「最近、職員がなんだか疲れているみたい」「体調を崩して急に休む人が増えてきた気がする」——そんな心配を抱えている管理者の方も、多いのではないでしょうか。
介護職員の健康管理というと、まず思い浮かぶのは健康診断ではないでしょうか。健康診断は法律で定められた事業者の義務ですが、実は、それだけで健康管理が十分とは言えません。
というのも、介護の現場は身体的にも気持ちのうえでも負担が大きく、夜勤や交代勤務で生活リズムも乱れがちだからです。本人の自己管理に任せきりにすると、知らないうちに無理が積み重なってしまいます。
だからこそ、職員が安心して働き続けられる環境を整えることが、ケアの質を保ち、思わぬ事故を防ぐことにもつながります。
この記事では、介護職員の健康管理について「なぜ大切なのか」「法律で求められる義務と体制」「身体・メンタル・睡眠それぞれの守り方」「シフトの工夫でできる予防策」の順に解説します。
次のような方は、ぜひ参考にしてください。
・職員の健康管理について、何から手をつければよいか迷っている方
・健康診断やストレスチェックなど、事業者の義務を確認しておきたい方
・夜勤や交代勤務がある職場で、職員の負担を減らす方法を探している方
目次
介護職員の健康管理とは?なぜ重要なのか

介護業界において、職員の健康管理は重要な課題の一つです。現場で働く介護職員が心も体も健康に働き続けられるよう、事業者が職場全体で取り組んでいく必要があります。
人手不足が深刻な介護業界において、職員が健康で働きやすい環境を整えることは、職員の定着だけではなく、質の高い介護を実現するうえでも、とても重要です。
健康管理と聞くと、健康診断やストレスチェックを思い浮かべるかもしれません。もちろんそれも大切ですが、それだけにとどまりません。次の3つがそろって、はじめて健康管理と呼べます。
・今の状態を知ること(健康診断やストレスチェックなど)
・不調を未然に防ぐこと(腰痛やメンタル不調の予防など)
・働く環境を整えること(無理のない勤務体制づくりなど)
ここで大切にしたいのは、健康管理を職員一人ひとりの心がけの問題ではなく、事業者が主体的に取り組むべきものとして捉える視点です。介護職員は、ご利用者の毎日の暮らしを支える、なくてはならない存在です。
一人の職員が体調を崩すと、その影響は現場全体に広がってしまいます。シフトの変更が発生し、担当業務も組み替える必要が出てくるかもしれません。そのため、職員が健康で、高いパフォーマンスを発揮できることは、とても重要です。
介護職員が抱えやすい健康リスク
介護職員が抱えやすい健康リスクは、大きく以下の3つに分けて考えることができます。
・身体への負担
・心(メンタル)への負担
・睡眠・疲労
ひとつずつ、見ていきましょう。
一つ目は、身体への負担です。介護職員は移乗や体位変換など、体を使う場面が多く、腰痛や肩こりに悩む方は本当にたくさんいらっしゃいます。多くの人と接する仕事ですから、感染症への注意も欠かせません。
二つ目は、心(メンタル)への負担です。ご利用者やご家族への対応、看取り、職場の人間関係など、気を張る場面が続きます。こうしたストレスを抱えたままにしておくと、やがて燃え尽き(バーンアウト)につながってしまうこともあります。
三つ目が、見落とされがちな睡眠・疲労です。入居系の施設などで働く場合、雇用形態にもよりますが、多くの場合、夜勤勤務などシフトで働くことになります。こうした働き方では体内時計が乱れやすく、眠りの質や量がどうしても落ちてしまいます。
睡眠不足が慢性化すると、生活習慣病やメンタル不調の引き金にもなりかねません。あとの章でくわしくお話ししますが、職員の健康管理では上記2つほど目立つものではないかもしれませんが、丁寧に向き合う必要があるといえます。
そして、気を付けたいのは、実はこの3つは、それぞれ独立しているわけではなく、互いに影響し合っているということです。
たとえば、睡眠不足が続くと集中力が落ちてヒヤリハットが増え、心の余裕もなくなってメンタルが揺らいでいく、といった悪い連鎖が起きやすいのです。だからこそ、どれかひとつだけでなく、全体をバランスよく見ていくことが大切になります。
健康管理が事業者にとって重要な理由
職員の健康を守ることは、職員のためであると同時に、事業所そのものを守ることにもつながります。具体的な理由を見ていきましょう。
まず、離職の防止と人材の定着です。体調不良や心身の疲れは、離職の大きなきっかけになります。そのため、健康に働ける環境が整っていれば、職員も安心して長く働き続けやすくなります。結果として、離職を防ぎ、人材の定着につながりやすくなります。
次に、ケアの質とご利用者の安全を守ることにつながることです。職員が元気で集中できる状態であることは、介護事故やヒヤリハットを防ぐことにつながり、丁寧なケアを続けるための基盤になります。
さらに、安全配慮義務への対応という側面もあります。事業者には、職員が安全に、健康に働けるよう配慮する義務があります。くわしくは次の章でお話ししますが、これをおろそかにすると、法的なリスクを招くことにもなりかねません。
そして、事業所の信頼性が高まることも見逃せません。職員の健康に前向きに取り組む姿勢は、求職者やご利用者、地域からの評価にもつながり、採用や事業の継続を後押ししてくれます。
健康管理は、目立つ成果として分かりやすいものではないかもしれません。ですが、現場の安定とケアの質を静かに支えてくれるものです。次の章では、その土台となる、事業者に法律で求められる義務と体制を確認していきましょう。
事業者に求められる健康管理(法的義務と体制)

介護職員の健康管理を考えるうえで、まず土台になるのが、法律で定められた事業者の義務です。
健康診断は、労働安全衛生法にもとづく事業者の義務です。また、心の健康に関わる仕組みとして、ストレスチェックの実施も事業者に義務づけられています。その対象範囲は、今後さらに広がる予定です。とくに夜勤のある介護現場では、一般的な職場よりも手厚い対応が求められる場面もあります。
なお、ここでいう「事業場」は、法人全体ではなく、原則として施設や拠点などの単位で判断します。ここでは、事業者が押さえておきたい基本的な義務と、それを支える管理体制を見ていきます。何から手をつければよいか迷ったときに参考としてください。
健康診断の実施(夜勤のある職員は年2回)
健康診断は、職員の健康状態を把握するもっとも基本的な取り組みです。通常の定期健康診断は1年以内ごとに1回ですが、夜勤のある介護職員の場合は、ここに注意が必要です。
深夜業を含む業務に常時従事する人は「特定業務従事者」にあたります。安衛則第45条にもとづいて、その業務への配置替えの際と、6か月以内ごとに1回の健康診断を受けることが定められています。
条文では『当該業務への配置替えの際及び六月以内ごとに一回』と記されており、つまり夜勤者は実質的に年2回の健診が必要になります。
ここでいう深夜業とは、原則として午後10時から午前5時までの時間帯の労働を指します。厚生労働省の通達では、こうした深夜業を常態として1週1回以上、または1か月に4回以上行う業務に常時従事する労働者が、年2回の健康診断の対象とされています。夜勤や交代制勤務のある介護現場では、この条件にあてはまる職員も少なくないでしょう。
参照:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」 /頻度の基準は厚生労働省通達(昭和23年10月1日基発第1456号)による
なお、健康診断の費用は事業者の負担が原則で、実施を怠ると労働安全衛生法違反として50万円以下の罰金が科される可能性があります。
「対象者を正確に把握できていなかった」とならないよう、勤務実績の管理とあわせて運用する必要があるでしょう。
ストレスチェックの実施(50人以上は義務、50人未満も義務化へ)
ストレスチェックは、職員の心の負担の状態を把握し、メンタル不調を未然に防ぐための仕組みです。
2015年12月から、常時50人以上の労働者がいる事業場では、年1回の実施が義務づけられています。高ストレスと判定され、本人が希望する場合には、医師による面接指導につなげていきます。
注目したいのが、ここ最近の制度改正です。
これまで50人未満の事業場では努力義務にとどまっていましたが、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)によって、50人未満の事業場にも実施が義務づけられることになりました。改正法では、その施行期日を「公布後3年以内に政令で定める日」としています。そして、2026年5月の労働政策審議会・安全衛生分科会で、施行日を令和10年(2028年)4月1日とする方針が示されました。施行後は、事業場の規模にかかわらず、年1回の実施が義務となります。
参考:厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)」
小規模な事業所も、いずれ対象になります。準備期間が設けられているうちに、外部委託の検討や実施体制づくりを少しずつ進めておくと安心です。50人未満の事業場での具体的な進め方は、厚生労働省が公表したマニュアルが参考になります。
参考:厚生労働省「『小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル』を公表します」
ストレスチェックの具体的な進め方や、職員が「限界かも」と感じる前の対処については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
安全衛生を支える管理体制
健康管理を「実施する人」を社内に置くことも、事業者の役割のひとつです。事業場の規模に応じて、選ぶべき担当者や設けるべき会議体が変わってきます。
| 事業場の規模 | 必要な体制 |
| 常時10人以上50人未満 | 衛生推進者の選任(業種によっては安全衛生推進者) |
| 常時50人以上 | 衛生管理者・産業医の選任、衛生委員会の設置(毎月1回以上開催) |
介護事業所の場合、大規模な特別養護老人ホームなどは50人以上に該当しやすい一方、小規模なデイサービスや訪問介護事業所では衛生推進者の選任が中心になります。自施設がどの区分にあたるかを、まず確認しておきましょう。
すべての土台となる「安全配慮義務」
ここまで紹介した個別の義務に共通する前提となっているのが、「安全配慮義務」という考え方です。これは、職員が安全に、そして健康に働けるよう、事業者が必要な配慮をしなければならないという責任で、労働契約法第5条に定められています。
ポイントは、健康診断やストレスチェックを形式的に実施するだけでは、十分とは言いきれない場合があるということです。
たとえば、明らかに過重なシフトが続いて職員が体調を崩したようなケースでは、義務を果たしていなかったと判断され、損害賠償などの責任を問われることもあります。
後半でお話しする「働き方やシフトの工夫」も、この安全配慮義務を実質的に果たすための大切な取り組みだといえます。
身体面の健康管理(腰痛・感染症)

身体への負担は、介護職員にとってもっとも身近な健康リスクといえるかもしれません。なかでも腰痛は、多くの方が一度は悩んだことがあるのではないでしょうか。
ここでは、その腰痛をはじめとした身体の負担と、ご利用者とも関わる感染症への対策について見ていきます。どちらも「気をつけてね」と職員に伝えるだけでなく、事業所として環境を整えることで、ぐっと防ぎやすくなる分野です。
腰痛や身体の負担をやわらげる
介護の仕事に腰痛はつきもの、とあきらめてしまっていないでしょうか。たしかに移乗や入浴介助など、身体に負担のかかる場面は少なくありません。けれども、腰痛は体の使い方と道具の力で減らしていけるものです。
たとえば、ボディメカニクスという考え方があります。これは、てこの原理や大きな筋肉を活用して、少ない力で安全に介助するための体の使い方です。ご利用者に身体を近づけて重心を安定させるだけでも、腰への負担は変わってきます。
あわせて取り入れたいのが、福祉用具の活用です。移乗用のリフトやスライディングシートを使えば、抱え上げる動作そのものを減らせます。「持ち上げない介護(ノーリフティングケア)」という考え方も、少しずつ広がってきました。
身体の負担をやわらげる主な工夫は、次のとおりです。
・体の使い方を見直す(ボディメカニクスを意識する)
・福祉用具を活用し、抱え上げる動作を減らす
・無理せず複数人で対応する場面をつくる
ボディメカニクスの具体的な原則や活用例は、こちらの記事でくわしく紹介しています。
感染症から職員とご利用者を守る
多くの人と近い距離で接する介護現場では、感染症への備えも欠かせません。職員自身の健康を守ることはもちろん、抵抗力が弱まっていることの多いご利用者を守るうえでも、とても大切な取り組みです。
基本になるのは、手洗いや手指消毒といった標準予防策です。特別なことのように聞こえるかもしれませんが、日々のケアのなかで習慣として続けていくことが、いちばんの近道になります。
そして、見落とされがちなのが職員の体調管理です。出勤前の体調確認や、体調がすぐれないときに無理をしない雰囲気づくりも、立派な感染症対策のひとつといえます。「少し熱っぽいけれど、人手が足りないから」と出勤せざるを得ない状況は、結果として現場全体のリスクを高めてしまいます。
感染症対策として、現場で意識したいことをまとめます。
・手洗いや手指消毒など、標準予防策を習慣にする
・出勤前の体調確認を、職員みんなで当たり前にする
・体調が悪いときに休みやすい雰囲気と体制を整える
身体の健康は、働き続けるための基本です。とはいえ、職員一人ひとりの努力だけに頼るのではなく、福祉用具の導入や、休みやすい雰囲気づくりといった、仕組みや環境を整える視点が欠かせません。
次の章では、目には見えにくい「心」の健康について考えていきましょう。
メンタル面の健康管理
身体の疲れは気づきやすいものですが、心の疲れは、本人も周りも気づきにくいものです。だからこそ、どんなサインに目を向ければよいかを、知っておくことが大切になります。
介護は、人の感情に深く寄り添う仕事です。やりがいの大きい仕事である一方で、気づかないうちに心がすり減っていくこともあります。ここでは、職員の心の健康を守るために、事業所として意識したいことを見ていきます。
介護職が抱えるストレスは、ご利用者やご家族への対応、看取り、職場の人間関係など、さまざまです。こうした負担が積み重なると、やがてバーンアウト(燃え尽き症候群)につながってしまうこともあります。
大切なのは、深刻になる前のサインに気づくことです。遅刻や欠勤が増える、表情が乏しくなる、小さなミスが続くといった変化は、本人からのSOSかもしれません。
そのうえで効果的なのが、「一人で抱え込ませない」職場づくりです。困りごとや失敗を安心して話せる雰囲気、いわゆる心理的安全性のある職場では、不調が深刻になる前に気づき、支え合うことができます。管理者の側からできることとして、日ごろの声かけや面談の機会をつくる、相談しやすい窓口を用意する、といった工夫があります。
心の健康については、シフトライフでもテーマごとにくわしく解説しています。あわせてご覧ください。
・介護職のストレス原因6つと限界になる前の対処法 人間関係・業務負担などの悩み軽減
・介護職に多いバーンアウト(燃え尽き症候群)は甘え?立ち直り方も解説
・介護現場における心理的安全性とは?介護施設に求められる職場環境とは?
心の健康は、職場の空気や人間関係と深く結びついています。そして、その心の状態を左右する大きな要素のひとつが、次の章でお話しする「睡眠」です。
見落とされがちな「睡眠・疲労」の健康管理

ここまで、身体や心の健康について見てきました。最後にお伝えしたいのが、睡眠と疲労です。夜勤や交代勤務のある介護現場では、睡眠の乱れがもっとも起こりやすく、それでいて見落とされやすい健康課題といえます。
睡眠は、本人の心がけだけで守れるものではありません。この章では、なぜ睡眠が大切なのか、なぜ個人の努力だけでは足りないのか、そしてシフトの工夫で何ができるのかを、順番に見ていきます。
なぜ介護職の睡眠時間の確保が重要か
夜勤や交代勤務があると、寝る時間も起きる時間も、日によってバラバラになりがちです。すると体内時計(生活リズム)が乱れ、「眠りたいのに眠れない」「眠ったはずなのに疲れが取れない」といった状態に陥りやすくなります。
こうした睡眠不足が積み重なると、心身にさまざまな影響が出てきます。集中力や判断力が落ちるだけでなく、長い目で見れば、生活習慣病やメンタル不調のリスクも高まるといわれています。
そして、介護現場でとくに気をつけたいのが、睡眠不足と事故の関係です。注意力が落ちた状態では、ふだんなら防げるはずのヒヤリハットや介護事故が起こりやすくなります。職員の睡眠を守ることは、職員自身の健康はもちろん、ご利用者の安全を守ることにもつながっています。
「しっかり眠れているか」は、目に見えにくいぶん、つい後回しにされがちです。けれども睡眠は、職員が安全に働き続けるために欠かせないものです。
夜勤と睡眠の関係や、具体的な睡眠のコツについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。
睡眠は「個人の努力」だけでは守れない
睡眠の話をすると、つい「早く寝ましょう」「生活リズムを整えましょう」と、本人の心がけの問題にしがちです。けれども、夜勤や交代勤務がある以上、職員が気をつけていても、勤務のかたち次第では睡眠が乱れやすくなります。
実は、それを裏づける研究があります。労働安全衛生総合研究所(JNIOSH)が、交代勤務で働く介護職員を対象に行った調査です。
この研究では、現場の声から見えてきた4つの改善ニーズをシフトの組み方に反映しました。
・逆循環シフトを避ける
・連続勤務を減らす
・勤務間インターバルを確保する
・夜勤後の休日を確保する
そのうえで、こうした工夫を取り入れたシフトと、従来どおり手作業で組んだシフトを、それぞれ2か月ずつ試して比較しています。
睡眠の状態は、指輪型の装置(オーラリング)を使って客観的に測定されました。その結果、現場のニーズを反映したシフトのときには、深い睡眠やレム睡眠が増えるなど、睡眠の質に変化が見られました。一方、従来どおりのシフトでは、睡眠に大きな変化はなかったと報告されています。
(現場のニーズを反映してシフトを工夫することで、交代勤務で働く介護者の睡眠が改善)
出典:労働安全衛生総合研究所 RECORDs /画像をクリックすると元の記事に移動します
また、この研究は学術誌 Journal of Sleep Researchにも掲載されています。
注目したいのは、同じ職員であっても、シフトの組み方を変えるだけで睡眠の質が変わったという点です。そのため、睡眠は、本人の努力だけで補えるものではなく、「どう勤務を組むか」という働き方の設計に大きく左右されるといえます。
だからこそ、職員の睡眠を守るうえで、シフトのつくり方は欠かせない視点になります。次の章では、どんなシフトが睡眠を悪化させやすいのか、そして改善のポイントを具体的に見ていきます。
睡眠を悪化させやすいシフトと、改善のポイント
同じ夜勤ありの職場でも、シフトの組み方しだいで、睡眠への負担は大きく変わります。まずは、避けたいパターンから見ていきましょう。
一つめは、逆循環のシフトです。これは、遅番の翌日に早番が入るなど、勤務の開始時刻がだんだん早まっていく組み方を指します。人の体は、勤務の時間帯が後ろにずれていく流れ(正循環)のほうがなじみやすく、逆向きだと体内時計が追いつかず、寝つきが悪くなりやすいといわれています。
二つめは、連続勤務の多さです。休みのないまま勤務が続くと、疲れも睡眠の乱れも、回復しないまま積み重なっていきます。あわせて、遅番が何日も続くような組み方も、生活リズムが後ろ倒しになり、睡眠に影響しやすいことが分かってきています。
三つめは、勤務と勤務の間隔が短いことです。前の勤務の終わりから次の勤務の始まりまでの時間(勤務間インターバル)が短いと、十分な睡眠も休息もとれません。夜勤が明けてすぐ次の勤務が入る、夜勤の後に休みがない、といったケースは、とくに負担が大きくなります。
逆に、睡眠を守りやすいシフトのポイントをまとめると、次のようになります。
・時間帯は正循環(早番→遅番→夜勤の順)を基本にする
・連続勤務や、遅番の連続をできるだけ避ける
・勤務と勤務の間隔(勤務間インターバル)を十分にとる
・夜勤の後には、しっかり休める日を設ける
これらは、一つずつなら難しくないように見えて、職員全員のシフトを同時に成り立たせようとすると、とたんに複雑になります。だからこそ、次の章でお話しする「シフト設計の工夫」などが重要になってくるといえます。
正循環・逆循環や勤務間インターバルについては、こちらの記事でくわしく解説していますので、参考にしてください。
シフト設計で実現する「予防的」な健康管理
ここまで見てきたように、職員の健康、とくに睡眠は、シフトの組み方と深く関わっています。健康診断やストレスチェックが「現状を知り、不調に気づく」取り組みだとすれば、シフトの工夫は「そもそも不調を生まない」ための予防の取り組みといえます。
とはいえ、健康に配慮したシフトを毎月手作業で組むのは、決して簡単ではありません。ここでは、シフトを健康管理の手段としてとらえ直し、その実現を支える仕組みについて見ていきます。
シフトを「健康管理の手段」として考える
シフトづくりというと、まず人員の配置を整えることに意識が向きやすいものです。けれども、これまで見てきたように、シフトの組み方は職員の睡眠や疲労、ひいては健康そのものを左右します。
前の章で見てきた、睡眠を守りやすい勤務の組み方。そうした配慮を一つずつ積み重ねることが、職員の健康を守ることにつながります。
ただし、これを職員全員の分、毎月、公平に成り立たせようとすると、頭を抱えてしまう担当者も少なくないはずです。
現場の声を反映した公平なシフトづくりを支える仕組み
そこで役立つのが、シンクロシフトのような介護業界向け自動シフト作成ソフトです。シンクロシフトは、先ほど紹介した労働安全衛生総合研究所(JNIOSH)の研究でも用いられており、独自のAIアルゴリズムによって、公平で心身の負荷を抑えたシフトづくりをサポートします。
シフト作成やAIの活用については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
シフトのつくり方を見直すことは、職員の健康を守る、もっとも現場に近い取り組みのひとつです。
まとめ
介護職員の健康管理は、健康診断やストレスチェックを実施するだけで終わるものではありません。法律で定められた義務にきちんと対応する「守り」と、働き方そのものを整えて不調を防ぐ「予防」。この両面を意識することで、職員が健康に働き続けられる職場に近づいていきます。
なかでも、夜勤や交代勤務のある介護現場では、睡眠への配慮が、職員の健康とケアの質を守るうえで欠かせません。そして睡眠は、本人の心がけだけでなく、シフトの組み方によって大きく左右されるものでした。逆循環を避ける、連続勤務を減らす、夜勤の後に休みを設ける。こうした一つひとつの工夫が、働く人とご利用者の双方を支えていきます。
すべてを一度に変えるのは難しいかもしれません。それでも、できるところから少しずつ取り組んでいくことが、働きやすい職場づくりへとつながっていきます。職員の健康を守る視点が、これからの介護現場づくりのヒントになればうれしいです。
夜勤や交代勤務の負担、回復や睡眠については、産業保健心理学や睡眠衛生学の専門家である久保氏(労働安全衛生総合研究所(JNIOSH))による記事もあわせてご覧ください。
・レスタビリティを高めよう
・サイコロジカル・ディタッチメント
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この記事の執筆者![]() | Shift Life編集部 介護現場での実務経験を持つライターと、介護報酬・制度に精通した編集スタッフが連携し、現場で役立つ情報をお届けしています。 制度・加算に関する情報は、厚生労働省・自治体などの公的機関が発行する一次情報を優先的に参照し、掲載前にファクトチェックを実施しています。 |
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