ユニットリーダーとは、ユニット型施設・事業所においてユニットを管理・運営するリーダーです。
これからユニットリーダーを目指そうとするとき、「ユニットリーダーの仕事内容は?」「必要な資格や研修はある?」と疑問に思う方も多くいらっしゃいます。
この記事では、ユニットリーダーの役割や仕事内容について解説します。
ユニットリーダーになるために必要な資格や体験談にもとづいた心得も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
ユニットリーダーとは?
ユニットリーダーとは、ユニットケアを行う施設・事業所において配置される役職です。
ユニットリーダーについて、以下2点をまずはじめに解説します。
1.ユニットケアにおけるリーダーの役割
2.介護リーダーとの違い
ユニットリーダーの基礎知識を学びましょう。
ユニットケアにおけるリーダーの役割
ユニットリーダーの役割を解説するうえで、まずユニットケアについて知っておきましょう。
ユニットケアは、以下のように定義されています。
・居宅に近い居住環境の下で、居宅における生活に近い日常の生活の中でケアを行うこと、すなわち、生活単位と介護単位を一致させたケア
・入居者が相互に社会的関係を築き、自律的な日常生活を営むことを支援
・入居者が、その有する能力に応じて、自らの生活様式及び生活習慣に沿って自律的な日常生活を営むこと
引用:厚生労働省 『2015年の高齢者介護~高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて~ 補論 2 ユニットケアについて』
集団的・画一的なケアとなってしまう【従来型】と比べ、ユニットケアではご利用者それぞれの生活リズムを尊重した個別ケアが重要視されています。
認知症ケアが中心であるグループホームで導入されているとともに、特養や老健でもユニットケアが推進されているのが現状です。
実際、特養での個室ユニット化は下図のように増えてきています。
出典:厚生労働省 『介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)』P.27
つまり、ユニット化が推進されると、そのユニットを仕切るユニットリーダーが必要となるのです。
ユニットリーダーはユニットケアの背景を知ったうえで、ユニット管理や運営の役割が求められます。
具体的な仕事内容については、後述する「ユニットリーダーの主な仕事内容」をご覧ください。
介護リーダーとの違い
ユニットリーダーと介護リーダーの大きな違いは、配置基準が明確化されているかどうか、という点です。
どちらも介護ケアやチームのマネジメントに携わる点で仕事内容に大きな違いはありません。
ユニットリーダーは、ユニット型を運営する施設・事業所において「ユニットごと常勤のユニットリーダーを配置」するよう運営基準で義務づけられています。
ユニットかフロア・施設全体かで管理する規模に若干の違いはありますが、どちらの役職も介護業務に関するまとめ役として重要なポジションです。
参考:e-gov 法令検索『指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第四十七条2-三』
ユニットリーダーの主な仕事内容
ユニットリーダーの主な仕事内容は、以下5つです。
1.利用者と家族とのコミュニケーション
2.レクリエーションやイベントの企画運営
3.スタッフの教育・指導
4.シフト管理(作成・調整)
5.現場の課題発見と解決への取り組み
ユニットリーダーだけではなく介護主任・リーダーの仕事内容や役割についても知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
利用者と家族とのコミュニケーション
ご利用者やご家族との面談やコミュニケーションは、ユニットリーダーにおいて重要な仕事内容の1つです。
とくに、多くのご利用者へケアが必要な【従来型】と違い、ユニットケアではご利用者ごとの個性やニーズをより具体的に深く把握するアプローチが求められます。
そのため、ご利用者やご家族との密接なコミュニケーションが大切です。
コミュニケーションから得られた情報やニーズをもとにケア・業務に反映させ、ご利用者がより安心できる環境を整えましょう。
レクリエーションやイベントの企画運営
ユニット内で開催されるレクリエーションやイベントの企画運営も、ユニットリーダーの仕事の1つです。
たとえば、ご利用者の誕生日イベントで外出したり、クリスマスや夏祭りなど季節を感じられるイベントを企画したりします。
ユニットリーダー自身が企画を立案するだけではなく、職員が立案した企画をチェックし改善案を提案する役割も必要です。
スタッフの教育・指導
新人職員や経験の浅い職員に対して、ユニットリーダーがケア・業務内容を指導します。
ユニットリーダーは、対象職員の習熟度やスキルに応じて直接指導したり、中堅職員が指導している状況を確認し指導計画を一緒に作成したりと、ユニット全体の底上げをはかる取り組みが重要です。
スタッフの仕事量や全体のバランスに応じて、適切な指導・教育が求められます。
シフト管理(作成・調整)
介護職員のシフト管理は、ユニットリーダーの大切な仕事です。
ご利用者に適切なケアを提供するために、各職員の希望休や職員同士の組み合わせも考慮してシフト作成します。
とくに、決まった業務・イベントを把握したうえでスケジュールを組まないと、現場が混乱する恐れもあるのです。
シフトは、ご利用者だけではなく働く職員にとっても重要な業務であり、ユニットリーダーとしては大きな負担になるケースもあります。
シフト管理の負担を軽減したいときは、自動シフト作成ソフトの利用を検討してみましょう。
自動シフト作成ソフトのメリットや選び方について知りたい方は、以下の記事をチェックしてください。
現場の課題発見と解決への取り組み
ご利用者の生活環境やユニットで働く職員の業務改善に向けて、ユニットリーダーは現場の課題を発見し解決へと導く取り組みが求められます。
ご利用者の状況が変わると、それにあわせてケア内容や業務スケジュールも変更する対応が必要です。
そのため、ユニットリーダーは現場業務もこなしながら、ケア内容を見直す必要性があるか・どのように対策を講じるかを考えます。
課題の解決方法は、日々の申し送りだけではなくユニット内会議を開き職員に通達する場合もあるため、会議の運営・司会進行も重要な仕事の1つといえるでしょう。
ユニットリーダーになるには
ユニットリーダーになるための明確な基準は定められておりません。
実際のところ、施設や事業所の管理者が以下3つのポイントを見てユニットリーダーを任命するケースが多く見られます。
1.実務経験
2.資格の有無
3.ユニットリーダーを対象にした研修の参加状況
ある程度の経験やスキルは求められるため、ユニットリーダーを目指している方は以下の資料も参考にしてください。
参考:厚生労働省 『職務要件』
実務経験の重要性
ユニットリーダーになるために必要な実務経験は、おおむね3年以上が多くなっています。
施設・事業所の状況やユニット業務に慣れてきて、それなりの知識を習得していることが必要です。
また、ユニットの状況を踏まえた提案や後輩・部下への指導も任されるため、指導方法やコミュニケーションのとり方を鑑みて任命されるでしょう。
資格について(介護福祉士、初任者研修など)
ユニットリーダーとして、以下のような資格を持っているとスキルや知識の習得を証明できるでしょう。
・介護職員初任者研修
・介護福祉士実務者研修
・介護福祉士
・認知症実践者研修 など
介護の知識を習得しているのはもちろん、その知識を現場に活かす行動が求められます。
まだ資格を持っていない方は、1つずつ資格取得を目指していきましょう。
ユニットリーダー研修の受講
ユニットリーダー研修とは、ユニットリーダーに求められる知識や能力を学べる研修です。
主なカリキュラムや身につくスキルは、下表のとおりです。
主なカリキュラム | ・オリエンテーション ・ユニットリーダーの役割 ・高齢者とその生活の理解 ・ユニットケアの理念と特徴 ・ユニットケアにおける個別ケアと自立支援 ・ケアのマネジメント ・ユニットのマネジメント ・統合と実践 |
身につくスキル・能力 | ▼リーダーシップ・マネジメント ・チームをまとめ、目標達成に導く力 ・職員の育成・指導力 ・業務の効率化と品質管理 ▼コミュニケーション・チームビルディング ・ご利用者やご家族、職員との円滑な関係構築 ・チーム内の連携強化と問題解決 ・意見を引き出し、合意形成を図る力 |
ユニットリーダー研修は専門力を向上させるだけではなく、自身のスキルアップ・キャリアアップにつながります。
ユニットリーダー研修の受講方法や内容についてさらに知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
ユニットリーダーに求められるスキルと適性
ユニットリーダーは、主に以下3つのようなスキル・適性が求められます。
1.リーダーシップとコミュニケーション能力
2.問題解決力と柔軟な対応力
3.チームを運営するマネジメント力
ユニットリーダーを目指す方は、これらのスキルを意識して業務に取り組みましょう。
リーダーシップとコミュニケーション能力
ユニットの状況を踏まえて、主体的に現場で行動できるリーダーシップとコミュニケーション能力が必要です。
たとえば、以下のような流れでご利用者のケア方針が決まります。
・ご利用者やご家族とのコミュニケーションをとり、課題やニーズを見つける
・他職種と連携し、どこまで対応できるか調整する
・職員にケア方針を伝える
・伝えた方針を実行し、評価・改善する
ユニットリーダーは、そのユニットを統括して目標に向かって旗振り役として立ち振る舞う姿勢が重要です。
問題解決力と柔軟な対応力
ユニットで発生した問題・課題を解決したり、状況に応じた柔軟な対応力も、ユニットリーダーに必要なスキルの1つです。
ユニットを運営していると、さまざまな問題が起こります。
ご利用者の急変によるケア内容の変更だけではなく、職員間でのトラブルにも対応する必要があるのです。
まずは、こうした問題が起きないように日々の業務を構築していきます。
それでも100%防ぐのは難しいため、問題発生したときには原因を見つけ適切に対応・実行する力が重要です。
チームを運営するマネジメント力
ユニットにかかわるご利用者やそのご家族・スタッフを束ねるマネジメント力が求められます。
現場をマネジメントする時、第一に考えたいのは「リーダー自身がどういう介護・ケアを目指しているか」という目標設定です。
ユニットには、さまざまな病気・悩みを抱えたご利用者や、スキル・経験の違う職員など、多くの人がかかわります。
リーダーとして「私はこういう介護をしたい!」「こういうチームを目指したい!」とイメージすると、ケア方針・業務改善といった方向性が定まりマネジメント力が高まるでしょう。
介護現場におけるマネジメントの重要性やスキルを高める方法について知りたい方は、以下の記事もあわせてチェックしてください。
ユニットリーダーとしてのやりがい・悩み
ユニットリーダーとして働くと、以下のようなやりがい・悩みを感じる場面が多くあります。
・やりがい:現場での達成感と利用者からの感謝
・悩み:スタッフ間の調整やストレスマネジメント
各項目について解説します。
やりがい:現場での達成感と利用者からの感謝
ユニットリーダーとして、そこで生活しているご利用者が安心できるように環境を整える取り組みが大切です。
ご利用者やご家族から「ここで生活できてよかった」「とっても楽しい」と評価され信頼を得られると、やりがいを感じます。
ご利用者だけではなく、スタッフからも「働きやすい」「リーダーと一緒にチームを作っていきたい」と頼られるようになると、現場での達成感につながるでしょう。
悩み:スタッフ間の調整やストレスマネジメント
一方で、ユニットリーダーは以下のような悩みを抱え込む傾向にあります。
・上司と部下の板挟みになる
・ご利用者・ご家族からクレームを受けやすい
・スタッフの欠員やトラブルに対応しなければならない
・自分自身の業務量が多く、仕事が終わらない など
多くの人がかかわるサービスである分、さまざまな人の意見がリーダーに集まるためプレッシャーや負担が多くかかるでしょう。
周りの人たちの対応に追われ、ユニットリーダーである自分のメンタルケアがおろそかになってしまうと、精神的にもかなり辛くなってしまいます。
自分自身がつぶれないためにも、適切なストレスマネジメントが大切です。
ユニットリーダーを目指す人が知っておきたい心得
ユニットリーダーを目指す人が知っておきたいポイントや心得について、以下5点を紹介します。
1.頭を使う時間・体を使う時間のメリハリをつける
2.自分からやりたいこと・していることを具体的な言葉にする
3.施設・事業所の理念や規則を見直す
4.完璧を目指さず、人に頼る
5.自己研鑽の時間をつくる
ユニットリーダー経験のある、筆者の体験談もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
頭を使う時間・体を使う時間のメリハリをつける
ユニットリーダーになると、これまでしてきた直接的な介護ケアだけではなく、会議の準備やユニット内業務の見直し・精査などの役割も担います。
このとき、「現場業務をしながらリーダーの仕事も考える」のはかなり大変です。
そのため、ユニットリーダーとしての業務(=頭脳労働)と介護現場業務(=肉体労働)でメリハリをつけて取り組むようにしましょう。
一度現場と距離を置くと、リーダー業務に集中できてユニットの状況を客観的に精査できます。
自分からやりたいこと・していることを具体的な言葉にする
自分のやりたい介護や今している業務などを、できる限り具体的な言葉にしましょう。
とくに、これまで現場で培った知識や経験を活かしたリーダー業務が求められます。
これまでの業務や学んだ知識を具体的な言葉にしておくと、新人職員への指導に役立つとともに業務を見直す時にも効果的です。
施設・事業所の理念や規則を見直す
今働いている施設・事業所の理念やさまざまな規則を確認しておきましょう。
とくに、ユニットリーダーになると部下からケア・業務に関する相談やシフト・勤務の連絡を多く受けます。
その場合、ケアや業務に関する行動指針は理念・規則にもとづいた方針決定が必要です。
また、シフト作成にもかかわるため、時間外労働や有給の取扱い方法についても確認しておくとよいでしょう。
完璧を目指さず、人に頼る
ユニットリーダーになると「部下の模範とならなければ!」「弱みを見せないようにふるまわなければ!」と思い、を無理してしまう場面が多くあります。
たとえば、ユニットリーダーが無理をする場面は、以下のケースです。
・シフトの穴埋めを率先して行ったがために、無理なシフトで働いている
・現場業務が終わってからリーダー業務に取り組むために、残業が慢性化している
・「自分でやったほうが早い」と思い込み、すべての業務をしてしまう など
この状態が続くとリーダー自身が疲弊してしまい、業務に支障をきたしたりバーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こしたりしてしまいます。
リーダーからみたユニットの悩みや勤務変更などは、リーダーだけが負担せずユニットで助け合い解決できる仕組みを作りましょう。
自己研鑽の時間をつくる
ユニットリーダー、ひいては今後のスキル・キャリアアップとして、自己研鑽は欠かせません。
以下のように、自分を磨く時間を確保する行動が重要です。
・リーダーやマネジメントに関する本を読む
・他ユニットのリーダーと一緒に勉強会を開く
・外部研修に参加し、他施設・事業所のユニットリーダーと交流する
とくに、同じような悩みを抱える他ユニット・他法人のリーダーと交流すると、モチベーションアップにつながります。
積極的に研修や交流会に参加してみましょう。
まとめ
ユニットリーダーは多種多様な仕事・役割があり、業務負担は多いですが、その分チームとして自分のやりたい介護を組み立てられます。
グループホームだけではなく特養・老健でもユニット型施設が増えている現状から、ユニットリーダーの需要もその分高まるでしょう。
記事でも紹介しましたが、責任のあるポジションであるがゆえに無理をしてしまうことも増えるでしょう。
これからユニットリーダーを目指す方は、ユニットにかかわる人々のケアを大切にするとともに自分自身のケアも怠らないことが大切です。
今後のステップアップや仕事への取組み方などについて、ぜひ記事を参考にしてみてください。
この記事の執筆者 | しょーそん 保有資格:介護福祉士 認知症実践者研修 修了 認知症管理者研修 修了 認知症実践リーダー研修 修了 グループホームに11年勤務し、リーダーや管理者を経験。 現場業務をしながら職員教育・請求業務、現場の記録システム管理などを行う。 現在は介護事務の仕事をしながら介護・福祉系ライターとしても活動中。 |
---|
・【シンクロシフト】無料で試せる介護シフト自動作成ソフト
シフト作成の負担を軽減!スタッフに公平なシフトを自動作成!希望休の申請も、シフトの展開もスマホでOK!「職員の健康」と「経営の健康」を強力にサポートする介護業界向けシフト作成ソフト。まずは無料期間でお試しください。
・介護シフト管理 自動作成ソフト・アプリ8選!料金やメリットを紹介
介護業界向けシフト作成ソフト・アプリを紹介。シフト作成にかかる負担を減らしたいのなら、介護施設のシフト作成に特化したソフトやアプリの導入がおすすめです。
・介護施設でのシフト作成(勤務表の作り方)のコツを詳しく解説!
シフト作成に数十時間をかけている介護現場もあります。シフト作成業務を効率的に進めるコツを解説しています。
・介護・福祉現場のICT化 活用事例・導入事例5選
人手不足が深刻となる中、介護現場のICT化による業務効率化は待ったなしです。介護福祉現場における活用事例や導入事例、メリット・デメリットを解説します。