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【教えて!】介護施設にインカムを導入するメリット・デメリットとは?補助金についても解説

介護施設にインカムを導入するメリット・デメリットとは

介護施設で働いていて、以下のような悩みはありませんか?
 
「人手不足で職員同士が離れた場所でケアをおこなっていて、ヘルプが必要な時など他の職員を探しに行くのに時間や労力がかかる」
 
「入浴の順番やナースコールの対応、緊急時など、他の職員とリアルタイムな連携が取りづらい」
 
「職員間のコミュニケーションが取れていないため孤立感が深まり、離職につながる」
 
「職員の連携、情報共有が足りていないためにご利用者からクレームが来た」
 
こうした悩みを解消するために有効なツールが「インカム」です。
介護施設にインカムを導入することのメリットやデメリットに加え、導入のための補助金についても解説し、実際にインカムを使っている施設職員から聞いた感想もご紹介します。
 
インカム導入を検討している介護施設の経営者様、管理者様などに参考になれば幸いです。

インカムの種類と特徴

インカムにはいくつかの種類があります。それぞれの特徴も合わせてご紹介します。

・トランシーバー型
近い距離、区切られていないフロアでの利用に有効。電波がやや弱い。

・LTE、IP無線機
携帯電話回線を使用。回線がつながれば通話出来るので送迎ドライバーや他の施設との連携も可能。

・簡易業務用無線機
バッテリー消費が大きく短時間利用(レクなど)に有効。登録か免許が必要。

また、機種によってはナースコールや見守りセンサーとの連動が可能なものもあります。

費用や、どのような職員(のチーム)で連携を取りたいか、通信範囲(フロア、ユニットなど)によって、どのタイプの機器を選ぶかが変わってきます。

介護施設にインカムを導入するメリット

メリット

介護施設にインカムを導入することで、いくつものメリットが生まれます。

インカム導入により、どういったメリットがあるかを1つずつみていきましょう。

介護職員間の情報共有がスムーズになる

従来、介護施設での連絡は「PHSか施設内アナウンス、職員に直接声をかける」ことが日常的だったのではないでしょうか?

その場合「1対1のコミュニケーション」になりますが、インカムは「1対複数のコミュニケーション」が出来ます。
また、フロアやユニットごとにチャンネル(グループ)を作って連携を取ることも可能です。

それぞれの職員が、これからどこでどのようなケアをするか、今何をしているかなどを把握しやすく、リーダー職が指示を出す、逆にリーダーに指示を仰ぐ時、申し送りで伝え忘れてしまった時などにリアルタイムで連携が取れます。

こうして活発にやり取りをすると、職員間の情報共有がスムーズになります。

利用者への緊急対応に役立つ

ナースコールに誰が対応するか、緊急時の連携を取る時など、インカムを使えば迅速な対応が可能です。

転倒や意識消失などの緊急時に看護師や管理職にすぐ連絡が取れる、外線電話への展開で救急車を呼ぶことも出来、職員の心理的な不安も軽減します。
また、センサーとの連動により、ご利用者がベッドから離床した時などもすぐ気付けます。

ハンズフリーのため業務がしやすい

介助をしていて両手がふさがっている時に他の職員と連絡が取りたい・・。
そんな時、ヘッドセットやイヤホン式のインカムですぐ情報共有や連絡が出来ます。

機種にもよりますが、ハンズフリーでの通話は介助中の連携を取る、他の職員にサポートをお願いする時などに役立ちます。

業務の効率化につながる

例えば施設内で他の職員と連携を取りたい場合、その人を探すところから始めなければなりませんが、そこには多くの時間と労力がかかります。

インカムがあればそれぞれの所在、いま何をしているかが見えやすく、複数の職員と同時に連絡が取れるので、入浴や食事、レクリエーションなど利用者が移動する時など、職員がリアルタイムで連動出来ます。

職員の離職が少なくなる

介護現場では「このケアで良いのだろうか?」と不安になったり、夜勤時に少ない人員で責任ある仕事をするなど、孤立を感じることもあります。

そんな時、リーダーやベテラン職員と連携が取りやすい、夜も別のフロア職員と話が出来る(機種や電波状況による)などがインカムを使えば可能となります。

「いつでも誰かとつながっている・連絡が取れる」と感じるので「チームで仕事している」という安心感が生まれやすく、結果的に職員の離職率が下がったという施設も多くあるようです。

介護施設にインカムを導入するデメリット

デメリット

インカム導入にはメリットもたくさんありますが、デメリットもあります。

介護施設へのインカム導入にあたっては、このデメリットをどう解消していくかがカギになるでしょう。

導入費用がかかる

介護施設にインカムを導入する時(した後)のコストとして、端末代、通信設備費、通信料、修理費などがかかります。
端末代としては、メーカーや機種にもよりますが本体平均価格が1台1万円~3万円ほどになります。

また、端末をリース契約した時などは償却期間が5~6年かかる場合があることや、職員の人数分集めたり(充電が追い付かないため)予備の数まで揃えるとしても費用がかさんでしまいます。

装着による不快感や痛みが出ることもある

インカムは基本的に長時間装着したイヤホンで情報をキャッチするので、耳が痛くなる場合があります。
骨伝導ヘッドセット、耳まわりや襟などにひっかけるタイプにして、イヤホンレスで耳へのトラブルを軽減している施設もあります。

衛生面が気になる

インカムを使いまわすことで衛生面の問題があります。職員の汗やご利用者の排泄物などに触れることも多い介護現場。
マイクやイヤホンなどの消毒をおこなう手間や人数分の機器を揃えるというコスト増を考える必要があるでしょう。

端末が業務の妨げになる可能性がある

現場で介助をする場合、体を色んな角度に動かすことになります。
そういう時、端末とイヤホンをつなぐコードがからまったり邪魔になる、ご利用者がコードをつかんでひきちぎってしまうこともあるので、衣服の下にコードを入れる工夫などが必要となり「わずらわしい」と感じる職員もいるようです。

また、端末自体の重さが気になる、インカムの方に気をとられて目の前のご利用者やご家族の話に身が入らないという場合もあります。

定期的に充電が必要

基本的にインカムは定期的な充電をする必要があり、バッテリーの劣化・故障にくわえ、充電や保管場所を確保する必要があります。

勤務交代の時などに何となく端末を置いたままにして充電を忘れてしまい、インカムの数が不十分の状態で情報共有が足りなくなるというケースもあるようです。

うまくコミュニケーションがとれない可能性もある

電子機械を使用してのコミュニケーションなので、機種や使用範囲の広さによっては電波が不安定になることもあります。

また、インカムを持っている職員と持っていない職員間で情報量や業務量の差が出たり、1対複数のやり取りの場合、「誰かが答えてくれるだろう」と何も言わない職員が出てくる、

的確な質問や指示出しをしないためにかえって現場が混乱する、などのコミュニケーションエラーが出る可能性もあります。

リーダーの業務が増えることがある

職員が連携を取りやすいインカムですが、逆にいえば「コミュニケーション量が増える・指示を仰ぎやすくなる」ことで、リーダーがそれに応えたり指示出しをするという業務が増えることもあります。

今までであればケアの場面で職員自身が考え動いていたものでも「~さん、これはどうしたら良いですか」と聞かれる頻度が多くなるかも知れません。

流動的である介護現場では完璧に出来ないかも知れませんが、どのような場面で連携を取り合うのか、どのレベルでリーダーに相談するのかなどは、実際にインカムを使ってみた感覚をもとにチームで話し合うのも良いでしょう。

インカム導入の補助金について

インカムを導入するには費用がかかりますが、厚生労働省が実施する2つの補助金を利用することが出来ます。

「ICT導入支援事業」

〇補助上限額
100万円~260万円 *事業所規模(職員数)に応じて設定

〇補助要件
LIFEによる情報収集・フィードバックに協力、他事業所からの照会に対応、導入計画の作成・導入効果報告(2年間)

「介護ロボット導入支援事業」

〇補助上限額
750万円

〇補助要件
導入計画において目標とする人員配置を明確にした上で、見守りセンサーやインカム、介護記録ソフト等の複数の機器を導入し、職員の負担軽減を図りつつ、人員体制を効率化させる場合」という要件を満たすこと。
*見守りセンサーの導入に伴う通信環境整備としてのインカム導入

参考:厚生労働省ホームページ「地域医療介護総合確保基金を利用したロボットの導入支援」

インカム導入は、施設の予算にとってかなりのコスト増となります。

介護職員の負担軽減を図るためにつくられた補助金であり、導入費用を大幅にカバー出来るものなので、事業所のある都道府県に確認しながら補助金を利用してみると良いかも知れません。

介護施設にとってインカムは「魔法の機器」?

介護施設にインカムを導入することのメリット・デメリットなどをご紹介しました。

インカムを導入することによって多くのメリットを享受したり、介護職員の離職率が下がる介護施設がある一方で、導入後の活用がうまくいかずにコストだけかさんでしまい…といった施設もあります。

インカム導入を検討する際にはメリット・デメリットを理解し、施設として解決したい課題を明確にした上で、導入に取り組むことをおすすめします。

改めて以下にメリット・デメリットをまとめます。

介護施設にとってのインカムのメリット

・職員間の情報伝達がスムーズになり、不安感や孤独感が軽減するため離職防止になる

・職員が連携しやすくなるので、ご利用者の満足度向上につながる

・情報伝達が密になることで緊急時の対応がスムーズになる、事故防止につながる

介護施設にとってのインカムのデメリット

・端末代、メンテナンス等に費用がかかる(国からの補助金あり)

・インカム装着時に耳の痛みを感じたり、コードが邪魔になることがある

・電子機器なので、充電の必要、電波の不具合が発生する可能性がある

・インカムを持っている職員とそうでない職員の情報量、業務量に差が出る可能性がある

まとめ

介護現場では「いかに情報を共有するか」がテーマであり、悩みでもあると思います。

職員が、どこでどんなケアをしているかが見える化し、必要な時に声をかけ合うことが実現出来るインカムは、そうした悩みを解決する魔法の機器かも知れません。

導入へのハードル、デメリットを克服した先にある「ご利用者が安心して暮らせる、職員がつながり合いながら働いている」景色のために、インカム導入を御検討してみてはいかがでしょうか?

この記事の執筆者
otoupapa

保有資格: 介護支援専門員、介護福祉士、介護予防運動指導員 等

訪問介護、デイサービス、有料老人ホーム、小規模多機能型居宅介護を経て今は居宅ケアマネジャーとして勤務。

介護職歴は約22年で、祖父母の在宅介護や福祉系のNPO法人運営を経験しました。

現在は介護・福祉系その他のライターをしながら、介護のお仕事と子育てを両立しています。

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