皆さんは最高で何連勤したことがありますか?3、4日おきに定期的に休みが取れているという方もいれば、5連勤、6連勤を経験した事があるという方もいるかもしれません。
又、スタッフの勤務シフトを作成する際も、個人の能力差や勤務希望、早出や遅出のシフトの偏りなど、様々なポイントがある中でも、特に「連続勤務の日数」に気を付けながらシフトを作成していると思います。
しかしその中で、実際に何連勤まで可能なのか?連続勤務の日数や労働時間、休日など、その規定まで理解している方はどれほどいるでしょう?今回はそういった労働基準法の話を解説していきたいと思います。
目次
6連勤は違法?
まず、結論から言えば6連勤は違法にはなりません。連続勤務において違法となるケースは、
・1日8時間、1週間に40時間を超える労働をさせない
・毎週最低1日の休みを設ける
1週間という期間に絞って見た場合、これらの条件を守れば、6連勤をしても違法にはなりません。ただし、会社側との労働契約において「完全週休二日」とある場合、6連勤をすれば1週間に2日の休日が確保されておらず、雇用契約が守られていないという事になり、労働基準法違反となります。
また、似たような条件として「週休2日」の場合は、年間を通して1ヶ月に1回以上週2日の休みがある制度の事なので注意が必要です。したがって週休2日の場合は違法ではありませんが、6連勤になる可能性があるという事を覚えておきましょう。
労働基準法の連勤に関する規定
実は労働基準法においては明確に「連続勤務の日数」について上限を設けている内容の記述はありません。ただし、労働基準法第32条において1日8時間、1週間で40時間を超える労働をさせてはならないと明記されています。
この定めにより、40時間(1週間の労働時間)を8時間(1日の労働時間)で割ると、1週間の勤務日数が5日となり、週休二日となるわけです。しかし、労働基準法第36条には上記の時間を超えて労働を可能とする内容が記されており、規定の時間を超えて働く場合、割増賃金を支払う事で労働が認められています。
ただ労働基準法第35条には「毎週少なくとも一回の休日、4週間を通じて4日の休日」を設ける事も書かれており、これを「法定休日」といいます。これにより、連続勤務が可能な日数が制限される事になります。
労働基準法違反とならないケース
労働基準法には1日8時間、1週間で40時間を超える労働は禁止されており、これを「法定労働時間」といいます。通常はこの法定労働時間を超える労働は違法ですが、ある条件を満たすことで違法にならないケースがあります。
それは労働基準法第36条における「時間外及び休日の労働」についての項目に記載されています。労働者または労働組合と労使協定を結び、労働基準監督署に届け出ることで、法定労働時間を超えての労働を認めるもので、いわゆる「36(さぶろく)協定」と呼ばれています。
しかし、労使協定を結んだ上での労働時間にも上限があり、1ヶ月で45時間、1年間で360時間を超える労働は禁止となっています。
連勤(連続勤務)は何日までOK?上限について
先述の内容でも触れたとおり、労働基準法には明確な連勤に対する規制はありません。「最低1週間に1日の休み」が確保されていれば、それ以外は勤務可能という事になり、週のはじめの日曜日を休日とした場合、以降の月曜から土曜日までは勤務可能という事になり、6連勤も違法にはあたりません。
さらにこの翌週のどこかで「最低1週間に1日の休み」を取得するなら、6連勤以上の勤務も可能という事になります。また、この休日についても定義がされており、厚生労働省のホームページにある就業規則の記載によると、休日とは「暦日(午前0時から 午後12時まで)においての休業」を指すもので、単に24時間連続して勤務から解放された状態ではない事、24時間に満たなければ法定休日として認められない事を覚えておきましょう。
連勤の上限は12日
労働基準法において明確な連勤についての記載がないとはいえ、その上限は存在します。その上限は12日です。
なぜ連勤の上限が12日なのか?これは労働基準法において週1回の休みが義務付けられているため、1週間で6連勤、それを2週続けた場合最長で12連勤となり、連勤の上限が12日となります。
この時、注意しなければいけないのは、休日は「暦日(午前0時から 午後12時まで)においての休業」である事です。
介護の仕事には夜勤があり、夜勤明けは休日とはカウントされません。もし連勤の最終日が夜勤だった場合、夜勤明けの翌日を休日として設ける必要があるという事に注意しましょう。
変形労働時間制の場合、連勤上限は24日
通常、最低週1回の休日で連勤を行った場合、連勤の上限は12日ですが、「変形労働時間制」であった場合、連勤の上限は24日となります。この「変形労働時間制」とはどういったものか?
その名の通り、1日の労働時間を8時間と固定せず、1週間や1カ月、1年単位で労働時間を調整するものです。繁忙期は勤務時間を長く、閑散期は短くといったように働き、一定の期間の勤務時間を平均し、法定労働時間(1日8時間、週40時間)内を超えないようにするものです。
さらに、休日も「4週間で4日の休み」を4週目に4日まとめて取得するとした場合、連勤の最大日数は1ヶ月で24日可能という事になります。
労働基準法違反となるケース
ここまで労働基準法における違法にあたらないケースを解説してきましたが、反対に違法にあたるのはどのようなケースでしょう?法定労働時間を超える場合「36協定」を締結した上でも違法になる場合があります。
まずは、時間外労働の上限の時間の超過です。労働基準法における時間外労働の上限は月45時間、年間で360時間と定められており、原則としてこの時間を超える労働を課す事は違法です。
ただし、特別条項付きの36協定を結んでいた場合、上限を超えての時間外労働が認められますが、特別条呼応を締結していても超過できない上限が存在します。また、労働基準法で定められた休憩や休日を与えない場合も労働基準法違反となります。
介護職の6連勤はキツイ
労働時間や休日など、労働基準法で定められた範囲内の働き方でも、介護職における6連勤は非常に負担の大きいものです。介護職は利用者はもちろん、その家族、他のスタッフなど、常に誰かと接し、コミュニケーションを図る事が大切で、精神的に大きな負担がかかります。
現場での介護についても、事故の防止など安全面への配慮や、自身より大きな利用者の介護など、精神的、肉体的にも消耗の大きな仕事と言えます。このように様々な面でストレスを抱えやすい介護職において、6連勤は非常に大変で、シフトの作成者はもちろん、自身でも適度なタイミングで休日を取得する事が大切です。
6連勤で働くリスク
介護現場における6連勤には様々なリスクがあります。まずは身体的なリスクです。
身体介護を行う場合、必ずしも利用者が軽度であるとは限りません。場合によっては自身より大型であったり、重度であったりと大変なケースもあるでしょう。
介護スタッフが疲れが取れないまま連勤を重ねることで、疲労は蓄積し、体調を崩す可能性もあるでしょう。疲労が蓄積した状態では精神的なストレスも溜まりやすく、気持ちに余裕の持てない状態は集中力や仕事の生産性の低下に繋がり、事故を起こす危険性も上昇するなど、様々な面に悪影響を及ぼします。
スタッフの連勤を適度な日数に押さえシフト作成をすることは、これらのリスクを回避するためにも必要な対応です。
健康状態へのリスク
連勤の日数が増えれば、疲労の蓄積度を高め、健康状態を害する恐れがあります。肉体的な疲労によって体調を崩したり、疲労の蓄積による腰痛や腱鞘炎、悪化すればヘルニアなどを発症するリスクもあります。
また肉体的だけでなく、人間関係や職場環境など、精神的にも様々なストレスの要因は存在します。これらのストレスが解消されないまま仕事を続けると、うつ病や燃え尽き症候群といった状態に陥るリスクもあります。
そういった状態にならないために、自身の疲労やストレスを自覚する必要があります。
厚労省は「5分でできる心のストレスセルフチェック」を公開しており、このようなツールを使って自身の状態を把握する事も大切です。
離職されるリスク
介護職の連勤は、連勤をする当事者にとって様々なリスクがあることはもちろん、雇用する側にとっても大きなリスクを伴います。それは職員の離職というリスクです。
シフトを作成する立場にある職員にとって、職員の連勤は無理のない範囲に抑えたいところでしょう。しかし、他の職員の急な欠勤の代理などのイレギュラーな理由で、思わぬ連勤をお願いする事もあるかと思います。
それが1度や2度ならともかく、頻度が高かったり、連勤の日数が長ければ、当然職員の疲労や不満は募り、離職のリスクは高まってしまうでしょう。そういったリスクを下げるためにも、急なシフト変更の後は、キチンと休みを取ってもらったり、普段から職員とのコミュニケーションを図り、信頼関係を築いておくことが大切です。
介護事故のリスク
連勤により疲労とストレスが蓄積した状態で仕事をする事は、集中力や判断力が低下し、介護事故を引き起こす可能性が高くなります。普段の業務の中で配慮していた事でも、集中力や判断力が低下した状態では、利用者の体調の変化や、異常にも気付きにくく、普段であれば気付けたことも見落とす可能性があり、場合によっては利用者の生命にかかわる重大な事故に繋がりかねません。
排せつや入浴などの業務では、利用者はもちろん、自身も怪我をする可能性があります。また、直接の事故だけでなく、業務に集中できないような状態では、仕事の生産性も低下するため、過剰な連勤はデメリットを多く含みます。
こういった事態にならないためにも、過剰な連勤は避け、適切に休日を取得しましょう。
介護現場での6連勤、主な原因は人手不足
職場環境において連勤が発生しやすい原因とは、一体何でしょう?その原因はやはり人手不足といえます。令和4年度の介護労働安定センターの「介護実態労働調査」においても、従業員の過不足状況について、69.3%が人員の不足感を感じています。
また、人材の確保とともに求められているのが、ICT機器の導入による業務の簡略化です。毎日の記録をICTを導入する事で、職員の作業量を減らしたり、センサー機器を使うことで利用者の見守りを少ない職員で幅広く行うことも可能です。
これらについては「介護実態労働調査」の中でもコストや操作性が課題として挙げられていますが、人員不足解消のため積極的な人材の確保と育成が必要と言えます。
まとめ
労使協定を結んだ上で労働基準法で定められた、法定労働時間と法定休日の範囲内であれば12日、変形労働時間制の勤務であれば最大24日の連続した勤務が可能となります。
これらに違反する事で、労働基準監督署から是正勧告を受けるだけでなく、懲役や罰金といった処罰が課せられます。とはいえ、これらはあくまで労働基準法を違反しない範囲での最大の日数であり、実際にこのような連勤をする事は、介護者は心身ともに大きな負担となることはもちろん、雇用する側にとっても、職員の離職など、お互いに多くのリスクやデメリットを抱えることになるでしょう。
こういった事態を回避するために、介護者は自身の心身の状態を正しく把握し、健康状態を維持する事に注意しましょう。また、雇用者側もICTの導入を進め業務の負担軽減を図るとともに、人材の確保と育成を進め、十分な人員を配置するように努めましょう。
介護業界のICT化に関しては次の記事も参考にしてみてください。
この記事の執筆者 | タツキ 保有資格:介護福祉士、社会福祉主事 専門学校卒業後から高齢者福祉の分野に従事。様々な現場での経験を経て、サ高住、有料老人ホームの施設長を務める。 現在は通所介護施設の管理者として尽力している。 |
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