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【教えて!】介護現場での「傾聴」とは?共感と信頼を生むコミュニケーション術

介護現場での「傾聴」とは

「傾聴の意味や効果を知りたい」「傾聴を身につけると、利用者とのコミュニケーションはどう変わるの?」と、傾聴について詳しく知りたいと考えている介護職の方も多いのではないでしょうか。
 
傾聴は、利用者との信頼関係を築きたいときに役立つコミュニケーション技法の1つです。
 
この記事では、主に介護施設で働く方や1〜3年目の介護職の方に向けて、介護現場の傾聴を詳しく紹介します。
 
記事の内容は、以下のとおりです。
 
・介護職に求められる傾聴の意味
・受容や共感との違い
・傾聴が介護現場にもたらす効果
・傾聴を実践するときのポイント
・傾聴力を高めるためにできること
・介護現場の傾聴事例
 
ぜひ最後までご覧ください。

介護職に求められる傾聴とは?

特養で働く介護士と施設長、入居者

はじめに介護現場で傾聴が求められる理由と、受容・共感との違いをみていきましょう。

介護現場で傾聴が求められる理由

傾聴とは、注意深く集中して、相手の話に耳を傾ける態度や姿勢を意味します。

私たちも、誰かに自分の話を真剣に聞いてもらえたら、嬉しくなりますよね。

相手の話に真剣に耳を傾ける傾聴には、「あなたの話をきちんと聞いています」「あなたとのコミュニケーションを大切に考えています」というメッセージが込められています。

こうしたメッセージを利用者に示すことで、利用者は「この人は自分のことを大切にしてくれる」「この施設は居心地がいい」などと、安心感や信頼感を感じられるようになるのです。

安心感や信頼感は、介護職と利用者との信頼関係の構築につながります。日常の介助でも信頼して体を預けてくれるようになるほか、介助の際の協力動作も期待できるようになるでしょう。

傾聴は、利用者に安心して介護サービスを利用してもらうためにも、欠かせないコミュニケーション技法です。

受容・共感・傾聴の違い

受容と共感は、傾聴と似た意味を持つ言葉ですが、厳密には意味が異なります。

受容、共感、傾聴の違いを下表で確認しましょう。

受容 共感 傾聴
ある事象(出来事)について、自分の評価や価値判断をせずに、ありのまま受けとめること 相手の感情を自分のもののように感じ取ること 注意深く集中して、相手の話に耳を傾けること

 

受容とは、ある事象(出来事)について、自分の評価や価値判断をせずに、ありのまま受けとめることです。

受容の例

片麻痺のある利用者が、食事を自力で食べようとしています。しかし、うまく口まで運べずに何度もこぼしてしまい「もう嫌だ!こんなことなら食べたくない!」と大きな声で介助具を放り投げたとしましょう。このとき、利用者の言動を、そのまま受けとめることが受容に該当します。

利用者が感情をあらわにする場面に出くわすと、つい「周りに他の利用者がいるのだから、大きな声を出さないでほしい」「食べ物を粗末にするなんて間違っている」などと思いがちですよね。しかし、介護現場の受容では、こうした評価や価値判断を加えないことが大切です。

受容とは、ある事象について評価や価値判断を加えず、それをありのままに受けとめ、心理的に安定した状態をいう。誰を受容するのか、何を受容するのかによって、自己受容、他者受容、障害受容、疾病の受容、死の受容、老いの受容、役割の受容など、様々な側面で用いられる。

引用:日本看護科学学会. 看護学学術用語検討委員会. n.d. JANSpedia-看護学を構成する重要な用語集-.受容(2025年5月19日閲覧)

一方の共感とは、相手の感情を自分のもののように感じ取ることです。「相手の立場に立って、相手の感情を想像すること」と言い換えてもいいでしょう。

共感の例

機能訓練を続けていた利用者が、「若いときのように体が動かなくてつらい、情けない」と話したとします。このとき、相手の「つらい」「情けない」という感情を感じ取ることが共感にあたります。

介護職が、自ら相手の立場に立ってみて、相手の気持ちや感情を想像する。こうすることで、介護職はより相手の気持ちに寄り添った声かけ・態度を取れるようになります。

共感とは、一般的には他人の体験する感情を自分のもののように感じとることであり、他者理解の概念として知られている。共感は「他者と同じ感情をもつこと」(情動としての共感)と「他者の感情がわかること」(認知としての共感)に大別される。いずれにしても、共感は、他者の思考や感情を理解する能力であり、他者が知覚するように外界を知覚することである。

引用:日本看護科学学会. 看護学学術用語検討委員会. n.d. JANSpedia-看護学を構成する重要な用語集-.共感(2025年5月19日閲覧)

共感の注意点

利用者の感情を100%理解しようとしたり、過度に相手に自分自身を重ね合わせたりする必要はありません。介護職として適切な援助ができるように、相手の感情を感じつつも、適度な距離感を保つようにしましょう。

「受容・共感・傾聴」の違いを確認したら、介護現場のコミュニケーションに取り入れてみましょう。

「聴く」「聞く」「訊く」の違い

「聴く」「聞く」「訊く」の違いも押さえておきましょう。

働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』に「聴く」「聞く」「訊く」の違いがわかりやすく記載されていましたので、引用させていただきます。

「聴く」「聞く」「訊く」の違いを知りたい方は、ぜひご覧ください。

「きく」という言葉を表す漢字は、「聴く」の他に、「聞く」、「訊く」などがあります。

・「聴く」…相手が何を語り表現しようとしているのかを、注意深く、集中して聴くこと
・「聞く」…相手の話や外界から聞こえてくる音を受身的に聞くこと
・「訊く」…相手が語りたくないことを問いただし、尋問するように訊くこと

傾聴には「聴」という漢字が使われており、誠心誠意、集中して相手の語りや表現を聴くことを表しています。

傾聴は、決して受身的で消極的な行為ではなく、相手に積極的にかかわろうとする能動的な行為であることから、積極的傾聴(active listening)とも言われています。

引用:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』|傾聴の基本的態度

傾聴が介護現場にもたらす効果

会話をする高齢者と介護士

傾聴は介護現場にどのような効果をもたらすのでしょうか。

3つの効果を具体的に紹介します。

孤独感の解消や安心感の提供

孤独感とは、「自分はひとりぼっちだ」と感じる気持ちのことです。特に1人暮らしの高齢者は、他者との会話や交流の機会が少なくなるため、孤独感を持ちやすいと考えられています。

傾聴には、こうした孤独感を解消したり安心感を提供したりする効果があります。

なぜなら、相手の話に真摯に耳を傾けることで、「あなたの話を真剣に聞いていますよ」「あなたとのコミュニケーションを大切にしていますよ」と、利用者が1人ぼっちではないことを伝えられるからです。

傾聴は、利用者の立場や気持ちに寄り添う援助を実践するときに役立ちます。

自己肯定感の向上

傾聴には、そのままの自分を肯定的に受けとめようとする感覚(自己肯定感)を高める効果もあります。

要介護状態となり、介護施設を利用する高齢者の中には、自分の心身の状態や周りの環境に悩みを抱えている方が少なくありません。

そのため、介護職は、利用者の「今抱えている悩み」「将来の不安」などを耳にする機会もあるでしょう。

こうした一見ネガティブに思える気持ちを、傾聴を通じて受けとめることで、「弱音を吐いてもいいんだ」「私は大切にされている」「認められている」と利用者は感じられるようになります。

私たちも、自分の悩みや不安なことを、誰かがしっかりと聞いてくれたら、ホッとしますよね。口にすることで、改めて自分の問題に向き合おうとする意欲が湧いてくることもあると思います。

利用者自身が自分のことを肯定的に受けとめるサポートをしたいときは、傾聴を活用してみましょう。

スタッフとの信頼関係の強化

繰り返しになりますが、傾聴には、利用者の孤独感を解消したり自己肯定感を高めたりといった効果があります。

日常のコミュニケーションで、こうした傾聴を取り入れつつ利用者を支援していくと、利用者とスタッフとの信頼関係が強化されていきます。

介護施設の利用者の中には、日々の活動(入浴、食事、趣味活動、機能訓練、外出など)に消極的な方がいるかもしれませんね。

そんなときは、信頼関係のあるスタッフが声をかけて促してあげると、気持ちが前向きに変化するでしょう。

傾聴は、介護目標のスムーズな達成にも役立ちます。

介護現場で実践する傾聴のポイント

グループホームで働く介護職

介護現場で傾聴を実践するとき、どのようなポイントに気をつけたらよいのでしょうか。

実践のポイントを以下の6つに分けて紹介します。

1.話を否定しない
2.話を遮らずに最後まで聞く
3.共感を伝える
4.利用者のペースに合わせる
5.非言語的コミュニケーションを意識する
6.話を要約・整理する

話を否定しない

傾聴では、相手の話を否定せずに耳を傾けることが重要です。相手の話を頭ごなしに否定すると、「自分を否定された」と利用者が感じる恐れがあります。

たとえば、利用者の意見や考え方に「その考え方は違うと思います」「でも私はそう思いません」と否定することは避けましょう。

また、利用者が同じような話を繰り返しても、「また同じ話ですか?」「もう忘れたんですか?」といった態度も要注意です。利用者の自尊心を傷つける可能性があります。

相手の話を聞くとき、自分の心の中に色々な感情が浮かびますよね。自分の意見を伝えたいときもあると思います。

ですが、傾聴では、利用者の「話を聞いてもらいたい」という気持ちを大切にして、否定しないように気をつけましょう。

話を遮らずに最後まで聞く

利用者の話を遮ってしまうと、利用者の話す気を削いでしまうかもしれません。

傾聴の際は、「相手から質問されたら返答しよう。それまではじっくり聞いてみよう」といった“待ちの姿勢”がおすすめです。こちらの質問は、話の続きを邪魔しない程度にとどめるとよいでしょう。

ただし、相手が同じ話を繰り返したり話しづらい様子だったりしたら、話の要点をまとめたり要約したりする必要があります。詳しいやり方は後述します。

共感を伝える

共感とは、相手の感情を自分のもののように感じ取ることです。

利用者の口から「楽しかった」「おもしろかった」「つらかった」「大変だった」といった言葉が聞かれたときは、その感情を自分のもののように想像してみましょう。

たとえば、利用者から「体が思うように動かないのがつらいんだよ」と聞いたら、「自分の体が思うように動かなかったら…」と想像してみることが共感の第一歩です。

こちらの共感を相手に伝えるときは、「体が思うように動かないことは、つらいですよね」と相手のセリフを繰り返して伝えてみましょう。

その際に、声の大きさを抑えたり、トーンを少し低くしたりと非言語的コミュニケーションも活用すると、共感はより利用者に伝わりやすくなります。

利用者のペースに合わせる

傾聴では、利用者の話しやすいペースに介護側が合わせることも大切です。

たとえ、相手の話すペースがゆっくりだと感じても、「それで?」「次は?」と相手を急かす行為はNGです。利用者は不快感を覚えて、お互いの関係に溝が生まれる恐れがあります。

おすすめは、「自分が話す割合=3」:「相手の話を聞く割合=7」です。お互いに慣れてきたら、利用者のペースに合わせて、上記の割合を変えてみましょう。

利用者が自分の話に集中できるように、話しやすい環境をつくってあげてくださいね。

非言語コミュニケーションを意識する

非言語的コミュニケーションとは、言葉以外の手段を用いたコミュニケーションの方法です。

非言語的コミュニケーションの代表的な項目と具体例を下表でご確認ください。

項目 具体例
声・イントネーション 話す声を大きくする・小さくする
話を早くする・ゆっくりにする
声のトーンを高くする・低くする
表情・目線 笑顔
真剣な表情
悲しい表情
怒った表情
うつむく
目線をあげる・さげる
身振り手振り 手を叩く
体を後ろにのけぞる
うつむく
姿勢 前のめりになる
後ろにのけぞる

 

非言語的コミュニケーションを意識すると、利用者の視覚などを通して、言語化しにくい感情を伝えられます。

たとえば、「あなたの話に興味があります」「熱心に聞いていますよ」と伝えたいときは、少し前のめりになってみる。

利用者が過去のつらい話をするときは、視線をさげてうつむくといった方法が非言語的コミュニケーションの活用例です。

共感や尊重の気持ちを利用者に届けたいときも、非言語的コミュニケーションを活用してみましょう。

利用者とのコミュニケーションで大切なことを知りたい方は、下記の記事もご覧ください。

話を要約・整理する

話を要約・整理すると、会話が前に進みやすくなります。

傾聴は、利用者が主体のコミュニケーション技法です。そのため、傾聴をしているとき、自分から話を展開するのが苦手な方との会話が前に進まないケースも出てきます。

そんなときは、「Aさんは、〇〇と思ったから、△△したんですね」と要約したり話の内容を整理したりしてみてください。

介護職が話を要約すると、利用者は「次に何を考えたらいいか」に意識が向くようになり、結果的にコミュニケーションが円滑になります。

傾聴の際に、利用者が話しづらそうだったら、一度話を要約したり整理したりしてから、会話のバトンを渡してみましょう。

介護職が傾聴力を高めるためにできること

レクの合間に会話をする介護施設の利用者と介護士

介護職が傾聴の技術を高めるためにできることを、2つ紹介します。

コミュニケーションを積極的に取る

傾聴の技術は、積極的に利用者とコミュニケーションを取ることで伸びていきます。

なぜなら、利用者とのコミュニケーションの機会を積み重ねることで、傾聴で大切なポイントやコツを体験的に理解できるようになるからです。

普段の生活で何を大切にしているか、どんなことに気をつけて生きてきたかは、利用者によって異なりますよね。

そのため、相手に合わせた傾聴を実践するためには、知識だけでなく傾聴を積み重ねた経験が欠かせないのです。

利用者と積極的にコミュニケーションを取って、ご自身の傾聴力を高めていきましょう。

高齢者傾聴に関する資格を取得する

傾聴のスキルをより高めたい、学びたいと考えた場合、高齢者傾聴に関する資格を取得することも役立つでしょう。

高齢者向けの傾聴を体系的に学ぶことができます。

傾聴に関する資格を取得するメリットと注意点は以下のとおりです。

メリット

 
・教材(テキストやDVDなど)を使って傾聴の基礎から学べる
 
・比較的短いカリキュラム(3か月ほど)で受験資格が手に入る
 
・通信講座のため、自宅で学習に取り組める
 
・就職などで資格をアピールできる

注意点

 
・受講費用が発生する
 
・働いている場合は、勤務の合間に勉強時間を確保する必要がある

高齢者傾聴に関する資格は、民間資格に複数あります。

「高齢者傾聴スペシャリスト(ユーキャン)」「シニアピアカウンセリング(資格のキャリカレ)」などがあり、取得方法や名称、カリキュラムなどは提供元によって異なりますのでご注意ください。

資格取得を通じて傾聴を体系的に学びたい方は、高齢者傾聴に関する資格取得も検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

傾聴は、利用者との信頼関係構築に役立つコミュニケーション技法です。

利用者との距離を縮めたいとき、利用者に安心して介護サービスを受けてもらいたいときは、傾聴を普段のコミュニケーションに取り入れてみてはいかがでしょうか。

介護現場では、利用者の話を「聞く」だけでなく、より積極的に「聴く」姿勢を求められることがあります。

利用者との信頼関係をより構築していくためにも、しっかりと傾聴ができるように日々心がけていきましょう。

この記事の執筆者
千葉拓未

所有資格:社会福祉士・介護福祉士・初任者研修(ホームヘルパー2級)

専門学校卒業後、「社会福祉士」資格を取得。
以後、高齢者デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護施設を渡り歩き、約13年間介護畑に従事する。

生活相談員として5年間の勤務実績あり。
利用者とご家族の両方の課題解決に尽力。

現在は、介護現場で培った経験と知識を生かし、
Webライターとして活躍している。

 
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