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【教えて!】特養の人員配置基準とは?従来型とユニット型の人員基準についても解説!

特別養護老人ホームの人員配置基準とは

介護施設では、様々な職種の職員が働いています。そして、介護施設の種類によっても職種や人数について「どの職種を何名配置すること」が明確に決められており、それを「人員配置基準」と呼びます。
 
人員配置基準は、介護施設を運営するための基準で決められている最低基準のため、その人数を下回ることは許されません。
 
最近では、職員の採用について苦労する施設も多いため、施設を管理する立場ではできる限り少ない人数で業務を回してもらいたいという気持ちもあると思いますが、人員配置基準を満たしていないと指定を受けることができません。
 
ここでは、特別養護老人ホーム(以下、特養)の人員配置基準について概要や仕組みを解説します。ぜひ参考にしてみてください。

特養(特別養護老人ホーム)とは

特養で働く介護士と高齢者

特別養護老人ホーム(以下、特養)は、介護保険で利用できる施設の中でも、特に要介護度が高い方を受け入れるための施設で、お亡くなりになるまで入所することができるので「終の棲家」と呼ばれることもあります。

特養では在宅での生活が困難な高齢者に対して、入浴や排泄、食事等の介護、相談援助、日常生活上の世話、機能訓練、健康管理など身の回り全般の介護が行われます。

なお、「特別養護老人ホーム」とは老人福祉法で定められている名称のことで、介護保険法では「介護老人福祉施設」と呼ばれます。一般的には、特別養護老人ホーム(特養)の方が使われることが多いのですが、同じことを指すことを覚えておくとよいでしょう。

特養の入所については平成27年以降、原則として要介護3以上の方を受け入れるように国から指針が示されています。しかし、地域によっては入所者が確保できなかったり、職員不足によりベッドを埋められない施設があったりと様々です。

令和5年4月には、地域の実情や入所希望者の状況を鑑み、要介護1.2であっても柔軟な対応をするように指針が変更されました。

(参考)「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」の一部改正について(通知)

特養の人員配置基準

特別養護老人ホームの人員配置基準について見ていきましょう。各職種ごとに、入所者数に応じて必要な人数が定められています。

職種 必要数
施設長(管理者) 1人以上(常勤)
・原則として専従
業務に支障がない場合は他の職務を兼務することが可能
医師 1人以上(非常勤可能)
・入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数
介護職員/看護職員 入所者3名につき、介護職員/看護職員が常勤換算で1人以上
・看護職員は、入所者30名以下で1人以上(常勤換算)
入所者30名を超えて50名以下で2人以上
入所者50名を超えて130名以下で3人以上
入所者130名を越える場合は3人+入所者50名に付き1人以上
・看護職員のうち、1人以上は常勤であること
生活相談員 1人以上(常勤)
・入所者100人に対して常勤換算で1人以上
栄養士 1人以上(非常勤可能)
・入所定員が40人を超えない場合で、入所者の処遇に支障がない場合は置かないことが可能
機能訓練指導員 1人以上(非常勤可能)
・資格要件あり
介護支援専門員 1人以上(常勤かつ原則として専従)
・入所者100人に対して常勤専従で1人以上
2人目以降は非常勤でも可能
その他 調理員や事務員など必要に応じて配置

 
人員配置基準は、介護保険法で決められている最低限の基準です。職員も休みを取らなくてはいけなかったり、急な退職で基準を満たさなくなると困るため多くの特養では、人員配置基準より多くの職員を配置しています。

基準では、介護職員と看護職員の人数は、入所者3名につき1人以上とされていますが、独立行政法人福祉医療機構が出しているレポート「2021年度(令和3年度)特別養護老人ホームの経営状況について」を見ると、従来型特養全体で、「利用者10名あたりの介護職員の配置人数は4.2人」とされています。これは、入所者3名あたりで直すと介護職員が1.26人ということになります。

例えば、90名の特養の場合、介護職と看護職を足して30名の配置が人員配置基準ということになりますが、実際には介護職員だけで37.8名が配置されている、ということになります。これは、有給の義務化やシフトの調整などから基準の人数では到底勤務を回せないということかもしれません。

常勤と非常勤、専従と兼務の違い

人員配置基準を見ると「常勤」、「非常勤」、「専従」、「兼務」などの言葉が出てきます。常勤、非常勤の違いは「働く時間の違い」で以下のように分けられます。

・常勤職員:フルタイムで働く職員
・非常勤職員:フルタイムで働く職員より「勤務時間が短い」職員

専従、兼務の違いは「職務の違い」で以下のように分けられます。

・専従職員:勤務時間を通じて、専らその職務に従事すること
・兼務職員:複数の職務につくこと
(看護職員が、機能訓練指導員の職務を兼ねるなど)

例えば特養の場合、介護支援専門員については「入所者100名に対して、常勤専従で1人以上」の人員配置が必要となります。

例えば入所者150名の場合には、

常勤専従の介護支援専門員が1名+非常勤兼務の介護支援専門員が常勤換算で0.5名

が配置されていれば基準を満たすということになります。

常勤換算については、以下の記事に詳しく出ていますのでよろしければこちらもご参照ください。

施設長(管理者)

特養の人員配置では「施設長(管理者)」の配置が義務付けられており、施設全般の責任者としての役割を担います。施設によっては、園長や事務長などの名称を用いる場合もありますが、届出では施設長とされていますし、その他の名称の職員の配置義務はありません。

特養の施設長は、原則として常勤専従で配置する必要がありますが、業務に支障がない場合は兼務も認められています。例えば、従来型特養とユニット型施設、ショートステイを併設している施設の場合では、その全てを一人の施設長が兼務することも可能です。

なお施設長になるには、社会福祉主事任用資格や社会福祉事業に2年以上従事した経験、社会福祉施設長資格認定講習課程を終えたものなどの要件が必要です。保険者によって異なる場合もあるため、従事を予定している人がいる場合には事前に保険者に確認するとよいでしょう。

また、特養を運営するのはほとんどが社会福祉法人だと思いますが、社会福祉法人の理事には法人が運営する事業所の管理者を一名以上入れる必要があります。

医師

特養の人員配置では、医師の配置義務があります。医師の人数については、「入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数」と書かれており、明確に何名の医師を配置する必要があるとは書かれていません。

特養の指定では、医務室を配置する必要があり、その医務室は診療所としての指定を受ける必要があります。一般の方に向けた診療所ではないので、外部の患者を受け入れる訳ではありませんが、その診療所の責任者として医師の届け出が必要となります。

協力病院の医師を派遣してもらったり、近隣の病院や診療所から非常勤として派遣されるケースが多いですが、常勤専従で配置することも可能です。常勤専従で医師を配置した場合には、「常勤専従医師配置加算」を算定することができます。

介護職員/看護職員

特養の職員の中で、最も多く配置する必要があるのが介護職員です。人員配置基準では、介護職員と看護職員を合計した人数の配置が義務付けられていますが、看護職員については最低限の配置人数が決められています。

また、介護職員については、「常時1人以上の常勤の介護職員を介護に従事させなければならない」と決められています。そのため、職員のシフトを作成する際に職員が空白となる時間を設けることは認められていません。(例えば、早番の職員が15時に退勤、夜勤職員が15時30分に出勤するため、30分の空白が生じるなど)

また、常勤の介護職員を従事させる必要があることも注意が必要で、非常勤職員のみの配置となることは原則として認められません。

看護師については、1人以上常勤で配置する必要があるため、例えば従来型とユニット型を併設している場合には、それぞれに常勤の看護職員を配置する必要があります。

生活相談員

生活相談員は施設の顔になる大切な役割で、入所者や家族に対して様々な相談に対応する役割を担います。特養の生活相談員については、社会福祉主事、社会福祉士、精神保健福祉士などの資格要件があります。

地域によっては、介護支援専門員や介護福祉士でも認めている場合がありますので、必要に応じて保険者に問い合わせてみるとよいでしょう。なお、ショートステイを併設している場合においては、特養とショートステイの入所者の合計数に応じて生活相談員を配置することが可能とされています。

生活相談員については常勤換算による配置ではないため、入所定員が100名までの場合は1人で基準を満たしますが、入所者数120名の場合には、1.2名ではなく2名の配置が必要になります。

栄養士

特養では、栄養士または管理栄養士の人員配置が必要です。

令和3年の介護報酬改定において、入所者の栄養状態の維持及び改善について栄養管理を計画的に行わなければならないと定められたため、栄養士や管理栄養士に期待される役割は以前よりも高まっています。

なお、管理栄養士は栄養士より上位の資格となっていますが、以前は人員配置基準の中に管理栄養士という定めはありませんでした。栄養士では算定できず、管理栄養士が必要とされる加算も複数あるため、今後は管理栄養士の配置を進める事業所も増加するかもしれません。

機能訓練指導員

特養の基本方針では、「可能な限り、居宅における生活への復帰を念頭に置いて」と書かれています。そのため、機能訓練も特養の大切な役割になっており、加算算定の有無を問わず配置する必要があります。

機能訓練指導員の資格については、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など以外にも、看護師や柔道整復師も認めていますが実務経験が必要です。

常勤専従の機能訓練指導員を配置して、入所者ごとに個別機能訓練計画を作成した場合は個別機能訓練加算を算定することができます。加算算定を行う場合は、専従の要件があるため看護師など他の職種と兼務する場合には算定ができず、従来型とユニット型を兼務する場合においても加算は算定できないため人員配置に注意が必要です。

介護支援専門員

介護支援専門員(ケアマネジャー)は、入所者のケアプランを作成する役割を担い、原則として専従で常勤の職員が必要です。ただし、同一施設内の別の職務に従事することができるため介護職員と介護支援専門員を兼務することは認められています。しかし、例えば同一建物内でデイサービスを運営している場合など、別のサービスとの兼務は認められていません。

また入所者が100名を超える場合には、増員部分については非常勤職員をあてることができます。その場合は、他のサービスとの兼務も可能とされているので居宅介護支援事業所の介護支援専門員を兼務することも認められています。

ユニット型特別養護老人ホームの人員基準

介護職の夜勤

ユニット型特養は全室個室で10人以下の小集団を生活単位としたつくりで、同じ職員が関わってケアをすることでケアの質を高める効果があると言われています。

ユニット型特養の人員配置では、以下の点に気を付けなくてはいけません。

・ユニットごとに常時1人以上の介護職員または看護職員を配置する
(夜間については、2ユニットに1人以上)
 
・ユニットごとに常勤のユニットリーダーを配置する
ユニットリーダーとは、介護主任や介護課長など内部の役職のことではなく、ユニットリーダー研修を終えている職員のことを指します。
ユニットリーダー研修は、いつでも研修がある訳ではありませんので異動や退職が起こることを考えるとできる限り多くの職員に受講してもらうことが望ましいでしょう。
 
・従来型とユニット型を併設する場合、各職種は別々に配置して届出をする必要がある
(職種によっては兼務が可能)

例えば、①従来型特養80床と②従来型特養40床に併設でユニット型特養40床があった場合の看護職員の配置を考えてみます。

①従来型特養80床…看護職員は常勤換算で3以上
 
②従来型特養40床…看護職員は常勤換算で2以上(うち1名は常勤)
ユニット型特養40床…常勤換算で2以上(うち1名は常勤)

このように入所定員が同一でも、区分が異なることで人員配置が異なります。ただし、看護職員については専従の要件はありませんので従来型とユニット方を兼務することができます。

なお、看護職員を手厚く配置した場合には「看護体制加算」を算定することが出来る場合があります。

特養の夜勤職員の人員基準

特養の夜勤業務

特養では24時間365日、入所者が生活しているので常に職員が働いています。そのため、夜勤職員も決められた人数を配置する必要があります。

夜勤の形態も施設によって異なりますが、主に以下の2つの勤務形態を取っている施設が多いです。

・夕方から深夜までの勤務、深夜から翌朝までの勤務(深夜に職員が入れ替わる)
・夕方から翌朝までの勤務(日を跨いで連続勤務をする)

どちらにもメリット、デメリットがあるため施設の考え方によって取っている勤務形態は異なるでしょう。また、最近では夜勤を専門に行う夜勤専従の職員を配置する施設も増えています。

なお、夜間帯に職員を手厚く配置した場合には、「夜勤職員配置加算」を取ることができる場合があり、令和3年度の介護報酬改定ではICTの活用により加算の算定の要件が緩和されました。詳しくは次の記事、「常勤換算とは?計算方法と介護施設の人員配置基準について解説!」を参照してください。

従来型

従来型特養では、夜間帯において以下の介護職員または看護職員の配置を行う必要があります。短期入所生活介護(ショートステイ)を併設している場合には、入所者と利用者を合計した人数ごとに職員の配置が必要になります。

入所者数(利用者数) 夜勤を行う介護職員または看護職員
25人以下 1人以上
26~60人まで 2人以上
61~80人まで 3人以上
81~100人まで 4人以上
101人~125人まで
(以降は入所者25人増すごとに職員1名以上)
5人以上

 
なお、地域によっては施設のフロア(階数)に応じた職員配置を求められる場合もあります。

ユニット型

ユニット型については、2ユニット毎に夜勤を行う介護職員または看護職員を1人以上配置する必要があります。ユニット型の場合、夜間は2ユニットを1人の職員で見る施設も多いので、どちらのユニットも見やすいような施設の構造になっているのが望ましいでしょう。

また、同一フロアに奇数のユニットになってしまうと、職員がフロアを超えて介護を行わなくてはいけなくなります。そのため、できる限り建設の段階で、職員配置に適した構造にする方がよりよいケアに繋がります。

特養で人員配置基準を満たしていないとどうなる?

特養で人員配置基準を満たさない場合でも、ただちに指定を取り消されるということはありませんが、入所者の安全や職員の負担を考えると速やかに基準を満たすことが望ましいでしょう。

特養では、介護職員、看護職員、介護支援専門員の人員配置基準を満たしていない場合には、減算(介護報酬の削減)の対象となります。

①入所者3名に対して、介護職員または看護職員が1人以上を満たさない場合
②看護職員が基準を満たさない場合
③介護支援専門員が基準を満たさない場合

上記の状態となった場合には、指定権者に届出を行い減算で請求をしなくてはいけません。
その他にも、夜勤体制を満たしていない場合にも減算の対象となります。

まとめ

ここまで、特養の人員配置基準について見てきました。人員配置基準は、ケアの質や入所者の安全のために定められた最低限の基準です。一方で、管理者や経営者は経営についても気にしながら職員配置を考えなくてはいけません。
必要な配置は行わなくてはいけませんが、非常勤職員や兼務で配置するなどの工夫も有効です。

また、従来型特養とユニット型特養が併設している場合には、それぞれの基準を満たすことを忘れないようにしなくてはいけません。そして、基準を守るという視点と同時に、基準以上に職員を配置した場合に、算定できる加算もあるので、それらについても気にかけて見るとよいでしょう。

この記事の執筆者伊藤

所有資格:社会福祉施設長認定講習終了・福祉用具専門相談員・介護事務管理士

20年以上、介護・医療系の事務に従事。
デイサービス施設長や介護老人施設事務長、特別養護老人ホーム施設長を経験し独立。
現在は複数の介護事業所の経営/運営支援をしている。

 

2024年8月 住まい介護医療展 出展告知

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