介護現場では、ご利用者一人ひとりの生活を尊重した「ユニットケア」の重要性が高まっています。ご利用者一人ひとりの尊厳を守り、質の高い生活を支えるための、個別ケアを実践する中心的な存在がユニットリーダーです。
そして、そのユニットリーダーに求められる専門知識やマネジメント能力を体系的に学ぶ場として位置づけられているのが「ユニットリーダー研修」です。
本記事では、ユニットリーダー研修の内容、申込方法、そして研修で学んだスキルを現場でどう活かせるのか、今後のキャリアにどういったプラスの影響があるのか、など分かりやすく解説します。
これからユニットリーダーを目指す方や、研修の受講を検討している方向けに情報を分かりやすくまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそもユニットリーダーとは
介護現場において、ご利用者が家庭に近い環境で自分らしく暮らせるよう支援する「ユニットケア」の中心的な役割を担うのがユニットリーダーです。
ユニットリーダーは単に日々の業務をこなすだけでなく、ご利用者一人ひとりに寄り添った個別ケアの実現や、多職種と連携しながらチームをまとめ上げるマネジメントにおいても、非常に重要な存在となります。
ユニット型特養などのユニットケア施設では、原則としてユニットリーダー研修を修了した職員の配置が求められているため、施設運営においても必要不可欠な存在です。(詳細は各都道府県の指導要綱をご確認ください)。
ご利用者の生活に密着したケアを提供するだけでなく、チームをまとめるリーダーとして職員の支援や現場運営にも大きな役割を果たします。
そのため、介護の知識や技術に加え、マネジメント力やコミュニケーション能力も求められます。
この章では、まずユニットリーダーに求められる役割やスキル、具体的な仕事内容について確認していきましょう。
ユニットリーダーの役割と求められるスキル
ユニットリーダーは、少人数のグループ(ユニット)で構成される介護施設において、ご利用者の生活を支える中心的な存在です。
ユニットケアは、ご利用者が家庭のような温かい雰囲気の中で、個別のニーズに応じた支援を受けられるよう工夫されています。
施設により違いはあると思いますが、ユニットリーダーはユニットの責任者として、以下のような役割を担うこととなります。
・個別ケアの実現
ご利用者一人ひとりの個性やこれまでの生活習慣を深く理解し、その方に合ったケア計画を立て、実行します。例えば、朝食の時間や入浴のタイミング、趣味活動など、ご利用者の「その人らしさ」を尊重したケアを目指します。
・チームのマネジメント
ユニット内の介護職員をまとめ、それぞれの能力を最大限に引き出せるようにサポートします。また、看護師やリハビリ専門職など、他の専門職とスムーズに連携し、チームケアを提供できるよう調整する役割も持ちます。
・生活の質の向上への貢献
ご利用者が施設内で快適に、安心・安全に暮らしていただけるよう、日々の生活環境を整えたり、季節ごとのイベントやレクリエーションを企画します。
これらの役割を果たすために、ユニットリーダーには以下のような多岐にわたるスキルが求められます。
・リーダーシップ
チームメンバーを目標達成に導き、日々の業務へのモチベーションを高める力です。
・マネジメント能力
業務の段取りを組み、職員の育成計画を立てるなど、効率的にユニットを運営する能力です。
・コミュニケーション能力
ご利用者やそのご家族、そしてチーム内の職員と円滑な人間関係を築き、必要な情報を的確に共有する力です。
・問題解決能力
介護現場で起こり得るヒヤリハットや事故、課題などが発生した際に、迅速かつ適切に対応する力です。
・個別ケアの実践力
ご利用者の状態を正確にアセスメントし、その方に最適なケアを提供できる専門知識と技術が求められます。
・介護保険制度等の理解
介護サービスを適切に提供するために、制度や法律に関する知識も大切です。
ユニットリーダーの仕事内容
ユニットリーダーの仕事は、多岐にわたります。主な業務内容としては、以下のようなものがあります。
・シフト作成と人員配置の調整
・ご利用者の介護記録やケアプランの確認・修正
・職員の指導・育成・相談対応
・ご家族との面談や対応、他職種との連携会議の出席
・現場で発生した課題やトラブルへの対応と再発防止策の検討
ユニットリーダーはこれらの業務を通じて、ユニット全体の質を向上させ、働きやすい環境づくりにも貢献します。現場のまとめ役として、介護サービス全体の質の向上に大きく貢献する重要なポジションといえるでしょう。
※リーダーになるとシフト管理業務を担当する介護現場も多いのではないでしょうか。その際、介護業界向けのシフト管理システムであるシンクロシフトなどを活用すると、シフト作成に関する業務負担を大きく軽減できるでしょう。
ユニットリーダー研修とは
ユニットリーダー研修は、介護施設におけるユニットケアを実践的に担う職員が、現場でのマネジメント能力やリーダーシップを体系的に学ぶための研修です。
現場で直面するさまざまな課題に対応できるよう、研修では実践的な内容を学ぶことができます。
経験や感覚だけに頼らず、理論に基づいた知識を身につけることで、介護現場のリーダーとして、今まで以上にご利用者様へのケアの質向上などに活躍できるでしょう。
この章では、ユニットリーダー研修の目的や意義について詳しく解説します。
研修の目的と意義
ユニットリーダー研修の主な目的は、ユニットケアの理念を現場で実践できる人材を育成することです。
単に介護技術を高めるのではなく、現場のリーダーとして必要な「考える力」やスタッフを「導く力」を養うことに重きが置かれています。
また、介護現場ではご利用者一人ひとりに合わせた個別ケアや、スタッフ間の連携強化が求められます。
そのため、ユニットリーダーには高いマネジメント力やコミュニケーション力が不可欠です。研修ではこうした力を身に付けることも重視されています。
研修を通じて、以下のようなスキルや知識などを得ることができます。
・リーダーとしての自覚と責任感
・ご利用者中心の個別ケアを実現するための理論と実践の習得
・職員の意見を引き出し、チームとして機能させるための調整力の向上
・問題解決に向けた分析力や判断力を身につける
・ケアの質を継続的に高めるための計画力・実行力の習得
ユニットリーダー研修には、個々のユニットリーダーのスキルアップだけでなく、介護現場全体のサービス品質を高め、最終的にはご利用者のより豊かな生活を支えるという、非常に大きな意義があるといえるでしょう。
ユニットリーダー研修の内容と特徴
ユニットリーダー研修は、介護現場のリーダーとして必要な知識や実践力を身につけるためのカリキュラムが組まれています。
講義や演習、実地研修、グループワークなど多彩な内容が用意されており、現場で役立つスキルを学ぶことができます。
ここでは、研修の主なカリキュラムや身につくスキル、修了要件について詳しく解説します。
研修の主なカリキュラム
2025年度のユニットリーダー研修カリキュラムは、以下の2つのパターンで構成されていることが多いです。
(※研修方法は実施団体によって異なる可能性がありますので、実施団体のWebサイトなどで募集要項をご確認ください。)
■研修パターン
・研修パターン①:Eラーニングなし
・研修パターン②:Eラーニングあり
■主なカリキュラム
・オリエンテーション
・ユニットリーダーの役割
・高齢者とその生活の理解
・ユニットケアの理念と特徴
・ユニットケアにおける個別ケアと自立支援
・ケアのマネジメント
・ユニットのマネジメント
・統合と実践
実地研修は3日間にわたって実施されます。
プレゼンテーションは実践課題の取り組み(立案した運営計画書)について発表(プレゼンテーション)を行います。
講義・演習
集合研修(オンライン研修)で行われる講義や演習では、以下のような具体的なテーマを深く掘り下げて学びます。
(2025年度ユニットリーダー研修 募集要項より)
・ユニットリーダーの役割
・ユニットケアにおける個別ケアと自立支援
・ケアのマネジメント
・ユニットのマネジメント
・統合と実践
これらの学習を通じて、ユニットリーダーとして必要な幅広い知識を体系的に習得し、実践に繋げられるようになります。
実地研修・グループワーク
ユニットリーダー研修の大きな特徴の一つが、実践力を養うための実地研修とグループワークです。
■実地研修
・実際にユニットケアを導入している他の施設を訪問し、現場のリーダーや職員の働き方、ご利用者の生活状況などを肌で感じながら学びを深めます。
・自身の施設では見えにくい課題や、他施設の優れた取り組みを知ることで、視野を広げ、自施設の改善に活かせるヒントを見つけられます。
・指導者からのフィードバックを通じて、理論だけでは得られない実践的な知識や視点を獲得します。
■グループワーク
・受講者同士で特定のテーマについて活発に議論し、多様な意見を交換します。
・共同で課題解決に取り組むことで、実践的なリーダーシップや協調性を養い、チームで働くことの重要性を実感します。
・他の施設の受講者と交流することで、自身の施設とは異なる視点や問題解決のアプローチを知ることができ、横の繋がりを築く貴重な機会にもなります。
これらの実践的な学びは、座学だけでは得られない「生きた知識」となり、現場で直面する様々な状況に対応するための力を養うことにつながるでしょう。
身につくスキルと知識
ユニットリーダー研修を修了することで、以下のようなスキル・知識を身につけることができるでしょう。
リーダーシップ・マネジメント
・チームをまとめ、目標達成に導く力
・職員の育成・指導力
・業務の効率化と品質管理
リーダーシップやマネジメント力は、ユニットリーダーとして現場を支えるために欠かせないスキルです。
コミュニケーション・チームビルディング
・ご利用者、ご家族、職員との円滑な関係構築
・チーム内の連携強化と問題解決
・意見を引き出し、合意形成を図る力
コミュニケーションやチームビルディングの力は、現場の雰囲気やサービスの質に直結する重要なものです。
プレゼンテーションと修了要件
研修の最終段階では、実践課題についてプレゼンテーションを行います。知識の定着だけでなく、他者に伝える力や論理的にまとめる力を養う貴重な機会にもなります。
修了要件には以下のような基準が設けられています。
・講義・演習への全日程参加
・指定された課題の提出
・最終プレゼンテーションの実施
これらの要件をすべて満たすことで、ユニットリーダー研修の修了証書が発行されます。
ユニットリーダー研修の申込方法と受講の流れ
ユニットリーダー研修を受講するためには、事前に受講資格や申込方法、必要書類、日程や費用などを確認しておくことが重要です。
各都道府県や主催団体によって詳細が異なる場合もあるため、最新の情報をしっかりチェックしましょう。
研修対象者
①ユニットケア施設に勤務している職員または勤務する予定の職員であって、各ユニットにおいて指導的役割を担うもの。
②都道府県等の長が受講するに相応しいと認められるもの。
申込方法・必要書類
都道府県や指定都市から委託を受けた団体(例:一般社団法人日本ユニットケア推進センター、一般社団法人 全国個室ユニット型施設推進協議会など)のWebサイトからオンラインで申し込み。
※受講条件や開催スケジュール、費用など詳細は実施団体にご確認ください。
費用
ユニットリーダー研修の費用は実施団体などによって異なります。以下は例としてあげるものです。
(自費受講の場合。講義・演習+実地研修)
・受講料 100,000円
・研修テキスト費 3,000円(税込)
※「講義・演習のみ」「公費受講」や年度などで費用は異なる場合がありますので、主催団体の情報などでご確認ください。
ユニットリーダー研修を受けるメリット
ユニットリーダー研修を受講することで、現場でのリーダーシップやマネジメント力を向上させることができるでしょう。
チームをまとめる力や、ご利用者との関わり方を見直す視点が身につくことで、リーダーとしての自信にもつながります。
研修を通じて得られる主なメリットをいくつかピックアップしてご紹介します。
専門性・マネジメント力の向上
ユニットリーダー研修を通じて、介護現場で必要な専門知識やマネジメントの技術を体系的に学ぶことができます。
リーダーとしての役割を果たすためには、スタッフの指導や業務の効率化、現場の状況把握など、幅広い能力が求められます。
・介護サービスの質を高めるための知識が身につく
・スタッフの育成や指導方法を学べる
・現場のマネジメント力が向上し、業務の効率化に役立つ
こうしたスキルは、日々の業務を円滑に進めるだけでなく、現場全体のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。
キャリアアップの可能性が広がる
研修を修了することで、ユニットケアの専門的な知識や技術、マネジメントスキルを身に付けることができます。
これらは昇進や転職時の評価につながる可能性があり、キャリアアップを目指す方にとって、アドバンテージとなるでしょう。
・昇進や役職登用時の評価ポイントになる
・他施設への転職時にも有利に働く
・研修修了証が信頼の証明となる
現場での活用・チーム力向上
研修で学んだ知識や技術は、現場で活かすことができます。
例えば、グループワークやディスカッションで学んだ「話し合いの進め方」や「意見の引き出し方」は、日常の会議やカンファレンスでも活用できるでしょう。
・チームワークの強化やスタッフ間の信頼関係の構築
・ご利用者やご家族に対するサービスの質向上
・問題発生時の迅速な対応力の向上
職場での信頼や人間関係が向上する
ユニットリーダー研修を受けることでコミュニケーションスキルが磨かれ、職場でのスタッフ間、ご利用者との人間関係も良好に築きやすくなることが期待できます。
スタッフやご利用者、そのご家族からの信頼を得やすくなり、働きやすい環境づくりにもつながります。
・他スタッフからの相談や頼られる機会が増える
・ご家族とのコミュニケーションが円滑になる
・職場全体の雰囲気が良くなり、定着率の向上にも寄与する
このように、ユニットリーダー研修は個人の成長だけでなく、職場全体の活性化にも大きく貢献するといえます。
ユニットリーダー研修後のキャリア展望について
ユニットリーダー研修を修了したあとは、学んだ内容をどのように現場で活かし、今後のキャリアに結びつけていくかが重要になります。
リーダーとして、受け身ではなく、積極的にチームや施設運営に関わる姿勢が大切です。
研修で得たスキルが実際の業務や職場運営にどう活用されるか、また将来的なキャリア展望について、一例をご紹介します。
施設内でのリーダーシップ発揮
研修を終えた職員は、ユニット内のリーダーとして、より主体的に現場を支える存在となることが期待されます。
業務の調整や問題解決の場面で意見を出し、方向性を示すことで、チーム全体を良い方向へ導く役割を担うようになります。
たとえば、以下のような場面が想定されるでしょう。
・新人職員や経験の浅い職員などの指導や育成に関わる
・ユニットの代表として会議や委員会での発言機会が増える
・問題発生時に冷静に対応し、他の職員をフォローする
リーダーとして、現場全体の雰囲気や働きやすさに対し、以前よりも影響を与えることが多くなるでしょう。
より質の高い個別ケアの提供
研修で個別ケアの理念と実践方法を深く学んだあとは、ご利用者一人ひとりに寄り添った、より質の高いケアを提供できるようになるでしょう。
・ご利用者ごとのケアプランの見直しや改善
・ご家族と連携したケアの実践
・個別ケアの質を高めるためのスタッフ教育
などを通じ、ご利用者一人ひとりに合わせた細やかなケアの実践や、尊厳を尊重したケアの推進、ご利用者のQOL(生活の質)向上への貢献などを推し進めていくことが期待されます。
介護現場での信頼と評価の向上
ユニットリーダー研修を修了したことは、現場内外での信頼につながります。管理職や他職種、ご家族からの見られ方にも変化が生まれ、評価されやすくなるでしょう。
研修後に評価される主なポイントとしては、以下などがあげられます。
・発言に説得力が増し、意見が採用されやすくなる
・新人や後輩職員から相談される機会が増える
・ご家族との面談などで安心感を与えられる
・管理職から次の役職候補として認識される
このように、ユニットリーダー研修後は多様な場面で活躍でき、今後のキャリア形成に大きなプラスとなるでしょう。
まとめ
介護現場で中心的な役割を担うユニットリーダーの重要性と、その専門性を高めるための「ユニットリーダー研修」について解説しました。
ユニットリーダー研修は、単に知識を学ぶだけでなく、チームマネジメントやコミュニケーション、個別ケアの実践といった、現場で本当に役立つスキルを体系的に身につける貴重な機会でもあります。
研修を通じて得られる知識やスキルは、現場でのリーダーシップ発揮やチーム力の向上、ご利用者やご家族からの信頼につながるでしょう。
日程などは地域や主催団体によって異なるため、早めに情報を確認することが大切です。研修受講のために勤務調整なども必要になるでしょうから、職場とも相談しながら準備を進めることをおすすめします。
この記事の執筆者![]() | シフトライフ編集部 主に介護業界で働く方向けに、少しでも日々の業務に役立つ情報を提供したい、と情報発信をしています。 |
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