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【教えて!】不適切なケアチェック表を活用し、改善・予防に役立てる重要性

不適切なケアチェック表の活用

「スタッフが利用者に不適切なケアを行っていた」
「自分は適切なケアを行っているのだろうか・・・?」
「不適切なケアをなくすためにはどうしたらよいのだろうか?」

 
このように考える、介護職リーダーや指導担当者は一定数いらっしゃることでしょう。そこで活用をおすすめしたいのが、「不適切なケアチェック表」です。
 
不適切なケアチェック表の活用により、自分自身やスタッフのケア状況を客観的に把握できます。
 
この記事では、不適切なケアについてや、チェック表の活用方法などについて紹介します。不適切なケアについても、事例を交えて解説していますので、ぜひ最後までご覧いただき参考にしてみてください。

介護の不適切なケアとは

不適切なケアとは、

「高齢者虐待までには至らないが、利用者への配慮に欠ける、もしくは利用者への尊厳を損なう恐れがある行為」

を指します。

その行為が、意図的であるかどうかは問いません。不適切なケアと高齢者虐待は別物ではなく、連続して考える必要がある課題です。

不適切なケアが行われている状況は、放置すると虐待につながる可能性が高いため、早急な改善が必要です。

不適切なケアが起こる要因は?

放置される高齢者

不適切なケアが起こる要因としては、主に3つあげられます。

1.職場環境や組織風土

人手不足によりスタッフが常に多忙であると、利用者一人ひとりの状況に目を向けることが難しくなり、不適切なケアにつながりやすいとされます。

またすでに不適切なケアが常態化している職場環境では、「あの人がケアをああいう風に行っているのだから、私が同じように行っても問題ないだろう」という認識になりやすいでしょう。

また、スタッフ同士のコミュニケーションがうまくいかない職場であると、不適切なケアを見ても注意できず、見て見ぬふりをするケースも考えられます。

2.介護スタッフの強いストレス

多くの介護スタッフは、業務上さまざまなストレスを抱えている状況です。介護スタッフが抱えるストレスの例としては以下のようなことがあげられます。

・多忙であるがゆえに、思うような介護ができない
・利用者からの暴言・暴力・介護への抵抗などがある
・職場内の人間関係が悪い

このようなストレスが積み重なると、介護スタッフは精神的に余裕がなくなり、利用者に対しても適切なケアを提供できなくなる可能性があります。

3.介護スタッフへの研修不足

不適切なケアに関して学ぶ機会がないと、スタッフは自分が行っているケアが適切かどうかを認識できません。

そのため、以下のような研修が必要であると考えられます。

・介護技術
・接遇
・虐待防止に関する法令
・個別事例検討

不適切なケアは高齢者虐待と密接に関連しているため、虐待に関する研修もあわせて実施することが求められるでしょう。

介護の不適切なケアの事例

ここでは、厚生労働省による「身体拘束及び高齢者虐待の未然防止に向けた介護相談員(※)の活用に関する調査研究事業報告書(23ページ)」を参考に、不適切なケアの事例を紹介します。

(※)介護相談員:介護サービス事業所や施設に出向いて、利用者からの相談を受けつつ、利用者と介護サービス提供事業者の問題を解決するよう橋渡しをする役割を持つ人。一定の研修を受けており、市町村から委嘱されている。
この調査に協力した介護相談員のうち、36.5%(3,877名中1,414名)が「不適切なケアがあった」と回答しています。

「不適切なケアはなかった」と回答した介護相談員は54.4%であり、残り9.2%は無回答でした。

不適切ケアの有無

引用元:身体拘束及び高齢者虐待の未然防止に向けた介護相談員の活用に関する調査研究事業報告書(20ページ)

不適切なケア事例(食事)

・お茶の時間である午前10時に、職員が利用者にお茶を提供するが、利用者がなかなか飲まずにいた。それを見た職員が、「お茶を飲まないと、お昼ご飯を出さないよ」と利用者に言っていた。

・食事のときに、職員が利用者に対して終始無言であった。加えて、複数の利用者に対して自動的に食事を口に入れていた。

不適切なケア事例(排泄)

・トイレに行きたいと訴えた利用者に対して、「△△さんはおむつをしているのだから、そこにしてください」と対応した。

・利用者がトイレで排泄をしたあと、職員を呼んだが聴こえないふりをして、迎えに来なかった。

報告書では、このほかにも複数の不適切なケア事例が紹介されていました。

また、当サイト内記事、介護現場の不適切ケア事例や具体例、改善・防止策にも特別養護老人ホームやデイサービスにおける不適切ケアの具体例を掲載していますので、あわせてご覧ください。

不適切なケアチェック表(チェックリスト)

自治体や社会福祉法人によっては、独自で不適切なケアチェック表(チェックリスト)を作成しているところもあります。

チェックリストに含まれている主な項目を、下記に示しました。

・入所者(利用者)を子ども扱いしていないか

・強い口調や命令口調で接していないか

・「ちょっと待ってください」を繰り返し、長時間待たせていないか

・食事や入浴時に無理強いをしていないか

・入所者(利用者)や家族のうわさ話をしたり、悪口を言ったりしていないか

自分自身や他のスタッフがこのような行為をしているかどうか、確認してみましょう。ここでは、実際に使用されているチェックリストを2つ紹介します。

虐待の芽チェックリスト(入所施設版)|東京都保健福祉財団

自己点検シート(チェックリスト)|神奈川県ホームページ

一からチェックリストを作成するには労力が必要となりますので、こうした公開されているチェックリストを活用するのも一つの方法です。事業所独自のチェックリストを作成する際の参考にしてください。

介護の不適切ケアを改善・予防するには

介護の不適切ケアの改善・予防のためには、不適切なケアが起こる要因を改善する必要があります。

ここでは、介護の不適切ケアを改善・予防するための4つの方法をお伝えします。

1.組織体制・運営を改善する

不適切なケアを発生させないためには、組織そのものや運営体制の改善が必要です。

具体的な方法としては、以下のようなことがあげられます。

・介護事業所の理念を明確にして、スタッフ間で共有できるようにする

・理念共有時には、実際の介護サービスでも活かせるように具体的な内容とする

・介護職だけではなく、生活相談員や看護師など多職種と連携してケアに取り組む

ただ、スタッフ個人だけの努力では、組織や運営体制の改善は難しいでしょう。管理者や施設長など、運営者との綿密なコミュニケーションが必要になってきます。

2.職員への教育・研修を行う

介護スタッフが不適切なケアについて十分に理解していないことも、不適切なケアが続く要因としてあげられます。そのため、スタッフへの教育・研修の充実も改善・予防策の1つです。

介護技術や接遇はもちろん、事例検討もよい方法です。事例検討は、実際のサービス利用者や施設入居者に対するケアの見直しにもつながる機会になるでしょう。

3.職員の業務量を見直す

業務量を見直しスタッフの負担軽減をはかることは、ストレスの改善につながり、結果として不適切なケアの要因を減らすことになります。

具体的な方法としては、主に以下の3つがあげられます。

・職員の増員
・介護現場のICT化
・介護ロボット導入

いずれの方法においても金銭的コストがかかるため、管理者や施設長と十分に話し合って進めていくことが大切です。

介護現場のICT化については、当サイト内記事介護現場のICTとは?種類と活用例を紹介!に詳しく掲載されていますので参考にしてみてください。

4.職員のメンタルヘルス対策を行う

強いストレスによりスタッフのメンタル面が低下すると、不適切なケアを引き起こしやすくなるだけではなく、介護業務そのものに支障をきたします。そのため、スタッフのメンタルヘルス対策は重要です。

メンタル面の低下サインとしては、主に以下のような点があげられます。

・仕事のミスが増える
・表情が乏しく、元気がなくなる
・遅刻や早退、欠勤が増える
・対人関係のトラブルが増える
・いつもより口数が少なくなる、または多くなる

このようなサインが見られるスタッフがいた場合、話を聴く機会を設けてみましょう。辛い状況を打ち明けて理解してもらえると、ストレスが軽くなり、メンタル回復を助けるでしょう。

また、ストレスチェックも、メンタルヘルス対策につながります。ストレスチェックは、従業員50人以上の事業所においては義務化されている制度です。
(従業員50人未満の事業所では、当面の間、努力義務である)

詳しくは、下記のページをご覧ください。
ストレスチェック制度が始まりました(労働者の皆様へ) | 滋賀労働局

スタッフのストレスマネジメントは職員が長く健康に働くうえで、とても大切なことです。役職者はスタッフも含め、自分自身のメンタルヘルスにも気を配る必要があります。

ストレスマネジメントに関しては、介護現場・介護職員のストレスマネジメントの重要性で詳しく解説していますので参考にしてみてください。

不適切なケアチェック表の活用で予防の意識付けを

不適切ケアチェック表を元に打ち合わせをする介護士

不適切なケアを予防するためにも、事業所独自のチェック表を作ることをおすすめします。事業所内で不適切なケアに関する匿名のアンケートを行い、今までにあった事例を入れると、事業所に合ったチェックリストを作成できるでしょう。

チェック表作成の過程では、スタッフ間が話し合うことになるため、不適切なケアについて振り返るきっかけになります。

チェック表の具体的な活用方法として、2つ示しました。

・スタッフ一人ひとりが自分のケアをチェックする

・チェック表を匿名で提出してもらい、その結果を話し合う場を持つ

不適切なケアチェック表は、作るだけではなく、実際に活用することが大切です。

まとめ

この記事では、不適切なケアの概要や事例、チェック表の活用法などについて解説しました。

不適切なケアは、高齢者虐待とも関係が深いものであり、介護上の重要な問題です。自分たちの事業所で不適切なケアが行われていたと判明した場合、早急に改善しなくてはなりません。

2024年度(令和6年度)の介護報酬改定では高齢者虐待防止措置未実施減算が創設されています。

介護従事者による高齢者虐待の要因の上位は、「スタッフの知識やスキル不足、ストレス」です。そういう意味では、本記事で取り上げた不適切なケアチェック表は役に立つでしょう。スタッフの知識不足などから生じてしまう不適切ケアを明らかにするきっかけとなることが期待できます。

 
不適切なケアを改善することは、サービス利用者や家族の安心、ひいては生活の質向上につながります。「ここのサービスは安心して利用できる」という声は、事業所への信頼にもつながるでしょう。

より信頼される事業所作りのためにも、チェック表を活用して、自分たちのケアを振り返っていきましょう。

この記事の執筆者
古賀優美子

保有資格: 看護師 保健師 福祉住環境コーディネーター2級 薬機法管理者

保健師として約15年勤務。母子保健・高齢者福祉・特定健康診査・特定保健指導・介護保険などの業務を経験。
地域包括支援センター業務やケアマネージャー業務の経験もあり。
高齢者デイサービス介護員としても6年の勤務経験あり。

現在は知識と経験を生かして専業ライターとして活動中。

 

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