「ターミナルケア加算とはどういう加算?」
「どうすればターミナルケア加算の算定要件を満たせる?」
ターミナルケア加算とは、終末期を迎えるご利用者に対し、ターミナルケア計画の作成や実行することで評価される加算です。
この記事では、ターミナルケア加算の概要や目的、2024年(令和6年)介護報酬改定における変更点について解説します。また、ターミナルケア加算の算定要件や留意点もあわせて紹介します。
ターミナルケア加算についてよくわからない方や、介護事務としてターミナルケア加算の請求方法がわからない方はぜひ参考にしてください。
目次
- 1 ターミナルケア加算とは
- 2 ターミナルケア加算の背景と目的
- 3 ターミナルケア加算と看取り介護加算の違いとは?
- 4 2024年度介護報酬改定でのターミナルケア加算の変更点
- 5 ターミナルケア加算の対象となる介護サービス種別
- 6 ターミナルケア加算の算定要件
- 7 ターミナルケア加算の単位数
- 8 ターミナルケア加算の留意点
- 8.1 Q1.死亡日及び死亡日前 14 日前に介護保険、医療保険でそれぞれ 1 回、合計 2 回ターミナルケアを実施した場合算定可能?
- 8.2 Q2.介護療養型老健において、ターミナルケア実施中に医療機関へ入院しそのまま亡くなった場合、算定可能?
- 8.3 Q3.訪問介護において、死亡前 14 日以内に 2 回以上ターミナルケアをしていれば、医療機関に入院し 24 時間以内に死亡した場合にもターミナルケア加算を算定できる?
- 8.4 Q4.ターミナルケアを提供するとき、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」以外にどのようなものがある?
- 8.5 Q5.ターミナルケアの実施にあたり、他の関係者との連携とは具体的に何をすればよい?
- 9 まとめ
ターミナルケア加算とは
ターミナルケア加算とは、終末期を迎えているご利用者に対し、ターミナルケア計画や体制整備、ターミナルケアを行うことで評価される加算です。
ターミナルケアのあり方について、以下の点が重視されています。
・ご利用者による意思決定を基本とする
・ご利用者やそのご家族と医療・ケアなどの多職種チームで十分な話し合いを行う
・医療・ケアの開始・変更・終了などは医学的妥当性と適切性をもって、ケアチームによって慎重に判断される
・可能な限り疼痛や不快な症状を緩和し、精神的・社会的援助も含めた総合的なケアを行う
参考:厚生労働省 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン
人生の最終段階において、ご本人の意思を尊重しながら、適宜ご家族やケアチームといった関係者で治療・ケア方針を決定します。
出典:厚生労働省 「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」リーフレット
ターミナルケア加算の算定において、加算を取得する施設・事業所はご本人やそのご家族、各関係者と連携を行いながらケアを行うことが必要です。
ターミナルケア加算の背景と目的
ターミナルケア加算が創設された背景には、高齢者人口の増加に伴い「どこで亡くなるか?」が注目されていることがあります。
高齢者増加により、死亡数もこれまでより一層増加することが見込まれています。特に、ピーク時には約170万人が年間で死亡すると推測されているのです。
出典:厚生労働省 人生の最終段階における医療・介護 参考資料 P.4
また、亡くなる場所については、病院や診療所でなくご自宅や介護施設等で増加傾向にあります。
出典:厚生労働省 人生の最終段階における医療・介護 参考資料 P.6
今後も、自宅や介護施設で亡くなる高齢者数は増加する可能性が高く、介護施設では「どのように亡くなることがご本人らしいのか?」というターミナルケアがさらに注目されているのです。
ターミナルケア加算は、多様化する高齢者のニーズに合わせて介護施設でのターミナルケアを評価するものです。これは、ただ単にターミナルケアの需要が増えているという理由だけではありません。
加算を通して、今後は介護施設・事業所でも積極的にターミナルケアを実施していかなければならない、ということが示されているのです。
ターミナルケア加算と看取り介護加算の違いとは?
ターミナルケア加算と似た加算に、看取り介護加算があります。両者の違いは、下表のとおりです。
ターミナルケア加算 | 看取り介護加算 | |
対象サービス | ・介護老人保健施設(老健) ・訪問看護 ・定期巡回・随時対応型訪問介護看護 ・看護小規模多機能型居宅介護 |
・介護老人福祉施設(特養) ・認知症対応型共同生活介護(グループホーム) ・特定施設入所者生活介護(介護付き有料老人ホームなど) |
主な内容 | 医療的ケア中心 | 介護・生活に関するケア中心 |
ターミナルケア加算と看取り介護加算の大きな違いは、ケア内容です。
ターミナルケアにおいては、点滴や延命治療といった医療的ケアの側面が強い点が特徴です。一方、看取り介護加算においては、日常生活における介護ケアを行うことが求められています。
看取り介護加算について、詳しく知りたい方は以下の関連記事も合わせてご覧ください。
2024年度介護報酬改定でのターミナルケア加算の変更点
2024年(令和6年)の介護報酬改定において、ターミナルケア加算は以下の変更点がありました。
《2024年(令和6年)におけるターミナルケア加算の変更点》
旧 | 新 | ||
老健 |
死亡日45日前~31日前 | 80単位/日 | 72単位/日 |
死亡日30日前~4日前 | 160単位/日 | 変更なし | |
死亡日前々日、前日 | 820単位/日 | 910単位/ | |
死亡日 | 1,650単位/日 | 1,900単位/日 | |
訪問看護 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 看護小規模多機能型居宅介護 |
2,000単位/死亡月 | 2,500単位/死亡月 |
参考:厚生労働省 令和6年度介護報酬改定における改定事項について P.40、P.44
老健における今回の改定理由は、以下のとおりです。
・看取りへの対応を充実する観点
・在宅復帰・在宅療養支援を行う施設における看取りへの対応
特に、死亡日直前や当日の単位数が上がっています。
老健の性質上、長期滞在型ではないため、なかなか45日前からの算定ができないことも考慮されていますが、その分死亡日近くの対応が重要視されているのです。
一方、訪問看護などのサービスでの改定理由は、「介護保険の訪問看護等におけるターミナルケアの内容が医療保険におけるターミナルケアと同様である」ことが踏まえられています。
ターミナルケア加算の対象となる介護サービス種別
ターミナルケア加算を取得できる介護サービス種別は、以下の4つです。
1.介護老人保健施設(老健)
2.以下の事業所
a.訪問看護
b.定期巡回・随時対応型訪問介護看護
c .看護小規模多機能型居宅介護
ただし、訪問看護の中でも、要支援のご利用者を支援する介護予防訪問看護は算定対象外なので注意しましょう。
ターミナルケア加算の算定要件
ターミナルケア加算の算定要件は、老健とそれ以外で要件が異なります。それぞれについて解説します。
介護老人保健施設(老健)のターミナルケア加算の算定要件
老健でのターミナルケア加算を取得するときの要件は、以下の3つです。
1.医師が一般的に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した者であること
2.入所者又はその家族等の同意を得て、入所者のターミナルケアに係る計画が作成されていること
3.医師、看護師、介護職員、支援相談員、管理栄養士等が共同して、入所者の状態又は家族の求め等応じ随時、本人又はその家族への説明を行い、同意を得てターミナルケアが行われていること
ターミナルケアに係る計画の作成においては、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取り組みが必要です。
また、計画の作成にあたり、本人の意思を尊重した医療・ケアの方針決定に対する支援が求められています。
老健以外のターミナルケア加算の算定要件
一方、老健以外の3事業所におけるターミナルケア加算の算定要件は、以下のとおりです。
・訪問看護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・看護小規模多機能型居宅介護
【厚生労働省が定める基準】
1.ターミナルケアを受ける利用者について24時間連絡できる体制を確保しており、且つ必要に応じて訪問看護を行うことが出来る体制を整備していること
2.主治医との連携の下に、訪問看護におけるターミナルケアに係る計画及び支援体制について説明を行い、同意を得てターミナルケアを行っていること
3.ターミナルケアの提供について利用者の身体状況の変化など必要な事項が適切に記録されていること
【算定要件】
1.死亡日および死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを行った場合算定可能
2.在宅で死亡した月に算定する。ターミナルケアを行った月と死亡月が異なる場合は死亡月に算定する
3.1人の利用者に対し、1か所の事業所に限り算定できる。
4.死亡日及び死亡日前14日以内に医療保険又は介護保険の給付の対象となる訪問看護をそれぞれ1日以上実施した場合は、最後に実施した保険制度においてターミナルケア加算等を算定すること
5.ターミナルケアの実施において、以下の事項を記録する
a.終末期の身体症状の変化及びこれに対する看護
b.ご利用者及びご家族の精神的な状態変化及びケアの記録
c.ターミナルケアの各プロセスにおける意向の把握、それに基づくアセスメント及び対応経過の記録(※)
6.ターミナルケアの実施にあたっては、他の医療及び介護関係者と十分な連携を図るよう努める
特に加算算定において、各種記録は重要視されます。
・医師がターミナルとして診断した日
・ターミナルケア計画書の作成日
・ご本人やご家族への計画書同意日
・計画書に基づいたケアの実施記録
加算を取得する際は、上記記録が揃っているか必ず確認しましょう。
ターミナルケア加算の単位数
ターミナルケア加算は、老健とそれ以外の事業所で単位数が変わります。詳しい単位数は、下表のとおりです。
療養型老健以外 | 療養型老健 | |
死亡日45日前~31日前 | 72単位 | 80単位 |
死亡日30日前~4日前 | 160単位 | 160単位 |
死亡日前々日、前日 | 910単位 | 850単位 |
死亡日 | 1,900単位 | 1,700単位 |
※ 1日につき
対象サービス | ・訪問看護 ・定期巡回・随時対応型訪問介護看護 ・看護小規模多機能型居宅介護 |
死亡月につき | 2,500単位 |
参考:令和6年6月 介護報酬の算定構造 P.18
老健の介護請求事務において、死亡日が判明してからはじめてその月のターミナルケア加算の介護保険請求ができます。
たとえば、基本型老健にて2024年4月30日に亡くなられたご利用者における、介護保険請求明細書の記載例は、下表のとおりです。
サービス内容 | サービスコード | 単位数 | 回数 | サービス 単位数 |
摘要 |
保健施設ターミナルケア加算11 | 526115 | 72 | 15 | 1,080 | 20240430 |
保健施設ターミナルケア加算21 | 526600 | 160 | 27 | 4,320 | 20240430 |
保健施設ターミナルケア加算31 | 526602 | 910 | 2 | 1,820 | 20240430 |
保健施設ターミナルケア加算41 | 526603 | 1,900 | 1 | 1,900 | 20240430 |
摘要欄には死亡した日付を忘れずに入力します。また、ご使用の介護請求ソフトによって入力方法の違いがあるので、詳しくは請求時に確認しましょう。
ターミナルケア加算の留意点
ターミナルケア加算の算定において、よくある質問について紹介します。加算算定するときに、ぜひ参考にしてください。
Q1.死亡日及び死亡日前 14 日前に介護保険、医療保険でそれぞれ 1 回、合計 2 回ターミナルケアを実施した場合算定可能?
算定可能です。
その場合、最期に実施した保険制度において算定します。
参考:厚生労働省 平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1) P.16
Q2.介護療養型老健において、ターミナルケア実施中に医療機関へ入院しそのまま亡くなった場合、算定可能?
算定可能です。
ただし、介護療養型老人保健施設内で入所者の死亡日前30日において入所していた場合となります。
ターミナルケアを実施していた期間にやむを得ず医療機関で亡くなった場合、ターミナルケア加算を算定できます。
参考:厚生労働省 平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1) P.93
Q3.訪問介護において、死亡前 14 日以内に 2 回以上ターミナルケアをしていれば、医療機関に入院し 24 時間以内に死亡した場合にもターミナルケア加算を算定できる?
ターミナルケアを実施中に医療機関へ搬送し、24 時間以内に死亡が確認された場合に算定することができるものとします。
参考:厚生労働省 平成21年4月改定関係Q&A(Vol.2) P.9
Q4.ターミナルケアを提供するとき、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」以外にどのようなものがある?
他には、日本老年医学会が発行している「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン 人工的水分・栄養補給の導入を中心として」があります。
ただし、ここで重要なことは、以下の内容です。
・利用者ご本人やその家族などと話しあう
・ご本人の意思決定を基本にする
・他の関係者との連携のうえ、ターミナルケアを実施する
あくまで、ご本人の希望や状況を念頭にご家族や他職種との連携が求められています。
参考:厚生労働省 平成 30 年度介護報酬改定に関する Q&A(Vol.1)P.13
Q5.ターミナルケアの実施にあたり、他の関係者との連携とは具体的に何をすればよい?
たとえば、サービス担当者会議などで他医療・介護関係者と十分な連携を図ることが必要です。
また、訪問看護職員と介護職員との情報共有のあり方について、「訪問看護の情報共有・情報提供の手引き〜質の高い看取りに向けて〜」で他職種と連携する際のポイントが示されています。
参考:厚生労働省 平成 30 年度介護報酬改定に関する Q&A(Vol.1)P.14
まとめ
高齢者の増加を背景に、自宅や介護施設で亡くなる高齢者が多くなっています。今後、今まで以上に介護施設の看取り体制が重要視され、それに伴う算定要件の確認や体制整備が必要です。
ターミナルケア加算を取得するときには、計画書作成やケアの実行、その対応に関する記録を適切に管理することが求められます。
この記事を読んで、ターミナルケア加算取得の一助になれば幸いです。
また、当サイトでは介護報酬改定に関する記事を多数掲載しています。
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この記事の執筆者 | しょーそん 保有資格:介護福祉士 認知症実践者研修 修了 認知症管理者研修 修了 認知症実践リーダー研修 修了 グループホームに11年勤務し、リーダーや管理者を経験。 現場業務をしながら職員教育・請求業務、現場の記録システム管理などを行う。 現在は介護事務の仕事をしながら介護・福祉系ライターとしても活動中。 |
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