訪問看護のサービス提供体制強化加算とは、看護師等の総数のうち、一定の勤続年数を満たす職員が30%以上を占め、研修や会議などの実施体制を整えている事業所を評価する加算です。介護福祉士の割合が要件に含まれず、対象となる看護師等の勤続年数によって加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)の区分が分かれる点が、介護福祉士の割合を要件とする一部の介護サービスとの違いです。
とはいえ、「現在の人員体制で算定できるのだろうか」「加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)のどちらに該当するのか」と迷う訪問看護事業所の管理者の方もいるのではないでしょうか。
この記事では、訪問看護のサービス提供体制強化加算の単位数と算定要件を整理したうえで、勤続年数の数え方や職員割合の計算方法についても解説します。これから算定を検討している事業所の管理者や担当者は、ぜひ参考にしてください。
訪問看護のサービス提供体制強化加算とは

サービス提供体制強化加算は、勤続年数の長い看護師等の割合や、研修・会議・健康診断などの実施体制を評価する介護報酬上の加算です。訪問看護では、介護保険の訪問看護費と介護予防訪問看護費に設けられています。
算定するには、所定の要件を満たしたうえで、あらかじめ所管する指定権者へ体制等に関する届出を行う必要があります。要件を満たしているだけでは算定できないため、事業所所在地の自治体が示す届出先や提出期限を確認しましょう。
区分と単位数
単位数は、加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)の区分だけでなく、算定する訪問看護費の区分によっても異なります。
| 対象 | 加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) |
| 訪問看護ステーション・病院/診療所による訪問看護(訪問看護費のイ・ロ) | 1回につき6単位 | 1回につき3単位 |
| 定期巡回・随時対応型訪問介護看護と連携する訪問看護(訪問看護費のハ) | 1月につき50単位 | 1月につき25単位 |
| 介護予防訪問看護 | 1回につき6単位 | 1回につき3単位 |
通常の訪問看護では、加算(Ⅰ)は1回につき6単位、加算(Ⅱ)は1回につき3単位です。一方、この加算では、定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所と連携して訪問看護を行う場合のみ、1か月あたりの単位数で設定されています。
また、サービス提供体制強化加算は、区分支給限度基準額に算入されない、支給限度額管理の対象外の加算です。そのため、この加算を算定しても、限度額管理上、ほかの居宅サービスの利用可能量を圧迫しません。ただし、加算分に応じたご利用者の負担は生じます。
参照:「介護報酬の算定構造」
令和8年6月施行の期中改定では、訪問看護に介護職員等処遇改善加算が新設されました。一方、サービス提供体制強化加算の区分、単位数、算定要件に変更はありません。
参照:「令和8年度介護報酬改定について」
サービス提供体制強化加算は訪問看護以外の介護サービスにも設けられており、サービスの種類によって区分や算定要件が異なります。ほかのサービスの区分や計算方法も確認したい場合は、以下の記事も参考にしてください。
訪問看護のサービス提供体制強化加算の算定要件
訪問看護のサービス提供体制強化加算の算定要件は、整理すると大きく2つに分けられます。1つは、研修・会議・健康診断という3つの要件です。もう1つは、看護師等の総数のうち、一定の勤続年数を満たす者が占める割合に関する要件です。
3つの要件は加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)で共通しており、区分を分けているのは勤続年数の要件です。つまり、3つの共通要件をすべて満たしたうえで、勤続年数の基準をどこまで満たせるかによって、算定できる区分が決まります。
この構造を理解しておくと、自事業所が何を整備すればよいのかを確認しやすくなるでしょう。
加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)に共通する3つの要件
加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)のどちらを算定する場合も、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
・すべての看護師等について、一人ひとりの研修計画を作成し、その計画に従って研修(外部における研修を含む)を実施している、または実施を予定していること
・ご利用者に関する情報やサービス提供にあたっての留意事項の伝達、または看護師等への技術指導を目的とした会議を定期的に開催すること
・すべての看護師等に対して、健康診断等を定期的に実施すること
参照:「厚生労働大臣が定める基準」
このうち会議については、「定期的」とはおおむね1か月に1回以上を指し、開催状況の概要を記録する必要があります。サービス提供に当たる看護師等の全員が参加する必要がありますが、全員が一堂に会する必要はなく、グループに分けての開催やテレビ電話装置等の活用も認められています。
ただしテレビ電話装置等を使う場合は、個人情報の取り扱いや医療情報システムの安全管理に関するガイドライン等への対応が必要です。
健康診断等は、労働安全衛生法上の「常時使用する労働者」に該当しない職員も含めて、少なくとも1年以内ごとに1回、事業主の費用負担で実施します。新たに算定する場合は、1年以内に実施される計画があれば要件を満たす扱いです。
参照:「サービス提供体制強化加算に係る留意事項(老企第36号抜粋)」
参照:「令和元年度 介護保険サービス事業者 集団指導資料(訪問入浴介護)」
ここで注意したいのが、「看護師等」に含まれる職員の範囲です。指定居宅サービス等基準では、「看護師等」を看護師その他の指定訪問看護の提供に当たる従業者と定めており、事業所の種類によって対象職種が異なります。
訪問看護ステーションでは、保健師・看護師・准看護師といった看護職員に加えて、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士も対象です。一方、病院または診療所が行う訪問看護では、看護職員が対象になります。
参照:「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
在籍しているかどうかではなく実際に指定訪問看護の提供に当たっているかどうかで判断するため、自事業所の形態と各職員の業務を確認したうえで、計算の対象となる職員を整理しておきましょう。
区分を分ける勤続年数の要件
加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)を分けているのは、看護師等の勤続年数に関する要件です。
| 区分 | 勤続年数の要件 | 3つの共通要件 |
| 加算(Ⅰ) | 看護師等の総数のうち、勤続年数7年以上の者が占める割合が30%以上 | すべて満たす |
| 加算(Ⅱ) | 看護師等の総数のうち、勤続年数3年以上の者が占める割合が30%以上 | すべて満たす |
基準となる割合はどちらも30%で、違いは勤続年数が7年以上か3年以上かという点だけです。訪問看護では、介護福祉士の配置割合は要件に含まれておらず、看護師等の勤続年数の割合によって区分が決まります。
まずは勤続年数3年以上と7年以上の看護師等について、それぞれの割合を確認しましょう。
なお、加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)を同時に算定することはできません。両方の要件を満たす場合も、算定する区分を一つ選んで届け出ます。
では、この30%はどのように計算するのでしょうか。勤続年数の数え方と職員割合の計算には細かなルールがあるため、次の章で確認していきます。
訪問看護のサービス提供体制強化加算の注意点
この加算を算定するときは、要件の内容だけでなく、勤続年数の数え方や職員割合の計算方法にも注意が必要です。いつの時点で数えるのか、どの期間の実績から算出するのかが、通知で細かく定められているためです。
また、算定を始めたあとに確認すべきことも、職員割合をどの期間の実績で算出したかによって変わります。ここでは、計算方法と、要件を満たさなくなったときの対応を整理します。
勤続年数と職員割合の計算方法に注意する
勤続年数は、各月の前月の末日時点で判定します。たとえば4月に算定する場合は、3月31日時点で勤続年数が3年以上または7年以上あるかを確認します。
勤続年数には、その事業所での勤務年数に加えて、同一法人等が運営する他の介護サービス事業所や病院、社会福祉施設などで勤務した年数を含めることができます。ただし他の事業所等の分は、ご利用者に直接サービスを提供する職種として勤務した期間に限られ、事務職など直接サービスの提供に当たらない職種での期間は含められません。
一方、産前産後休業や育児休業、介護休業の期間は、雇用関係が続いているため勤続年数に含めることができます。
職員割合は、在籍人数ではなく常勤換算方法で計算します。原則として用いるのは、前年度の4月から2月までの11か月間の平均です。
前年度の実績が6か月に満たない事業所では、届出日の属する月の前3か月の平均を用います。新たに開始した事業所や再開した事業所は、この3か月分の実績が必要になるため、届出ができるのは4か月目以降です。
なお、同じ事業所で介護予防訪問看護を一体的に行っている場合は、この加算の職員割合も一体的に計算します。
参照:「サービス提供体制強化加算に係る留意事項(老企第36号抜粋)」
参照:「『サービス提供体制強化加算』について(職員割合の確認方法等)」
要件を満たさなくなった場合は速やかに届け出る
職員数が少ない事業所では、1人の退職や異動が職員割合に大きく影響することがあります。算定を始めたあとの確認方法は、職員割合を前年度の平均で算出したか、前3か月の平均で算出したかによって異なります。
前3か月の平均で算定している事業所は、届出後も直近3か月の割合を毎月確認して記録し、所定の割合を下回った場合は、直ちに指定権者へ加算の取り下げまたは区分変更を届け出ます。一方、前年度の平均で算定している事業所は、毎年3月に翌年度も算定できるかを計算し直して確認します。
参照:「『サービス提供体制強化加算』について(職員割合の確認方法等)」
職員割合以外でも、研修や会議、健康診断といった要件を満たさなくなった場合は、速やかに指定権者へ届け出て、加算の算定を中止する必要があります。要件を満たしていない期間について算定を続けると、あとから請求の修正や介護報酬の返還を求められる可能性があります。
職員ごとの研修計画と実施記録、会議の概要、健康診断等の実施状況、職員割合の計算結果は、自己点検や運営指導の際に確認できるよう整理して保管しておきましょう。
まとめ
訪問看護のサービス提供体制強化加算は、研修・会議・健康診断という3つの共通要件と、勤続年数の割合に関する要件で構成されています。加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)を分けるのは、勤続年数の要件です。
3つの共通要件は、日々の業務のなかですでに取り組んでいる内容と重なる部分もあるかもしれません。研修計画を職員ごとに作成しているか、会議の開催状況を記録に残せているかなど、手元の資料を見直すところから始めてみてください。
そのうえで常勤換算による職員割合を計算すると、どちらの区分に該当するかを確認できます。この加算は、勤続年数の長い看護師等の割合が評価に反映される仕組みでもあります。
自事業所の算出方法に合わせた確認を習慣にして、研修や会議などの体制を続けられる形に整えていきましょう。
※この記事は、作成時点の最新資料・情報を基に作成しています。具体的な算定可否や届出の取扱いについては、その都度、最新の告示・通知等をご確認のうえ、必要に応じて保険者または指定権者へお問い合わせください。
この記事の執筆者![]() | Shift Life編集部 介護現場での実務経験を持つライターと、介護報酬・制度に精通した編集スタッフが連携し、現場で役立つ情報をお届けしています。 制度・加算に関する情報は、厚生労働省・自治体などの公的機関が発行する一次情報を優先的に参照し、掲載前にファクトチェックを実施しています。 |
|---|
・【シンクロシフト】無料で試せる介護シフト自動作成ソフト
シフト作成の負担を軽減!スタッフに公平なシフトを自動作成!希望休の申請も、シフトの展開もスマホでOK!「職員の健康」と「経営の健康」を強力にサポートする介護業界向けシフト作成ソフト。まずは無料期間でお試しください。
・【介護施設向け】シフト・勤務表 自動作成ソフト8選!ai搭載などおすすめ紹介
介護業界向けシフト作成ソフト・アプリを紹介。シフト作成にかかる負担を減らしたいのなら、介護施設のシフト作成に特化したソフトやアプリの導入がおすすめです。
・介護施設でのシフト作成(勤務表の作り方)のコツを詳しく解説!
シフト作成に数十時間をかけている介護現場もあります。シフト作成業務を効率的に進めるコツを解説しています。
・介護・福祉現場のICT化 活用事例・導入事例
人手不足が深刻となる中、介護現場のICT化による業務効率化は待ったなしです。介護福祉現場における活用事例や導入事例、メリット・デメリットを解説します。





















