介護現場では職員個々人で目標を立て、日々スキルアップを目指していくことが重要です。個人目標は、あなたのキャリアプランや経験年数、職場での立場によって設定方法が大きく変わります。
この記事では、介護職における個人目標が必要な理由やメリットについて解説。具体的な目標設定方法や経験年数別の目標例も紹介しますので、目標設定に悩んでいる方はぜひご覧ください。
介護職に個人目標の設定が必要な理由
介護業界で働くにあたり、個人目標を設定することは必要不可欠です。その主な理由は、以下のとおりです。
・介護業界で働くうえでキャリアアップが明確になる
・スキルアップが目指せる
・日々のモチベーション維持・向上につながる
・職場での評価につながる
・転職などで有利に働く
介護現場で働いていると、日々の業務に忙殺されてしまい、
「何を目指して日々仕事すればよいのだろうか」
「このまま介護の仕事を続けていいのだろうか」
と不安になることが多くあります。しかし、目標設定することで日々の業務をこなしながら、今後のスキル・キャリアアップの道筋が見え、成長することができます。
とくに、目標を設定しそれを周囲に伝えると、目標達成のためのアドバイスをもらえたり、自身の評価につながります。また、目標達成に必要な資格を取得すると、職場内での評価につながり、給与に反映されたり今後の転職などにも有利にもなるでしょう。
介護職員が個人目標を設定するメリット
介護職員が個人目標を立てるメリットは、以下の3つです。
1.キャリアプランが明確になる
2.スキルアップを目指しやすくなる
3.モチベーション維持につながる
それぞれのメリットについて解説します。
キャリアプランが明確になる
個人目標を設定すると、あなたのキャリアプランが明確になります。個人目標を立てるとき、短期目標と中~長期で目標を考えることが大切です。
・短期目標:1ヶ月~半年単位で設定
・中~長期目標:年間単位で設定
年間単位で目標設定する場合、そこから逆算して月単位でやることや毎日やるべきことが見えてきます。
もちろん、すぐに明確なキャリアプランができるわけではありません。しかし、少しでもさまざまなところにアンテナをはっておくと、あなたの興味・関心がある分野や自身の課題を見つけやすくなるでしょう。
スキルアップを目指しやすくなる
短期的もしくは中~長期的に目標設定すると、どういったスキルを習得する必要があるかを考えるきっかけとなります。自身で決めたキャリアプランを達成するためにスキル習得・資格取得していくことで、少しずつながらも最短で効率的にスキルアップできるようになるでしょう。
「介護」と一言でいっても、役職や必要資格は多く存在します。たとえば、「ご利用者がもっともっと笑顔で安心できるようにしたい」と思っている場合、介護技術を学べる本を読んだり研修を受講したりし、介護福祉士などの資格取得が目標となるでしょう。さらに、認知症ケア専門士などのより専門的な資格取得を目指す、といった目標を持つ方もいるかもしれません。
また、「もっと介護保険のことについて学びたい」と考えている方は、介護保険請求や事務業務を学び、ケアマネジャーといった資格を目指すこともできるのです。
介護現場で働いていると、スキルアップできるタイミングは数多くあります。しかし、目標設定をしておかなければそのタイミングに気づかないこともあるのです。
あなたが必要とするスキルを効果的に向上させるためにも、目標設定は重要であるといえます。
モチベーション維持につながる
個人目標を設定しキャリアプランやスキルアップを目指すことで、仕事に対するモチベーション維持・向上につながります。
あなたの目指す姿が明確になると、日々の業務で新たな発見ができ、新しい学びが生まれます。また、目標に向かって日々行動できていると、主体的に仕事に取り組むことができるでしょう。
自身の成長を感じられるとともに、主体的に仕事に励む様子を周りも評価してくれます。その結果、仕事へのモチベーションが維持しやすくなるなど、好循環につながります。
介護職の個人目標の立て方、コツ
次に、介護職で個人目標を立てるときに必要な5つのステップについて解説します。
1.課題を明確にする
2.目標を達成する方法、行動を決める
3.目標達成の期限を決める
4.実現可能な目標を設定する
5.キャリアプランを考える
具体的な個人目標を設定するためにも、1つずつ確認しながら進めていきましょう。
課題を明確にする
まず、あなたが感じている課題や解決したいことを明確にしましょう。また、あなたにとっての強み・弱みを把握しておくと、キャリアプラン・スキルアップするときの軸となります。
たとえば、日々の業務で以下のように感じる場面があります。
・ご利用者の介助方法がうまくできない
・認知症を抱えている方の対応が難しい
・介護保険についてご家族に質問されても答えられなかった など
こうした課題や疑問に思っていることをどんどん挙げていくことが大切です。もちろん、苦手な分野を克服するだけでなく、得意なことや興味・関心のある領域についても考えていきましょう。
明確な課題を見つけ言語化できると、目標がより具体的になります。
目標を達成する方法、行動を決める
課題や強み・弱みを挙げたら、それらを克服する(高める)ための目標を考え、達成する方法や行動を決めましょう。この時に、「自身が介護業界でどのようになりたいか」という理想の状態を考えることが重要です。
たとえば、「ご利用者にもっと安心してもらいたい」と考える場合、具体的な目標達成までの方法を考える必要があります。
・ご利用者における安心とは何か?
・安心な介助方法とは具体的にどういうことをすればよいか?
・安心できるコミュニケーションとは何か?
・安心して過ごせる環境づくりのためには、どういったことを学ぶのか?
抽象的な目標設定だけだと、振り返るときに達成されているのかどうか評価しづらくあいまいなまま終わってしまいます。まずは漠然としていても構いませんので、「こうしたい」「こうなりたい」を考えて、そこから掘り下げて具体的に考えていきましょう。
また、達成度を把握しやすいように、できる限り数値化したり、具体的な行動指針を掲げることも重要です。
目標達成の期限を決める
目標を設定したら、必ず達成までの期限を設けることにしましょう。期限や期間を設けていなければ、行動を先延ばしにしてしまったり、モチベーションが低下したりしてしまい、目標達成できなくなる可能性もあります。
とくに、介護系資格を取得する場合だと、以下のように期限を定めることができます。
・半年以内に外部研修を修了する
・1月下旬にある介護福祉士国家試験に合格する
・月に1冊、資格をとるための関連書籍を読む
数年単位で期限を設定してしまうと、なかなかモチベーションが続きません。できるかぎり月~半年単位を目安に設定するようにしましょう。また、その期間で振り返りをし、目標達成へ軌道修正するのにも役立ちます。
実現可能な目標を設定する
目標を立てるとき、ご自身の状況にあわせた実現可能な目標を設定することが大切です。
キャリア・スキルアップのために高い目標を掲げることはすばらしいことですが、それが達成できなかった場合、自信やモチベーションを失ってしまう可能性があります。さらに、大きすぎる目標を見た上司や人事担当からすると「自分の能力がわかってないのでは?」と逆効果になってしまうこともあります。
無理に大きく目標を設定する必要はありません。実現可能な目標設定をすることが大切です。
とくに、新人職員の場合は小さな目標から少しずつ設定し、一歩ずつ達成していくとモチベーション維持にもつながります。
キャリアプランを考える
目標設定をしていくなかで、具体的なキャリアプランを考えておきましょう。キャリアプランを考えるなかで、介護業界での経験年数だけでなく、ご自身の年齢や家族などについても考える必要があります。
たとえば、「ずっと現場で活躍して、介護のスペシャリストを目指す」と思っていても、年齢による身体変化や家族が増えるなど、ご自身を取り巻く環境変化が考えられます。そうした変化を受けて、目指すキャリアも変わる可能性は十分あるでしょう。
・リーダーや施設長などの高い役職に就きたい
・現場の経験を活かして業務改善に関する講師になりたい
・地域にいる高齢者に対して介護予防の専門家になりたい
ここで重要なことは、目標達成がノルマではない点です。目標が達成されることで、あなたのキャリア・スキルアップだけでなく、ご利用者へのケアの質が向上したり、よい効果を生み出したりできます。つまり、目標に到達してからが本番となることが多くあるのです。
目標設定はあくまで「標(しるべ)」であり、通過点のひとつです。目標を立てて一歩ずつ達成しながら、介護業界で働くうえでの「目『標』」と合わせ、「目『的』」もを見つけていけるよう、具体的なキャリアプランを考えていきましょう。
目標が思いつかない場合
介護業務をしながらだと「なかなか目標が思いつかない」「自分がやりたいこと・課題がわからない」という方も多くいらっしゃいます。目標が思いつかないときの対策として、3つの方法を紹介します。
1.将来のキャリアパスをイメージする
2.ロールモデルを探してみる
3.上司に相談してみる
それぞれの解決策について紹介しますので、目標設定がうまくできない方はぜひ参考にしてください。
将来のキャリアパスをイメージしてみる
まず、個人目標を考えるときに、将来のキャリアパスをイメージしてみましょう。
キャリアパス(career path)とは、施設や事業所において、職務や役職を目指すために必要なスキルや経験などを指します。一方、キャリアプラン(career plan)とは、あなた自身で考える将来の目標やその計画のことをいいます。
目標が思いつかない場合、まず今働いている職場で、以下の点をイメージしてみましょう。
■リーダーや管理者など、役職に就くために必要なこと
・知識
・技術
・資格
・経験 など
■職場でできる自分の強みを活かした役割
・レクリエーションをもっと学びたい
・介護知識・技術を職員に伝えたい
・介護保険や介護報酬を知ってもっと職場で役に立ちたい など
今働いている職場で長く続けたいと考えているならば、この職場環境や組織の中で自身がどうなるかをイメージしてみると、必要な知識や技術、資格が見えてくるのです。
ロールモデルを探してみる
職場内でのキャリアパスをイメージしてみるとともに、ロールモデルを探してみましょう。ロールモデルとは、あなたからみた「目標とする人物」や「手本としたい人物」のことをいいます。
たとえば、以下のような上司・同僚がロールモデルの対象です。
・ご利用者をいつも笑顔にしている先輩
・認知症を抱えた方への声かけや誘導が上手な同僚
・ご利用者やご家族からいつも相談され対応している上司
ロールモデルの対象となる人物がいると、以下のようなメリットがあります。
・その人の成功例や失敗した出来事を学べる
・どういった経験や勉強をしたのかを知ることができる
・モチベーションが向上し、自信がつく
ご利用者への姿勢や学び方、そしてどういったところにつまづきやすいかを聞けると、より効率的にキャリア・スキルアップの道筋を立てられるでしょう。
上司に相談してみる
目標が見つからない場合、上司に相談し一緒に目標設定をしていくことも重要です。
あなたの働き方を客観的に見ている上司だからこそ見える強み・課題があります。自分自身ではなかなか気づけない部分を明確にでき、目標設定の参考となるでしょう。
また、上司に相談しておくことで、目標設定してからも「うまく進んでいるか?」「ブレがないか?」を注目してくれます。目標への進め方に悩んでしまったり、進む方法がわからなかったりした場合、的確なアドバイスをもらいやすくなります。
ただし、相談したときに一方的に目標を押し付けられる場合には注意が必要です。職場で求められる目標や方向性とあなたの考えている目標にギャップが生じてしまい、モチベーション低下にもつながります。
すべての目標を上司に設定してもらうのではなく、「まずはこの目標に向かっていきたい」という相談を通して客観的に評価してもらうようにしましょう。
経験年数別でみる個人目標の具体例(目標例)
介護職員が目標を設定するとき、介護業界での経験年数により目標の立て方が異なります。ここでは、介護の経験年数を3つに分けてそれぞれの目標例を解説します。
1.新人職員:1~3年目
2.中堅介護職員:4~9年目
3.ベテラン介護職員:10年以上
年数別に身につけたいスキルや具体的な目標例をそれぞれ表にまとめました。あなたの経験年数に応じて、ぜひ目標設定の参考にしてください。
新人職員:1~3年目
経験年数1~3年目の新人職員における必要なスキルと目標例は、下表のとおりです。
必要なスキル・役割 | 基本的な介護スキル | ・ご利用者の安全を守る ・基本的な介助方法を知る ・基本的な介護知識を習得する |
ビジネスマナー | ・ご利用者への挨拶や言葉遣い ・同僚や上司への報告・連絡・相談 ・基本的な業務を覚える |
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個人目標例 | ・わからないところがあれば、その日のうちに報告し解決する ・出勤したら1日1回以上ご利用者や職員へ挨拶し、コミュニケーションをとる ・内部で行われる研修に毎月参加する |
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取得したい資格・研修 | ・初任者研修 ・実務者研修 ・認知症介護実践者研修 |
新人職員の場合、まずは基本的な介護スキル・業務とビジネスマナーの習得に努めましょう。とくに介護未経験から入職していると、右も左もわからず失敗してしまうことも多くあります。
失敗して落ち込むのではなく、振り返りをしっかり行い繰り返さないようにしていくことが重要です。また、積極的にご利用者や職員とコミュニケーションをとりましょう。信頼関係を築け、より早く職場に馴染むことができるのです。
新人職員が抱えるよくある悩みや独り立ちするための方法については、以下の記事もあわせてご覧ください。
中堅介護職員:4~9年目
経験年数4~9年目の中堅介護職員における必要なスキルと目標例は、下表のとおりです。
必要なスキル・役割 | 現場をまとめる力 | ・後輩への指導方法の確立 ・ご利用者のアセスメント精査 ・他職種との連携 |
専門的な知識・技術の習得 | ・アセスメントやケアプランの理解 ・内部における研修講師、研修計画の立案・実行 ・介護保険、コンプライアンスの理解 |
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個人目標例 | ・〇月までに現在の業務内容を精査し、マニュアルを更新する ・△月に「虐待・身体拘束防止」に関する研修を主催する ・2ヶ月に1回、外部の研修に参加し、研修で学んだ内容を現場で実践できるよう整備する |
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取得したい資格・研修 | ・介護福祉士 ・ケアマネージャー ・認知症介護リーダー研修 |
中堅介護職員になると、現在働いている職場環境の整備や精査、後輩への指導が中心となります。また、積極的に研修に参加し、自己研鑽することが必要です。
研修に参加するだけではなく、学んだ知識・技術を職場で発表し活かせると、あなたのスキルアップに大きく役立つでしょう。
職場内では、リーダーや主任などのキャリアパスも視野に入れていきます。ご利用者の安心だけでなく、一緒に働く職員と協力して安心できる職場を作っていきましょう。
介護リーダー・主任の仕事内容や役割については、以下の記事もぜひチェックしてください。
ベテラン介護職員:10年以上
経験年数10年以上のベテラン介護職員における必要なスキルと目標例は、下表のとおりです。
必要なスキル・役割 | 職場内の管理・マネジメント | ・介護保険、コンプライアンスの遵守 ・現場での事故発生件数を減らす ・職員の管理、人員配置 |
法人の経営状態を把握 | ・事業計画や運営状況 ・勤怠・労務管理 |
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個人目標例 | ・毎月の事故発生件数を〇%まで減らす ・〇月までにICT機器を導入し、業務改善を行うことで離職率を〇%までおさえる ・〇月に実施される運営指導に向けて毎月進捗確認、法人内報告を行う |
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取得したい資格・研修 | ・認定介護福祉士 ・主任ケアマネージャー ・施設長・管理者 |
ベテラン介護職員になると、その職場での管理的立場に就くことが求められます。現場での経験をもとに、中堅介護職員以下の育成だけでなく、それら職員の管理も必要です。
さらには、法人内での役割として適切な運営や事業計画の立案や実行に携わることもあります。個人目標については、「何を・いつまでに・どのくらい」と具体的な数字を意識しながら目標を立てることが重要です。
介護における管理職の役割や求められるスキルについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
まとめ
介護業界で働くにあたり、個人目標を設定することはキャリア・スキルアップの視点でとても重要です。しかし、日々の業務をこなしながら目標を見つけて立てていくのはなかなか大変ではあります。
まずは、あなたのキャリアプランを少しずつ考えながら、日々の仕事のなかで一歩ずつ学んでいくことが大切です。
Shift Life(シフトライフ)では、介護業界で働くみなさまに役立つ記事を多数掲載しています。介護現場での働き方やキャリア・スキルアップを目指す方は、以下の記事もぜひご覧ください。
この記事の執筆者 | しょーそん 保有資格:介護福祉士 認知症実践者研修 修了 認知症管理者研修 修了 認知症実践リーダー研修 修了 グループホームに11年勤務し、リーダーや管理者を経験。 現場業務をしながら職員教育・請求業務、現場の記録システム管理などを行う。 現在は介護事務の仕事をしながら介護・福祉系ライターとしても活動中。 |
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