着しない理由には、間違った人材育成の取り組みにより負担を増やし、モチベーションを低下させている可能性があります。

これからの介護施設では、人材の確保が必須となります。職員の教育をしっかり行いスキルアップしてもらうことで、優秀な人材を確保する取り組みが大切です。

新人介護職員への教育・研修の方法

新人介護職員へ適切な教育を行うことで、本人のスキルや将来性を高めるだけでなく、施設の運営方針への理解を深めることもできます。職員本人も、自身のスキルが上がることで仕事の幅が広がり、将来への展望も明るくなるでしょう。働き続けるモチベーションを維持しやすくなります。

人材育成を行う際には、しっかりと計画を立て、その場しのぎにならないように以下の点に注意することが必要です。

・チーム全体の共通認識として目的を設定し、目標をどこにするかを決める

・期間や内容などを検討し、客観的な評価基準を決める

・問題の発生も予想し、実行に移した後も定期的に職員と面談しながら、必要に応じた見直し、改善を行う

取り組みの一環として、代表的なものを紹介します。

OJT研修

OJTは指導担当職員が中心となって新人職員に指導を行い、実際に業務に関わりながら仕事を身に付けていくスタイルです。実践的なスキルや知識を早期に取得でき、基本的にマンツーマンで行うため、業務のやり方を統一することができます。

ただし、シフトの都合で新人職員と指導担当職員がセットにならない可能性もあるため、新人職員の質問などに対応できるサブの指導担当職員を決めておくと良いでしょう。

メンター制度

豊富な知識と経験を持つ先輩職員(メンター)が後輩職員(メンティー)に対して、キャリア形成上の悩みを援助して、個人の成長をサポートします。

メンターとメンティーの信頼関係が構築され、個人の成長を支えるとともに、職場内での悩みや問題解決をサポートします。

社内研修、社外研修

毎回テーマを決めて社内研修を行うことで、職員全員で理解を深めていく方法です。例えば、「認知症」「感染症対策」「口腔ケア」など様々なものがテーマとして考えられますが、職員や上司からの意見を反映し決めるとよいでしょう。

担当する講師は職員から選ぶことになります。他の職員に対して説明するためには対象テーマに対して深い理解が必要となるため、講師となる職員の知識の整理、スキルアップにつながります。

外部の研修に参加することも効果的です。参加した職員の知識向上、スキルアップはもとより、他施設からの参加者との交流や刺激も期待できます。新たな知見を取り入れることもできるでしょう。

外部の研修に職員全員が参加することは難しいため、研修を受けた職員が他の職員向けに、研修内容のレポートを作成したり、内容を共有してもらえる機会を設けるといった方法がよいでしょう。

管理者・リーダーへの教育も定着率向上に重要

人材育成や教育というと、新人研修に力を入れがちです。しかし、職員の離職を防ぐには管理者やリーダーへの研修も重要です。

採用した人材が優秀な方であっても、管理者やリーダーに教育・指導する力が無かった場合、新人職員がモチベーションを維持できなかったり、職場での成長をあきらめてしまい、転職を検討するようになってしまいます。また、知識がないままに上司が部下にハラスメントを行ってしまい、その結果、退職につながる恐れもあります。

退職の理由で1番多いのは「職場の人間関係の問題」ですが、その人間関係には管理者やリーダーといった上司も含まれています。人材育成や研修を進める前に、まずは管理者やリーダーにマネジメントや人材育成に関する研修を受けてもらうことを検討する必要があります。

多くの管理者やリーダーは、現場からキャリアアップした方が多く、マネジメント教育を受けた方は少ないでしょう。研修を通して職員への接し方、指導方法などが改善し、離職防止に繋げることが期待できます。

介護現場の業務効率化の改善も定着率向上に重要なポイント

介護施設では、利用者への支援以外でも記録作業や備品管理などさまざまな業務があります。そのため定着率の向上には、業務の効率化が重要となります。

業務効率化が叫ばれる背景には、介護現場での人手不足が挙げられます。今後、人手不足が解消される見込みは少なく、生産性向上は介護業界全体の課題となっています。

介護業界の生産性向上は厚生労働省が推進するものであり、実際、介護報酬改定において加算の算定要件に生産性向上が関連するものも増えつつあります。

具体的な介護現場の業務効率化の方法については、厚生労働省のガイドラインを参考に取り組んでいきましょう。

参考:介護分野における「生産性向上」とは?業務改善に向けた取組

過度な業務負担は職員の退職につながる恐れ

基本的に人手不足、という介護事業所が多いでしょう。介護職員の仕事として、利用者(入居者)への直接的な支援だけでなく、記録や報告など事務作業もこなす必要があります。そうした事務作業は残業して処理したりすることもあり、状況が改善されない場合には、負担が重いと感じる職員の退職につながっていく恐れがあります。

業務効率化を進めるには、

・重複作業、無駄な事務作業を洗い出す
・ICTツールの導入をする

などの方法があります。現場の負担が少ない、取り組みやすい方法から実施を検討していくとよいでしょう。例えば介護現場をICT化することで、大幅な業務効率の改善につながるケースもあります。

介護現場のICT化による業務効率改善

介護記録を入力する介護スタッフ

介護業務は、申し送りや情報の共有は欠かせませんが、情報共有の体制をより効率化することで、大幅に業務負担を減らせる可能性があります。例えば、介護記録ソフトやチャットツールなどを導入し、スマホやパソコン、タブレットなどを活用することで、リアルタイムで情報共有をすることができます。これまで転記が必要だった業務も、ソフトやツールへの一度の入力で完了できるようになることも多いでしょう。

シフトや業務の状況によっては、申し送りに参加できない職員がいる場合もあると思います。そうした場合でも、職員全体に同じ情報を共有することができます。利用者の介護をする上で知っておくべき身体状態などもリアルタイムで共有でき、ミスも起こりにくくなります。

勤怠管理や職員同士のコミュニケーションなどでICTツールを活用し、業務効率化や負担軽減ができれば、サービスの質の向上、働きやすさに繋がります。旧態依然の業務負担が大きな介護現場と比較した場合、こうした業務改善に取り組みICT化が進む介護事業所は、介護職員から職場としても選ばれやすくなるでしょう。

まとめ

介護施設にとって人材の定着は今後ますます重要な課題となります。介護人材の定着率を上げるには新人への研修だけでなく、管理者を含め事業所全体で人材育成に関する教育を行っていくことが大切です。

これからは利用者だけでなく、職員からも選ばれる事業所作りが求められます。業務効率化を含めた職場環境の改善が、働きやすい職場作りにつながり、職員の定着率向上、質の高い介護サービスの提供へとつながっていきます。

職員が何に満足を感じ、何に不満を感じているのか、そうした視点を持ちながら働きやすい職場作りに取り組むことが重要です。利用者からも職員からも選ばれる職場となるように、管理者やリーダーが中心となり、事業所全体で職場環境の改善や人材教育に取り組んでいけるように準備をしていきましょう。

この記事の執筆者ペコ

保有資格:介護福祉士 介護支援専門員

これまで通所リハビリに2年、小規模多機能型居宅介護に17年勤務。その中でも小規模多機能では介護職4年、介護福祉士兼介護支援専門員を3年、管理者兼介護支援専門員を9年務め、現在は代表も兼任しています。

介護の話題を中心にライタ―活動を行っており、他には介護用の研修資料の作成なども行っています。

 
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