介護施設と呼ばれる職場には多様な形態がありますが、いずれの施設でも人員配置基準の遵守が求められます。同様にサ高住も人員配置基準が定められています。
人員配置基準とは、利用者の数に応じて配置すべき最低限の職員の数を定めたものであり、適切な介護サービスの提供や快適な職場作りのために不可欠な要素です。人員が基準に満たないと、最悪の場合、介護事業を運営することができなくなります。
この記事では、近年需要が増しているサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)について、その概要と種類、サ高住の人員配置基準と、それぞれの施設で必要とされる職種について解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは
法律上、サ高住は平成23年の「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」の改正を受けて、「高齢者に適した建物設備」と「安心できる見守りサービス」の二つの条件を満たす住宅として認定された、高齢者単身世帯や夫婦世帯が入居できる賃借住宅のことを指します。
参考:サービス付き高齢者向け住宅について | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
わかりやすく言えば、バリアフリー設計で、常に見守りがあり、生活に関する相談が可能な人がいる集合住宅です。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の種類
サ高住は、入居者が受けることができるサービスによって「一般型」と「介護型」の二種類に分類されます。
一般型サ高住
一般型サービス付き高齢者向け住宅(一般型サ高住)は、サ高住の約90%を占めており、比較的自立した方を入居の対象としています。 提供されるサービスは見守りや生活相談といった基本的な支援に限られ、それ以上の介護が必要な場合は外部の介護サービスを利用します。
ですが多くの一般型サ高住では、デイサービス、訪問介護、食事サービスなどの介護サービスが同じ建物内に併設されていることが大半を占めます。これは、利用者の送迎やヘルパーの移動の手間を省くことができたり、安定したサービス提供と収入を確保できるなどのメリットがあるからです。
介護サービスの提供がないことから、一般型サ高住は厳密には介護施設とは言えません。また、独自の入居条件を設けていることがほとんどです。
介護型サ高住(特定施設)
介護型サービス付き高齢者向け住宅(介護型サ高住)は、一般型に比べてより手厚いサービスと支援を必要とする高齢者を対象にしています。
このタイプのサ高住は、厚生労働省による「特定施設入居者生活介護」の指定を受けており、そのため「特定型」「特定施設」とも呼ばれます。
参考:特定施設入居者生活介護
特定施設入居者生活介護とは、要介護者に対して日常生活の世話や機能訓練など、介護保険の対象となるサービスのことをいいます。
一般型とは異なり、介護型サ高住では専門の介護スタッフが常駐し、食事の提供、服薬支援、入浴介助などの介護保険サービスが行われます。
さらに、介護型サ高住は人員基準や設置基準がより厳格に設定されています。
また、この施設は介護サービスを提供しているため、一般型と違い介護施設とも言えるでしょう。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の人員配置基準
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の人員配置基準です。一般型サ高住、介護型サ高住(特定施設)それぞれ分けて見ていきましょう。
一般型サ高住の人員配置基準
一般型サ高住の人員配置基準に関して、厚生労働省は以下のように定めています。
「安否確認サービスと生活相談サービスが必須の見守りサービスです。ケアの専門家が少なくとも日中建物に常駐し、これらのサービスを提供します。」
ここでいうケアの専門家には、次の職種が含まれます。
・社会福祉法人、医療法人、指定居宅サービス事業所等の職員
・医師
・看護師
・介護福祉士
・社会福祉士
・介護支援専門員
・介護職員初任者研修課程修了者
夜間には緊急通報システムを活用する施設や夜勤スタッフを配置する施設があります。
また、2022年9月の高齢者住宅関連法案の改正により、入居者の同意があれば、以下の3つの条件を満たす場合は日中のスタッフ常駐も不要となりました。
1. 毎日一回以上、適切な方法で状況把握サービスを行うこと。
2. 各居住部分に緊急通報装置を設置すること。
3. 生活相談サービスを適切な方法で提供すること。
介護型サ高住(特定施設)の人員配置基準
介護型サ高住の人員配置は、特定施設入居者生活介護の人員配置基準に則ったものになります。具体的な基準は以下の通りです。
管理者 | 1人 |
生活相談員 | 要介護者等100人に対し、生活相談員1人 |
看護、介護職員 | ①要支援者10人に対し、看護、介護職員1人 ②要介護者3人に対し、看護、介護職員1人 ※ただし看護職員は要介護者等が30人までは1人 |
機能訓練指導員 | 1人以上(兼務可) |
計画作成担当者 | 介護支援専門員1人以上(兼務可) ※ただし、要介護者等100人に対し1人を標準とする |
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)で働く主な職種
サ高住では主に次のような職種が働いています。
管理者
管理者は、施設や部署の運営および管理全般を担当する責任者です。
主な業務には、施設運営の総括、人員管理、予算管理、サービスの質の保証、緊急時の対応、対外関係の調整など多岐に渡ります。
これらの業務を通じて、施設全体の運営がスムーズに進行し、入居者が安心して生活できる環境を整えることが求められます。
サ高住の管理者に必要な資格は法律上では定められていませんが、持っている資格やこれまでの経験が考慮されて選ばれることが多いです。適切な管理者がいることで、施設の運営がより円滑に進み、サービスの質も向上します。
介護職員
介護職員は、直接入居者の介助を行う仕事を担っています。
その業務は、一般型サ高住の見守りと生活相談のサービスに加え、介護型サ高住では介護保険に基づくサービスとして、食事や入浴介助などの身体介護と、清掃や買い物代行などの生活援助を行います。
職場によってはレクリエーション業務を行う必要があり、これにより入居者が社会的な交流をもち、豊かな生活を送るサポートを提供します。
看護職員
看護職員は、入居者の健康を支える重要な役割を担っています。
その業務は、入居者の健康管理、必要に応じた医療処置、緊急時の対応、健康相談などがあります。
看護職員は、入居者の生活を健康面からサポートし、日々の健康状態の観察や医療的なケアを通じて安心して生活できる環境を提供します。
生活相談員
生活相談員はサ高住の窓口としての役割を担っています。
主な業務内容は、個別相談の対応、サービス調整、入退去や見学などの対応、ご家族や他機関との連携、ケアプランの作成などです。
生活相談員は、入居者やその家族の相談に応じ、適切なサービスが提供されるよう調整することで、安心して生活できる環境を提供します。
機能訓練指導員
入居者の身体機能の維持、向上を目的とした訓練の指導を行います。
主な業務内容としては、個別訓練プログラムの作成、訓練の指導と実施、機能評価、介護職員との連携、入居者や家族への説明があります。
入居者の残存機能の維持、向上を目指すことで、より自立した生活を送れるようサポートします。
ケアマネジャー(介護支援専門員)
入居者一人ひとりに最適な介護サービスを提供するための計画作成と調整を担当します。
具体的な業務内容としては、ケアプランの作成、モニタリング、要介護認定の申請手続き、介護報酬の給付管理、入居者や家族への相談対応などがあります。
ケアマネージャーは、入居者のニーズに基づいたケアプランを元に各種サービスを提供し、適切な支援が行われるよう調整します。
まとめ
ここまで、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とその人員配置について解説してきました。まとめると以下の通りです。
サ高住には「一般型」と「介護型」の二種類があります。
【一般型】
自立した高齢者向けの設計で、見守りと生活相談サービスを提供します。ただし、その他の介護サービスは外部のサービスを利用する必要があります。
【介護型】
専門的な介護サービスを提供しますが、設置基準が厳しく、数も少ないです。
【一般型】
見守りと生活相談ができる人員が最低限必要です。
【介護型】
特定施設入居者生活介護の人員配置基準に従います。
サ高住は、平成23年に誕生した比較的新しい施設形態です。現在では8,000棟以上に増加していることや、一般型では人員配置基準が比較的緩く設定されている分、より多くの高齢者が入居できる施設形態になっています。
以上のことから、今後もその数は増えていくことが予想されます。高齢化社会が進行する中で、サ高住は新しい介護の形として期待されています。
この記事が介護に携わる皆様の一助となり、日々の業務に役立つことを願っています。
この記事の執筆者 | ソテツ 保有資格:実務者研修、ユニットリーダー研修修了 ショートステイに約8年勤務、デイサービスで約半年勤務、サ高住で約1年半勤務、と約10年ほど介護業界で仕事をしてきました。 ショートステイでは1年ほどユニットリーダーをさせて貰いました。 短い期間でしたがそのわずかな期間で、施設内での稼働率NO.1のユニットを作り上げることに成功してます。 現在は介護・福祉系ライターとしても活動中。 |
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